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【書籍化】巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない【4巻制作・コミカライズ化決定!】  作者: 雪菊
6章

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11.絵を描く少年



 王立公園へと向かうと、キャンバスを抱えてうずくまる少年の周りを、数名のニヤニヤと嫌な笑いをした少年たちが取り囲んでいた。着ているものを見る限り、裕福な生まれであるだろうに、やっていることにも表情にも育ちの良さは感じさせない。

 ハロルドは呆れたように溜息を吐くと、「やめなさい」と暴行を加える彼らに注意をした。



「誰だよ」



 不服そうに唇を尖らせるリーダーらしき少年に、「周囲をよく見るべきだよ」とハロルドは穏やかに言う。



「どんなに冷ややかな目で見られているか、わかるかい?」



 その声音は柔らかなのに、周囲の目に気付いた少年たちはその目の厳しさに恐れを抱いた。王立公園は貴族の婚約者同士がデートをしていることも多い。少し離れたところでは、犬を連れた貴婦人たちが近くのカフェを貸し切ってお茶会も行っている。

 唇を噛んで、逃げるように去っていく少年たちの後ろ姿を見ながら、「躾がなってないな」と呟くハロルドに「あれくらいなら僕が前に出ますので」とミハイルが困ったように言う。



「ハロルドさんに何かあってはいけませんし」


「ハルに何かあれば、こっわぁい神様が出てくるもんねぇ?」



 楽しそうにミハイルの耳元に囁くリリィに首を傾げる。

 ハロルドに加護を与えている神は三柱だ。

 大地と豊穣の女神フォルテ。

 医学の神アルス。

 そして、知らない間に加護を得ていた天秤の女神ユースティアだ。


 フォルテは基本的に人間を守っている神であり、大地に対する大きな危害や、ハロルドによほど理不尽が降りかかったりしなければ罰など与えない。

 アルスも比較的人と近い神だ。最新医療を学ぶために学校に入り込んだりもしているほどに。

 そうなれば、怖い神というのはユースティアのことだろう。



「あ、あの……っ」



 思考の海に沈んでいたハロルドに、キャンパスを抱えた少年が話しかける。アーロンが「どうした?」と目線を合わせると、思い切り頭を下げる。



「ぼ、僕!ウルク・オパルスといいます。助けてくれてありがとうございます!」



 どこかで聞いた名前だ、とアーロンが首を傾げている後ろで、ハロルドは「レスターの婚約者の弟だっけ」と最近ブライトに渡された資料を思い出していた。

 彼が抱えていたキャンバスに目を向けると公園に咲く美しい花々が描かれていた。視線に気がついたウルクははにかむように頰をかいた。



「えっと……自信作、です」



 生き生きと描かれたそれは確かに美しい。芸術には詳しくないハロルドでもそれは感じられた。

 姿を隠したローズがハロルドの耳を少しだけ引っ張る。そして、「さっきの子どもたち、まだしつこく見てるわよ!お尻でも焼いとく?」と尋ねた。ゆっくりと目線をローズの指さす方へ向けると、確かに憎々しげにこちらを見ている。



(執拗にぶん殴りたいわけでもあるのかな)



 見る限りでは、だいぶ芸術への才に溢れた少年ではあるが、それだけだ。

 面倒に思いつつも、腕が折れたりすれば損失だろうか、とハロルドはウルクを連れていくことにした。


リリィの所感

フォルテ→「ざこ女神〜」

アルス→「薬草バカ」

ユースティア→「こっわぁ〜い女神」


そういや、フォルテがなんの神かは初出ですかね……?

ちなみにフォルツァートは天空と戦いの神です。

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