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14.食いしん坊三人組




 休みの日になると、前日に整備しておいた装備を身につけて冒険者ギルドへと向かう。現地集合後、いくつかの討伐の依頼を相談して決めて森林地区へと向かっていった。



「よし、とりあえず……。この辺に生息してるノイジーダックはめちゃくちゃ美味いらしい」


「代わりにレア種のウルフでもないのに、雄叫び?的なので気絶させられる可能性もあるらしいけどね」


「しかも捕食の仕方がエグいって聞いたよ。まぁ、対策してきてるから余程のことがなければ平気だけど」



 ヘッドホンのような形の器具を持って、ハンドサインの確認をする。視線を合わせて頷くと、器具を身につけて各々武器を手に取った。

 すんなりと柔らかい白と黄色の羽毛を持つノイジーダック数体を見つけた三人は作戦通りに動き出した。三人を見つけたノイジーダックたちは獲物を見つけたとばかりに口を開いた。

 斧が綺麗にそのうち少し離れていた一体の首を刈り取り、近接していた二体の足が凍る。空いた口に魔法で勢いの増した矢が突き刺さった。

 その三体を手早くロープで繋いで、用意していた台車に乗せてそれをブライトが引き、一気に撤退した。

 現場にいる時間は少ない方がいい。相手を仕留めるためにとても大きな声で叫ぶ魔物であるので居なくなったことがバレるのも早い。それを見越して獲物を横取りしようとする魔物もいる。



「台車を風魔法で押すとあんなに速さが出るんだね」


「ただしあんだけ細かい操作ができるのはハルだけ」


「ちょっと器用なだけだよ」



 案の定、青がかったグレーのウルフたちが追いかけてきそうだったので、ブライトも台車に飛び乗ってもらって、そのまま後ろを風魔法で押して馬並みのスピードで安全地帯まで帰還した。ちなみに、それなりに安全運転ではあった。ブレーキまで風魔法で再現している。


 ギルドで査定と解体をしてもらっている間にアーロンとブライトは果実水を飲みながら露店市で植物の種を見ているハロルドを見ていた。流石に薬の材料を供えるのはやめとけよ、と言われたので何か良さげなものを見繕っている。そこで育てようとするあたりが「種から育てた方が安い」という謎のこだわりを感じる。手間を考えると本当にそうなのか、とアーロンは割と悩むところである。


 アーロンは悩んでいたけれど、ハロルドは自分が育てた花が花屋で買うよりも品質が良いことを知っていた。緑の手はON/OFFの効かないスキルだった。適当に種を蒔いて水をやっていただけである程度美しい花が咲くことを経験上知っている。ついでに女神がその辺で摘んだり買ったりした花を喜ばないのだ。一度やった時に「手抜き!!」とわざわざ夢に現れた。



(ある程度守ってくれてるらしいけど、面倒だよな)



 説明が面倒で安いから、などと言っているが女神が満足しないので仕方がない。新しく召喚された“聖女”とやらが第二王子までたらし込んで新たな災厄となろうとしているらしく、その尻拭いで大変らしい。


 育てやすそうなものを幾つかと、興味のあるものを幾つか購入する。

 一仕事終えた、と思っていたらハロルドの分の果実水を渡された。


 査定と解体が終われば、換金分と肉をいくらかもらって野菜なども買い込む。その後、寮の厨房へと集まった。他の者たちと時間がずれたのか空いていて、三人は顔を見合わせて準備を始めた。



「ハル、野菜の皮剥き任せた」


「わかった。あ、そうだ。これ使ってみて」



 アーロンはハロルドから受け取った白い粉に首を傾げた。「何だこれ?」と尋ねた彼に「塩擬き」とハロルドはにこやかに告げた。



「やっぱりしっかりした味付けのものが食べたいからね。こっちにきてからも調べてたんだよ。そうしたら、人体に無害で限りなく塩に近い味のキノコがあるっていうから」



 ハロルドは特に日本食にこだわるわけではないけれど、気軽に調味料が手に入る国の記憶があるからかTHE!素材の味!!という食生活からの脱却を目指していた。不味いわけではないけれど、臭みが取れなかったり、味がどこか物足りなかったりすることはそれなりにあった。

 もはや執念である。多少、面倒だろうが平民であっても幅広い料理を食べたいと研究を重ねていた。とはいえ、流石に毒のある魚やら芋を加工して食べられるようにするようなガッツはない。



「火は用意できたよ!」


「……あー、ありがと。ブライト」



 ついにやりやがった、という目で友人を見ていたアーロンはワクワクと鉄板と火を用意して待っているブライトを見て正気に戻った。



「まぁ、食うもんは美味い方がいいわな」



 研究熱心な友人と安全な料理に飢えた友人の準備したものを、彼はとても美味しそうなチキンステーキとシチューにして活用した。

 ハロルドはステーキソースの調合を薬を作るかのような真剣さで考えているし、ブライトは「おいし〜、さいこ〜」と喜んでいたりするので彼らの料理は毎回バージョンアップしていく。


 三人の休日は割とこんなものだった。

因果の都合で聖女は召喚妨害できんかった件。

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