26.湖浄化大作戦1
母親の件が意図しない出来事で、ハイスピードで片付けられてしまったせいでハロルドは意識を強制的に湖の精霊に向けさせられることになった。ペーターについては若干精神的な部分が心配ではあるが、彼のことだけを気にするわけにもいかない。
青い顔をしていた修道女は責任を感じていたらしく、落ち込んでいるようだった。ローズは最終的にミハイルに「励ましておいて!」と押し付けて帰ってきた。代わりとでもいうようにペーターとノアが来ている。ペーターがいるのはノアに「この件が終わったらこの子鑑定して欲しいんだよね」と引っ張ってこられたからである。
「精霊の救助をしに行かねばならないが、それにあたってとある人物を招集した」
「はーい!アシェル・ローズクォーツでーす!!ハロルドくんやっほー」
「お久しぶりです、アシェルさん」
ハロルドが住んでいた村の冒険ギルド職員、アシェル・ローズクォーツがそこにはいた。座っているところを見る方が多いので、普通に立っているとその背の高さに少し驚く。シャルロットとそう変わらないあたり、180cmはあるだろうか。
お気に入りの少年と久しぶりに出会ったからか機嫌の良いアシェルは「実は今年度からハロルドくんの領地に来ることになってさぁ〜」とにこにこ話している。ハロルドも自分が知っていて、親切なお兄さんが来たのでちょっと嬉しそうだ。
「じゃあ、ここの受付のお兄さんですか?」
「ううん、そろそろ責任っつーもんを覚えろって言われて副ギルド長になるんだ。そんなもん背負いたくないよねぇ?」
「重いですよねぇ」
そんな風に笑い合う二人だが、それでも任されたならきっちりやるタイプだ。だからこそ抱え込む厄介ごともそれなりに多い。
二人は「大丈夫なのか」とでも言うような周囲の視線をよそに、いつの間にか地図を取り出して作戦会議を始めていた。彼らは周囲が思う以上に真面目っ子だった。
「さて、それじゃあ僕は割と広範囲殲滅得意だから後ろからドカーンしてた方がいい感じ?」
「いえ、森はあまり傷つけないでいただけると」
「うーん、そうなるとやれることって限られてくるなぁ。ちなみに理由ってある?」
「うちの子曰く、あの森の水底に精霊がいるらしいんですよ。精霊樹かそれに準ずるものが隠れてた場合ちょっと笑えない事態になるかもしれないなって」
ハロルドの言葉を聞いてアシェルは思いっきりめんどくさそうな顔をした。エリザベータも同じ感情を得ていた。表情は全く変わらないけれど。
「またハルが復活させる事はできないの?」
「別にやれなくはないけど、その場合はしばらく王都に戻れないな。様子見のつもりで来たけど腰据えて、数ヶ月数年単位でやらなくちゃならないと思う」
エリザベータの意見にハロルドがそう返す。リリィも追撃とばかりに「成長促進もアンネなら大地に大した負荷をかけずに使えるけどぉ、ウチらじゃ過負荷になっちゃうからオススメしなぁい」と言うと諦めた。
ハロルドは神子という立場なので学園事情はある程度忖度してもらえる可能性が高いが、それが彼の立場を悪くする可能性は高い。四年生からの専攻で領地運営についての授業を選ぶのにもある程度の成績が必要だ。自分のせいでハロルドが余計に苦労してはいけないとちょっとだけで自戒した。
「じゃあ小まめに倒していくしかないか〜……」
「真面目にやればお強いのですから、そんな声を出さずともよろしいのでは」
シャルロットの言葉にアシェルが彼女に顔を向ける。
「未知の探索で懸案事項が多いのは憂鬱なもんだよ。どうしてもね」
冒険者をやっていたのだから、アシェルだって冒険は好きだ。けれど、やっていたからこそ危険なことに対する策がどれほど大切かも知っている。
ちなみにシャルロットとアシェルは割と近しい親族




