4.ヴィーちゃん先生
ハロルドとアーロンが胡乱な目をしているのに気がついたミハイルは「あれでも良い先生なのですよ」と告げて苦笑した。その言葉を聞くに、去年もAクラス担当教員だったのだろうと思って、ハロルドは「どんな人?」と尋ねる。
「裏表がない、方……ですかね」
「まぁ、一生懸命で裏表がなく、正義感が割と強い人ではあったな」
ルートヴィヒが付け足すと、ブライトは「知り合い?」と問う。それに頷いて「アンリ兄上の元婚約者の姉君だ」と答えた。
「そこ、私語はお行儀が悪くってよー?今年は平民の子もいるのねー?優秀な学年のようでよくってよー!」
合間合間に挟まる高笑いが気になるが、平民に特に悪感情を抱いていない様子にアーロンはホッと息を吐いた。
「さて、今日からまたビシバシ課題を出しましてよー!!わたくし、あなた方を立派な大人に育てるための協力は惜しみませんわー!」
慣れた様子の元々Aクラスにいたらしき面々に、「ああ、うん。慣れるんだろうな」と思っていると、ガタンと立ち上がって、ヴィクトリアに指差した少年がいた。
「私はお前のような行き遅れ無能女が担任だなんて、認めないからな!!父上に言って担任から外してやる!!」
「うるさくってよー!」
チョークがスコーンと見事に少年の額に命中すると、彼は後ろに倒れる。気絶しているようだった。ミハイルが呆れたように「国が教員の任命をしているのに、伯爵令息が文句言って代わるわけねぇだろ……」と呟いた。
ちなみに、昨年度ハロルドたちの担任だった男性教諭は三年続けて授業態度が悪かったためクビになった。
Aクラス担任を任されている時点で「優秀である」と偉い人に認められているのだ。ちょっとプライドが高いだけの子供たちが難癖をつけても、その立場は変わらない。
「確かにわたくしは独身ですけど、それはわたくしに相応しい賢く強い殿方がいないだけですわー!あなたみたいなへっぽこばかりで困っておりますのー!」
そう言って高笑いするヴィクトリアをハロルドたちは「おもしれー女」みたいな目で見ていた。
「それでは、各教科の課題を配りますわよー?皆様お受け取りになってー!」
次の授業までにやってくるように、と課題を渡されたハロルドたちだが、その光景に唖然とする。浮いた紙がそれぞれの生徒の目の前に積み重なっていく。
「次の該当授業までにこなしてくるのですよ?よろしくってー?」
それに返事をする。彼女もなかなかの曲者の気配がした。
「ヴィーちゃん先生、本当に勉強に関してはマメなので、授業も楽しみにしていていいですよ」
「ヴィーちゃん先生」
呼び方はそれなのか、とハロルドたちは何とも言えない顔をした。
昨日いっぱいで感想欄閉じました!!
たくさん感想をありがとうございました!!
おまけ!
ヴィーちゃん先生は割と普通に人気のある、縦ロールでちょっと……結構高笑い(おーほっほっほー!!)がうるさい先生。
アンリとは同い年。
こんなでもクソ真面目なので、妹に煙たがられている。ちなみに妹は元鞘狙って突撃したけど、撃沈した。
 




