20.依頼
ハロルドは帰宅後、着替えてからアーロンとペーター、ミハイルを連れて冒険者ギルドに向かった。
彼らは王城からの連絡もあって、事態が動き始めたことを感じていた。それなのにミハイルがどこか不安そうな顔をしているのでハロルドが「嫌な予感でもする?」と尋ねると彼はおずおずと頷いた。ミハイルのスキルを知らないペーターは「嫌な予感だけでそんなに真っ青になるものか?」と不思議そうな顔をしていたけれど、彼の直感は非常に信頼できる。
シャルロットが近くにいてなお、不安だと言うのならば「戦力が足りない」ということだろう。ハロルドとアーロンはそう考えて、この場所に来た。
「あれ、ハロルドの友達か?」
周囲を見回していると、アーロンを見かけた「目的の人物」が近寄ってきた。
そして、少し悩んだ後、目を見開いて「え、ハロルド……?」と驚いたような声で呟いた。
「アイマンさん、自力看破ありがとうございます。ハロルドです」
「そのメガネどうなってんだ?どこからどう見ても別人だな」
感心したような表情で「そういうアイテムがないと、外を出歩くのも困難だろうしなぁ」としみじみ呟かれたハロルドは少し虚ろな目になった。
そんなハロルドをよそにルクス&ルア以外の三妖精はペチペチとアイマンを叩いていた。
「なんでハルだってわかったの?」
「おかしい」
「教えなさいよ〜?吐けば楽になるわよぉ?ほらほらぁ〜」
怒っている訳ではないのでペチペチで済んでいる。怒らせると小さな身体からは想像のつかない鈍い音で殴ってくることを知っているハロルドとアーロンは妖精の存在を騒ぎ立てるわけにもいかないので困った顔をしていた。
「いや、お前たちの気配があるのだから余程の理由がない限りは判別できるだろう」
「つまり、アタシたちの気配で分かっちゃったんだ?」
「なまいき」
「まぁ、ウチらとハルは常に一緒だもんね〜」
ルクスとルアは姉貴分の様子を見ながら頭が痛いと言うような顔をしている。完全に反面教師になっていた。
「それで、何かあったのか?」
「依頼を出したくて」
「……俺に、か?」
「はい」
頷いたハロルドに何かを察したのか、アイマンは受付で個室を借りた。
そして、そこで説明を聞いたアイマンは頭を抱えた。
「……また妙なものに巻き込まれているのか」
ハロルドが雇っても大丈夫な人間は限られている。それを理解しているからこそ、アイマンはハロルドの護衛任務を引き受けることにした。
そして、その後に紹介された凛々しい女性聖騎士を見て「本当に俺は必要か?」と少し思った。
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