23.後始末
不正の報告と貴族たちからの訴えから、騎士たちを向かわせたのは国王であった。
「アンリもなぁ。兄弟だからって言わなくてもわかる、理解してもらえるなんて間違ってたってそろそろ気ぃつくだろ。……まぁ、今回は巻き添えだが。やろうとしてたことには変わりねぇからなぁ」
「精力的なのは結構ですが、ハロルドくんの立場を強くしようと少々性急に動きすぎていましたからねぇ。……流石にもう少し計画を練らなければいけないこともわかってらっしゃったのに自陣営に後ろから撃たれてしまいましたな」
「物事には順序というものがありますものね。いくらあの子が大人びているとはいっても、まだまだ子どもですわ。ハロルドくんもルイくんも、ブライトくんも、皆我々の庇護下にいるべき年齢です。……アンリに苦労を強いてしまったわたくしたちの罪もあるでしょうけど、あの子もこんなに早く動くつもりはなかったでしょうに、お父様ったら」
王妃パトリシアの言葉を聞いた男二人……国王リチャードと宰相カーティスは顔を見合わせて「俺たちはちゃんとあいつに学園生活送らせたよな?」「殿下は積極的に国政に関わろうとはしておりましたが、しっかりと学生生活を送らせていらっしゃいましたね」とアイコンタクトを取っていた。帝王学でどれだけの国難が訪れているかを知り、何をすれば団欒の場で真っ青な顔を見せることもある父の負担を減らせるかを考えて行動していたアンリは確かにできた息子だった。けれど、父親としては自身が経験することができなかった青春時代を過ごしてほしいと仕事に制限をかけていた。
「まぁ、それはともかくとして今回はルートヴィヒたちが、監査官も引くほど不正の証拠集めてたから処分せざるを得ないな。アンリやルビー侯爵はベキリー伯爵家も残しときたいっつー考えみたいだったけどある程度の処分は必要だな。それにしても、情報、ヤベー広がり方したよな。アイツらエグい」
「ブライトくんは元々、家族なんてどうでもいいという考えですしね。妹さんがオパルス嬢に嫌がらせしていることを知って、全員まとめて断頭台もありだなんてぼやいていたらしいですし」
「アイツなー、自分は逃げれるってわかってるもんな。そもそも、騎士たちに追いかけさせた時の被害と、ハロルドたちに与える心象を考えたら俺たちに殺されまではしないって計算してやがるもんなー」
息子の考える案が現実的であるのはわかっている。ハロルドの功績を元に少しずつ位を上げ、その周囲もまたそれなりの立場を得た友人と異母弟ルートヴィヒで囲い込めば、よほどの阿呆でない限り手を出せないと判断するだろう。そういう意味で言えば、アーロンもまた虎視眈々と狙われていた。
けれど、現状のリチャードは「神は結構気軽に祟るから強硬手段過ぎる」とそれなりにその案を退けている。
「エリザベータとの婚約やら、男爵位だって荷が重いと感じてるはずだ。これ以上はヤッベェ。絶対神がキレる。そもそもガキに俺たちがサポートできること以上を背負わせたくねぇ。もう十分背負わせちまった後だから余計に」
「そうですねぇ、本人よりも妖精・精霊・神、追加で婚約者の方が過激ですしね。敵に回したくない」
大人たちが溜息を吐いていると、侍従がアンリの訪れを知らせる。
三人は「一応説明してやるかー」とばかりに服装と姿勢を正し、厳しい表情を作る。
「これが終わったらエヴァんとこで茶ぁしばくか」
「わたくしも少しだけ癒しが欲しいですわ」
「私も少し早めに帰って妻とゆっくりしたいと思います」
今回はルートヴィヒが描いた図と、少しずつ進められていた根回しが完璧に周囲の予想を超えたのだ。一番は国王を巻き込んだことが勝因だろうか。
引き起こした連中に「寝た子を起こすやつがあるか」としか言えない案件である。
いつも読んで頂き、ありがとうございます!
アンリ巻き添え。まぁ、割とあれこれ動いてたからしゃあない部分もあったりする。結構弟巻き込んでるから……




