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【書籍化】巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない【4巻制作・コミカライズ化決定!】  作者: 雪菊
6章

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10.食い扶持確保とお買い物



 狩りに来たらアーロン無双だった。

 ハロルドたちが気づく前にアーロンは獲物の存在に気づく。しかも、そうなれば弓を素早く引いて、悲鳴すらないまま、ただ倒れた音だけがする。



(えっぐ)



 仕事ぶりが狙撃手のそれである。

 当の本人は「食い扶持確保」としか思っていない。


 ミハイルはぽかん、とした後に裏切られたような顔でアーロンを見つめていた。彼はアーロンだけはハロルドの内輪でも、自分と同じ平凡よりだと思っていた。そんな彼の後ろをサイコロを持った小さな女神がたまに顔を出していることに気がついているのはハロルドだけである。



(いつ幸運の女神にベタ惚れされてるって言うべきだろう。本人が気付くまで黙ってた方がいいかな)



 今も初めて見る表情のミハイルに「そんなあなたも素敵!きゃっ」と草葉の陰から見つめている少女を見ながらハロルドはそんなことを思った。耳飾りについたサイコロが彼女の動きに合わせて揺れている。柔らかそうなツインテールの黒い髪も同様だ。うさぎの耳がぴょこぴょこ揺れていた。



(加護が与えられてないのは、まぁ……このまま、今の状況であげてもミハイルの幸運には繋がらないっていう判断なんだろうね)



 ただ一つ分かるのは、どう見てもガチ恋の女神が彼に集る女を許さないだろうということだけだ。

 この時点でミハイルも普通ではない。

 ハロルドは可哀想なものを見る目をミハイルに向けていた。


 そんなわけで、しばらく困らない程度の肉を得られたことで、ホクホクした気持ちになった彼らはさっさと退散した。ハロルドたちは別に魔物退治を楽しんでいるわけでもなければ、戦闘が好きだというわけでもないので撤退は早い。ミハイルが「え、ストレス発散にばかすか魔法を撃ちまくるわけでもなく?」と言ったけれど、ハロルドは「地形が変わると迷惑になるでしょ」と苦笑するに留めた。


 そしていつもの如く、解体待ちの間に露店で植物の種漁りをする。アーロンは後ろでミハイルと果実水を飲みながら「ハルの鬱憤晴らしはあっちが本命」と指差す。間違ってはいない。

 時折、露店の主に「坊ちゃん、もしかしてあん時の子か?かー!メガネにっあわねぇなぁ!!」と言われている。認識阻害のメガネの効果で顔の印象が捻じ曲がって見えるせいだ。



「そういや、あん時の夕暮れ草は無事に育ったか?」


「綺麗に咲いたよ。でもプレゼントしようとしたら横から医者に掻っ攫われた」


「医者ならしゃーない。あれも割と希少だからな」



 がはは、と笑いながら新しい種をお勧めされている。育てるのが難しい花・薬草がメインになっていて、姿を隠している妖精たちもソワソワしている。コソコソとハロルドの耳元で「これは買い!とっても良い香りがするの。お肌にもいいのよ」とか「上級回復薬の材料」、「そのお野菜ぃ、甘くて美味しいの!ウチほしい!!」などと主張している。

 アーロンは姿を隠そうがその姿が見える目を持っているので「賑やかだな」と思いながら足元でジャーキーを齧っているスノウに目を移した。



「水も飲むか?」


「わう!」



 元気よく返事をしたので、鞄から皿を取り出して魔法で水を注ぐ。



「ハロルドさんのアレは本当に趣味だったんですね」


「そうだよ。村でも魔物に荒らされた作物見ながら、鍬を片手にブチギレてる」



 楽しく買い物をした後、ハロルドたちはギルドから少し離れた王立公園へと向かう。併設されている植物園に肥料を届けるためだ。普段は騎士たちに預けているが、温室に行ってみたかったハロルドが自分で持っていくことにした。



(欲しい苗とかがあればメモしとこうかな)



 珠に頼めば、割と多くのものが手に入ると知っている。金額はわからないが、自分の作った手荒れや安眠用グッズなどを売り出した利益の一部だ。最初は物珍しさに売れていたようだが、今はそんなに売れてはいないだろう。ハロルドはそんな風にたかをくくっていた。

 実際はハロルドが鑑定しながら配合を考えたそれらは、効能がいいと貴族の間でバカ売れしている。珠がハロルドのお願いを聞けているのは売上金の金貨でぶん殴って手に入れているからだった。

珠「ちょっと希少なくらいやったら、金で殴ればだいたい手に入るんやわ」


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