17.森の探索2
そこに残されていたのは子供であっただろう肉片と、ボロボロの布だ。一応鑑定をかけると、例の香水を使われた形跡が見られて気分が悪くなる。孤児を人とは思わないような所業に腹立たしさが募るばかりだ。
香りに誘われて、魔物もたくさん出てきているため、証拠としてマジックバッグに入れる。
「これを見逃していたというのであれば、領主は酷く無能だったのでしょうね」
シャルロットの言葉に頷く。あれだけ大々的にやっていたのだ。気づかなかったでは済まないだろう。この領地のフォルツァート教の教会の全てを一度抜き打ちで改めなければいけないだろう、とハロルドは溜息を吐いた。すでに一緒に来た聖騎士の一人がリストを作成しているところを見た。今回も大捕物になるかもしれない。
「次はもう少し奥でしたわね」
「ジョシュア殿下たちから預かった騎士たちも多く、手分けができて助かりましたね。でないと、探索しきれません」
「スタンピードが収まったと聞いているのに予想よりも魔物が多い。湖まで出たら早く引き返した方がいいかもな」
エリザベータとミハイルと共にハロルドも考え込む仕草をする。彼らの安全を考えれば今すぐ引き返すのが正解であるのはわかっている。わかってはいるが、何か行かなくてはいけないような気がした。自分が行けばどちらにせよエリザベータたちはついてくる。シャルロットがいるため、早々大変な目には遭わないだろう。
もう少しその場を調べてから、ハロルドたちは再び出発した。異常な興奮を見せる魔物たちを倒して回収しながら、目的地の湖を目指す。
辿り着いたそこには異様な光景が広がっていた。
睡蓮に似ているが、それよりももっと毒々しい赤をした花が湖に所狭しと咲いている。蜂蜜を煮詰めたような濃く甘い匂いが広がっており、その周囲には酔ったように魔物が群がっており、その花が咲いた湖の水を飲むと恍惚とした表情を見せる。
(これ、ヤバい植物なんじゃ……!?)
手を出せば全ての魔物が襲ってくる可能性もある。何か対策を立てて、討伐部隊を組んでもらわなければいけないだろう。そう考えたハロルドが「撤退」と口に出すと、同行者の全員が頷いた。
そして、実際に動こうとしたときだった。森に溶け込むような濃い緑の毛を持ったウルフが駆け出した。ソレはハロルドたちを一瞥することもなく、横を通り抜けて走り出す。
「三匹か。ウルフ系は鼻がいい。……餌にされた孤児がいる可能性もありますが、いかがいたしましょう」
「追いましょう」
シャルロットの問いにそう答える。
ウルフ三匹であればそう強い脅威ではない。湖からも離れることになる。
そこに待つものが何かも知らないまま、彼らはウルフを追いかけ始めた。
同じ時に生まれた片割れの居場所であれば、なんとなく把握ができると、ルアは姿隠しの魔法を使って湖の中央へと来ていた。異空間収納魔法を使って花を一輪採取する。そして、気配を感じて湖の中を見つめた。
「……この花、俺が思ったよりヤバいものかもしれん」
ハロルドに報告を入れなければ、とルアは急いで飛び立った。
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異空間収納魔法は闇魔法系の魔法。




