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【書籍化】巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない【4巻制作・コミカライズ化決定!】  作者: 雪菊
5章

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27.湖浄化大作戦2



 シャルロットとアシェルは知り合いだったらしく、ハロルドにはお互いにあまり遠慮がないように見えた。アシェルはあまり家の存在を表に出さないので貴族出身だということを忘れられがちであったりする。けれど、貴族という世界は案外狭いものだ。学園に通う生徒には貴族が多いし、兄弟姉妹が多ければその伝手で知り合うこともある。縁戚関係であることも少なくない。

 意見を交わす二人の意見をメモする係になりつつあるハロルドは、自分の髪を三つ編みにして遊んでいる妖精たちに「そろそろやめなさい」と言うとローズたち3人は渋々「はぁい」と言ってそれを解いた。



「まぁ、出揃ったか?」



 ハロルドが意見をメモした紙を受け取ったジョシュアは地図に必要だと思った事項を書いていく。それを見ながら必要な物資や人数について話し合いを重ねていく。

 珠がニッコニコで算盤を弾いている。ハロルドが「この世界にも算盤あるんだな」と思っているとマリエが口を開いた。



「この世界にも算盤、あるんだ!?」


「算盤知っとるん?これは大和(やまと)で使われとる計算用の道具やねんけど、こっちで知っとる人は初めてやわ」



 大和というのはマーレから海を渡って更に先にある島国だ。日本に似た国があると思ったのか、マリエは「え、じゃあ味噌は醤油はある!?お豆腐は!?」と食い気味で珠に問いかけていた。

 マリエが珠に夢中になっている隙に、ハロルドたちは班分けをしていく。



「おい、マリエが実行部隊になっているが」


「浄化ローラー作戦に必要な人材だから仕方がありませんわ」


「弱った魔物を片っ端から倒していくことになっています。まぁ……ラリマー子爵令嬢がおりますし、彼女に万一はありますまい」



 ジョシュアが不服そうに言った言葉にエリザベータとアシェルがそう返すと、「俺もそちらに」と言い出した。



「ジョシュア殿下は、森から魔物が脱走した時に備えて指揮をとっていただく必要がありますので当然お留守番ですよー」



 ノアがジト目でそう言うと、しょぼしょぼした顔で頷いた。彼もまた自分が何かやらかせば、マリエの命も危ういと知っているので、若干素直ではある。



「俺は反対方向から浄化ローラーしていくけど……」


「僕たちにおっまかせ〜……です」



 ルクスがハロルドの肩でぱちんとウィンクをしてみせた。リリィが調子に乗っている時のような口調である。お姉さん分の影響がちょっぴり出ていた。

 なお、ハロルドの方がマリエより護衛が多いのは現状ではある種仕方のない話である。何せ、彼は王家が復活させようとしていた土地を回復させたり、精霊を助けたり、神の声を聞けたり、王太子の命を助けたりと割と国の英雄に片足突っ込んでいる少年である。本人はいまだに「穏やかにのんびり生きたい……」と呻いているが、功績が大きいので贔屓せざるを得ない。



「ルイも連れてくるんだったな」



 弟の名前を出してジョシュアは溜息を吐いた。

 第三王子ルートヴィヒは光属性の魔法を使う力が王家でも突出して強い。しかもここにいたならば、友達を手助けできるとウキウキで暴れ回ってくれただろう。最近ではジョブスキルの効果もあるのか剣技も並の騎士以上のものになっている。身長も伸びて体格も良くなってきた。仕事をしながら剣技も磨かれているので、ジョシュアもその才能には若干の嫉妬を覚える。



「ルイはなんでか俺のために死に物狂いで戦ってくれそうな気がするからダメです」



 ハロルドはルートヴィヒにとって初めてのお友達だからか、とても好かれている。救われた恩や、いつまでも謙虚な友人に日々好感度が爆上がりしているという事実を心が覗けるわけではないハロルドは知らないので、「なんでだろうなぁ」と少し首を傾げる。ハロルド自身は友人には若干対応が甘くなる自覚はあるけれど、特に謙虚なつもりはない。王族用のサロンだとか高位貴族が使う場所に入れてもらうこともあるのでむしろ与えてもらっている立場だと思っているが、ルートヴィヒはそう思ってはいなかった。

いつも読んで頂き、ありがとうございます!!

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