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【書籍化】巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない【4巻制作・コミカライズ化決定!】  作者: 雪菊
1章

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10.信仰とはなんぞや




 届いた二通の手紙を見ながら、ハロルドは溜息を吐いた。

 一通は国から。

 もう一通は教会から。



(宗教団体から、そこはかとないドクズの香りがする)



 国からの手紙には、保護をさせてもらいたいことやその理由、互いの意識と何を大切にするかの擦り合わせが必要だということ、面談の申し込みと日時の希望が書いてあった。真っ当である。

 教会からの手紙にはまずどこぞの神から加護をもらっているようだが一番はフォルツァート神であるというところから始まり、それがどれだけ素晴らしく尊い神かについて述べられ、学のない平民には分からないかもしれないけど神の加護を得たからには教会に所属すべきでしょ(笑)みたいなことが書かれている。

 ハロルドは「マジか」と呟いた。



「まず他の神を信仰しているところに所属する意味がないだろ」



 しかも、女神フォルテ曰く彼女は二大神の片割れだ。決して軽んじていい神というわけでもないのだろう。だというのに、改宗でもさせるのか、と勘繰るレベルでのフォルツァート上げだ。しかも平民が神に逆らうわけがないよな、と自分たちをやたらと素晴らしいもののように書き連ねていた。怒りとかそんなものを通り越して「マジ?」としか言えない。


 結局、とりあえず国の面談とやらを受けてみるか、とハロルドはいくつか指定された日時の中で学園で授業を受けなければいけない時間を省いて返事を送った。他の日程に関しては現状、生活費と貯蓄用の活動しか予定がないので多少ズレても構わない。教会からのお手紙に関しては丁寧に「私は女神フォルテの信徒ですので」みたいな文章を長々と書き連ねて返事を出した。



「仮にも信じるものがあるならこれで引くだろ」



 そんなことを言いながら返事を出せば、また同じようなタイミングで両方の返事が届いた。やたら分厚い教会からの手紙をドン引きしながら開ける。嫌な予感がしたので、縁起の悪そうな方から開いた。


 ガチギレの手紙だった。


 ハロルドは特に主神とされるフォルツァートをバカにした文面を送っていたわけではない。あくまでも「仕える神が違うので」という返事だった。

 けれど、なぜか平民如きがバカにしやがって、天罰が降るぞ、というような脅迫じみた手紙がやってきた。



「ねぇわ」



 マナーも何もないヤバい手紙を見てから国からの手紙を読んでホッとした。普通の手紙だ。時候の挨拶から始まり、いきなり神様関連のことで騒がせることになったこちらを気遣い、最終的に決まった日時の確認と出向く際の服装など細かいことが書いてあった。

 おそらくは両方ともそれなりの貴族であると思われるのに、どうしてこんなに差がついているのだろうと窓の外を見た。


 窓の外を見れば、ブライトがるんるんと歩いていてハロルドに気がついた。どうやら、冒険者活動は割とうまくいっているようだ。

 最近では討伐部位や素材になる部分もそこまで損傷させずに倒せているとギルドで彼を教えていた人たちが嬉しそうに自慢していた。


 ハロルドに気がついたらブライトは嬉しそうに手を振る。すると、そばにあった木にゴンと手が当たった。そこからメキメキと音を立てて木が折れる。



「ハル、外になんかある?」


「ブライトが俺に気づいて手を振ったら、手が木に当たって折れた」


「え、ホントだ。いやでも一本で済んでるあたりだいぶ成長したよな」


「そうだな」



 冒険者ギルドに相談していなければ同じ動作で五本は同時に折っていた。

 乾いた声で笑っていたアーロンだったが、机の上の手紙に気がついた。アーロンは魔弓使いのジョブスキルを持っていた。それなりにレアなものではあるけれど「所詮狩人」みたいなことを腹の立つ顔で言われて終わったらしい。「女神が渡してきたスキルがそれで終わるものか?」と疑問に思ったアーロンではあるが、女神の名前なんて全く出さなかった。「邪神信仰者が何か言ってやがる」と身も蓋もないことを考えて終わらせた。

 友人も同じようなものだろうと思っていたら、ハロルドは女神の名前のついた加護を持っていたせいで、ちょくちょくやたらと良い紙で手紙を送りつけられていた。



「大丈夫か?」


「ああ、これ?大丈夫ではないけど、相談はしてみるつもり。俺は権力とか要らないけど、抵抗するには無力だし頼れるところがあるなら頼らないとな」



 ウィリアムが信頼できそうな大人だったために、こういった手紙が来たことに関して教会には若干の失望を感じる。まともな手紙を送っていたら優先されていたのはきっと教会だった。けれど、彼らは相手が平民の少年だと思ってわかりやすく馬脚をあらわした。

 ハロルドは国の考えにも、教会の実態にも詳しいとはいえない。貴族の生まれでないので社交の場にもいないのだ。知るわけがない。だからこそ、最初だけでも仮面を被っていれば騙せただろう。



(これもフォルテ様の加護なのか?)



 少しだけ悩んで、彼はミニサイズの神棚に花を供えた。



「それ、薬になるやつじゃないのか?」


「そうだけど香りもいいし、嫌がられはしないだろ」



 神が意外と祟るとか知らないハロルドは、割と大雑把だった。

いつも読んで頂き、ありがとうございます!

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