9.近況報告会
カラムに言われて扉を開けると、美丈夫が立っていた。
紫色の髪に、燃えるような赤い瞳。健康そうな褐色の肌に、筋肉質な大きな身体。顔立ちからはどこか真面目さを感じる。
「久しいな、ハロルド」
「アイマンさん!どうしてエーデルシュタインに?」
驚きを隠せぬ様子のハロルドに、アイマンは苦笑しながら「いや、元養子先が暴走をしていてな」と答えた。そして、厄介ごとの気配を察したハロルドは笑顔で誤魔化した。アイマンが逃げてくるほどの面倒だ。聞くのも嫌だ。
「本当はもっと早くに逃げるつもりだったんだが、ちょっと薬学狂いに捕まってな」
「薬学狂い……?」
「ああ。我が国の第三王子アデニウム殿下だ」
砂の国ラムル。その第三王子は薬学に傾倒し、そのために王位継承権どころか公爵位すらも擲った男である。
薬の研究のためであれば自ら死地へと赴くこともあり、制御できないクレイジーモンスターだ。
アルスを深く信仰しており、薬学都市に篭りっぱなしの彼は「弱まっていたアルス様の存在感が増している!!」と大はしゃぎしていた。そこに「しばらく神子の観察と新たな薬の研究をするからそっちには行かない」と神託が降りた。
「我らの神の神子であるならば、我々が守らなければ!!」
——そして更なる薬学の発展を!
学者たちと共に彼は立ち上がったのである!!
とっても面倒なことになっていた。
「それで連れ回されそうになっていたんだ。あの方の護衛任務なんて命がいくらあっても足りないよ」
「というか神子って……」
アーロンの視線が死んだ魚のような目をしているハロルドに向いた。静かに「俺だね」と呟く相棒はだいぶ可哀想だった。
「それで、そっちはどんな状況だ?」
近況を尋ねるアイマンに、ラムルから帰ってからのことを話す。
大人しく聞いていたアイマンが声を上げたのは、「エリザベータが婚約者になりまして」という発言あたりからである。泡を吹きそうな顔をしている。
「そっちも……大変だな」
「まぁ、結構可愛いですよ」
「それ言えるのハルだけだって」
アーロンの呆れたような声に、エリザベータの弟(本物)ミハイルは深く頷いていた。
婚約者をガッツリ監視して、周囲に集る人間を排除し、目の前で強大な魔法を使われて「可愛い」なんて言える人間はそういないのである。
ハロルド以外「アレが可愛い!?」




