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【書籍化】巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない【4巻制作・コミカライズ化決定!】  作者: 雪菊
6章

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6.ブライトの兄2



 ブライトの生家、ベキリー家は代々文官としてそれなりの功績を上げてきた、宰相の輩出も何度かあったような家柄だ。しかし、その功績を称えられるのは先代までであり、今代に目立った功績はない。

 そして次代のレスターもどう見ても役に立ちそうもない。粗暴で、考えなしであるところが短い接触でよくわかった。あれが演技だというのなら大したものだが、王家の調べでも性格面はそう変わらなかったのでそういうわけでもないだろう。


 ブライトとアーロンが「さすがルイの予約したお店……」「うっめぇ……庶民には手が届かない店の味だ……」と料理を味わっている中、まさにレスター関連の『嫌な予感』を感じ取ったミハイルは、それに『関わりそうな予感』がする相手をリストからチェックさせられた後でげっそりしていた。

 恨めしそうにフォルテの加護コンビを横目で見たけれど、肩ポンしてきた彼らはすでに切り替えて料理を口に運んでいる。マナーの講習をしながら。



「それにしても、綺麗に食べるようになったな」


「ジョシュア殿下とかミハイルに教えてもらいながら、練習はしたからね」


「……そうか、兄上が。私は兄上の分まで仕事をさせられていたのに、私の友人と仲良く。そうか」



 仲良くはしていない。貴族になるのだから、と好意であれこれ講義はしてくれたジョシュアだが、今もハロルドの領地でヒィヒィ言いながら、アンリの作ったマニュアルを元に復興活動をしている。一番大変なのはフォルツァート教の教会でまともでないところを一掃する作業であるらしい。



「そういえばさぁ、ハロルドくんの領地で見つかった贋作の件なんだけど」



 春季休暇中の話が出ていたからか、ブライトが口を挟んだ。



「あれ作ったの、兄上の婚約者の弟らしいんだ」


「へぇ」



 意外な繋がりにそう言うと、ブライトはどうでも良さそうに調査結果を話し出した。



「その家……オパルス子爵は真面目で堅実なのが有名だったし、お金の流れもよくわかるようにしてあったから、すぐにそれが盗まれて売られたってことはわかったんだ。でも子爵の弟が、容疑をかけられた時点で当主として失格だと騒いでる。バカだよねぇ。自分のろくでなしエピソードの多さと、娘が兄上を籠絡して従姉妹を蹴落とそうとしていることを考えたら、容疑が一番に向くのなんてわかりきったことなのに」


「あー……そこまでいくと、いや犯人お前じゃねぇの、としか言えねぇな」


「しかも、その性悪娘は自分が子爵令嬢になるんだって言い回ってるんだ。もうどうしようもないよ」



 レスターは幼い頃から今のように短絡的で、勉強が嫌いな愚かな少年だった。後継に不安感を覚えた祖父が、真面目なオパルス子爵の娘であればレスターをなんとかできるかもしれないと考えて結ばれた婚約である。しかし、優秀で勤勉な年下の婚約者はレスターと非常に相性が悪かった。生意気に、可愛げなく映ったようである。ベキリー家から頼み込んだ婚約であったのに、そんな彼女をブライト以外の家族は冷遇していた。贋作事件を踏まえて、オパルス子爵家有責での婚約破棄も考えている。



「冷静に考えなくても不貞に冷遇に、暴言?まぁ、有責は兄上でしょ。というか、我が家?というかお祖父様も、女の子にクズの尻拭いをさせるなって話だよ。オパルス子爵はお祖父様を恩師と慕って受け入れたって感じみたいだけどさぁ、娘の幸せ考えてあげてーって感じ」


「今は堂々と愛人と一緒にいるようですしね」



 呆れたような声音でミハイルが続けると、ブライトは「勉強しないくせに成績が良い婚約者に嫉妬してるの、マージみっともなくない?」と続けた。



「そういえば、その流れで行くとブライト。お前、母親の実家から養子に来てくれと言われているみたいだが」


「そうなの?」


「まぁ……直接言われてはいないけど、そんな話はあるみたい。でも、母上は実家が嫌いだからその話、誰にもせずに断ってるねぇ」



 今更貴族の後継になりたくなかったブライトはその調査結果をあえて放っておいている。戦いで後継者を失っていようが、それで爵位が危ないだとかはブライトが知ったことではない。何より、両親はブライトがレスターと同じ伯爵になることを許しはしないだろうと予想ができる。



「そんなわけで、贋作の件は解決しそうだから安心してね」



 そう口にしたブライトを見ながら、ミハイルは「それ、何かまた関わってきそうな気がする」とは思ったが、流石にこの場でいうのは憚られたので、帰宅後に正直にハロルドに報告した。



「確実に当たるものじゃありませんけど」


「……たぶん、当たると思う」



 ミハイルの後ろで、何かキラッとした光が舞っていた。ハロルドは「もしかしたら、俺たちと一緒に神棚で祈ってるうちに目を引いたかもしれない」と少し遠い目になった。

 彼の後ろで、黒いウサ耳がぴょこぴょこと動いていた。

——ハロルドも巻き込まれてるけど、ハロルドも巻き込んでいる……!

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