17.そっちがその気なら
「はぁ〜〜〜もうヤダァ〜〜〜!!全部手のひらの上って感じがさいっっこ〜に気に食わない〜〜〜」
ルートヴィヒの部屋のテーブルで項垂れるブライトはそう言いながら頭を抱えていた。
目の前には手紙が二通。
母の実家からと、ルビー侯爵家からのものだ。急ぎの連絡だと侯爵家から届けられた手紙はブライトが頭を抱えるに十分だった。
「まぁ、ルビー嬢が商会一つを潰す程度で納得するなら、それはそれでいいのだが……もう一つの件に関してはお前は貴族でいたくないのだろう?」
「それはそうだよ!何で今更僕が頑張らないといけないのさ!僕は今までも十分頑張ってきたよ。でも、ハロルドくんの負担減らすなら、僕が爵位持っとくのは有りなんだよねぇ。それに付随して権力もついてくるものだし。僕が次期伯爵なんて世も末だと思うけどさぁ」
唇を尖らせながらそう言うブライトは、容姿も相俟ってすこぶる可愛らしい。
けれど、突如スンとした表情になったブライトは全然可愛らしくはなかった。
「本当、これってどこまで大人たちの陰謀だと思う?僕らってちょっと振り回されすぎじゃない?」
ブライトは別に自分だけが巻き込まれているだけならば、そもそも自分の実家の話であるし、どうとでもした。けれど、これが上の連中の差配であるならば。それにハロルドやアーロン、ルートヴィヒを巻き込むならば話は別だった。自分たち……特に神の寵愛めでたきハロルドを思ってやってくれてはいるのだろう。けれど、それならそれで何か言うべきことがあるはずだ、と思う。
「そうだな……父上のやり方ではないな。アンリ兄上やルビー侯爵が有力だろう。少なくとも、よりハロルドの負担を減らすために動いてはいる。そして、私たちがハロルドのためならば多少のことは飲み込むだろう、と確信していることも察せられる」
「確かに僕はハロルドくんというか、お友達のためなら頑張る気ではいるけどさぁ……それって前提条件として、説得とか説明があってこそじゃない?……気に食わないよねぇ」
「そうだな。少しくらいは我々と話をするべきだな。たとえ忙しかったとしても」
二人はそう言い合って、目線を合わせる。
ニコッと笑ってから紙を取り出して、いつか追い詰めてやろうと集めていた資料を突き合わせた。
ルートヴィヒとブライトは、裏で暗躍しているであろう人間たちが誰か察して、「そっちがそのつもりならこっちにも考えがあるぞ」と楽しげに計画を立て始めた。
言っていることはどうあれ、結果的に普段は良い子に、おとなしくしていた二人だからこそ、積極的に動き出すとは思われていなかった。
ルートヴィヒとブライトは、そんなに気が長くはないし、そこまで良い子ではない。ハロルドとアーロンがそう在るから足並みを揃えていただけだ。実際に割と「やめときなよ」と二人に言われて慎んだ行動もあったりする。
そして、ここにストッパーはいない。
血気盛んな二人は、計画を進めるために押し付けられていた仕事を各所に振り直した。
「とりあえず、潰そう」
「そのための手札はたくさんあるからな。いささか傷がありすぎだとは思うが」
美形の愛人を欲したサティアは、地獄のようなピタゴラ装置を作動させてしまった。
穏便にベキリー家を潰す、もしくはブライトの子にでも継がせようとしていた大人たちは、国のトップと宰相、ベキリー家の敵対派閥の貴族も巻き込んだ彼らによって「盛大に取り締まってぶっ潰そうぜ!」という展開になって泡を吹く羽目になる。
ブライト「これで僕も犯罪者の家族ではあるから、ちょっとだけ貴族辞めれる可能性出てくるかなって」
ルートヴィヒ「無理だとは思うが可能性くらいは出てくるんじゃないか?無理だとは思うが」




