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【書籍化】巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない【4巻制作・コミカライズ化決定!】  作者: 雪菊
5章

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5.妖精に愛された人



 ハロルドがミハイルを連れて家に戻ると、早速妖精たちが姿を現した。その姿を見てミハイルは絶句する。



「とりあえず、一緒に住んでいる友人以外の家族を紹介するよ」



 順番に妖精の名前を呼ぶと、彼らは手を振ったり、胸を張ったり、ぺこりとお辞儀をする。その様子はとても愛らしいが情報を整理しきれないミハイルはそっと手を挙げた。



「ハロルド様」


「何かな」


「妖精様が、家族……ですか?」



 ハロルドがなんでもないことのように「そうだよ」と答えるとミハイルはそっと胃の辺りを押さえた。ハロルドはローズたちが押しかけてきてから慣れているので感覚が少し麻痺しているが、そもそも妖精を見ること自体がレアケースである。しかも、妖精だってみんながみんな良いものではない。その中で確実に自分と相性が良い、善性の妖精に気に入られている辺り、ハロルドに与えられた女神の加護は仕事をしていた。対人間よりも人ならぬものに対しての方が影響が強かった。



「ハルに何かしたら消し炭!」


「氷漬け」


「いっき埋めぇ〜」



 言ってることも不穏である。

 ミハイルは「これが姉上と仲良くできる男の度量……」と呟いた。エリザベータも最近、「ハル、最近は面倒な者には付き纏われていない?何かあればわたくしが消し飛ばしてあげてよ」と言っている。その点から考えても間違えてはいない。なお、エリザベータはハロルドに「法の中でやってね」と言われた。ハロルドは本来覗き見バットくん3号もダメだとは思っているが、現在見られているのが自分だけのようなので許容している。



「それでだけど、部屋は一応空いてるところ使っても良いよ。貴族街にあるから釈放されたとしても来ないとは思うけど、君の両親が来たら多分さっきローズたちが言ってたどれかの対応になりそうだけど平気?」


「あ、それは全然平気です。むしろしていただいた方がゴミが消えて助かります」



 ハロルドは笑顔で自分の家族をゴミと言い切ったミハイルを見ながら、「エリザ、本当に君の弟大丈夫?」と思ったけれど、「真面目な人間ほど損をする家だったみたいだからむしろまともかも……?」と思い直した。ハロルドも特にタンザナイト家に興味はなかった。

 しばらくすれば、タンザナイト家もまた王家預かりとなる。その方が領民も安心だろう。



「それで、僕は一体何をすれば」


「しばらくは領地を見に行くから付き添いかな。帰ってくる頃には講師も決まってるだろうから侍従としての勉強も学園のものと同時進行でやってもらう。頑張ってね」



 ミハイルは目の前の主人が言う以上に何か困難なことを言われている気がしてきた。

 条件自体は悪くない。見習いとはいえ働きながら学園に通うことができるし、ハロルドは王族にも認められている身だ。将来性がある。そうでなくても、与えられた領地は復興ができれば以前のような観光で賑わう土地に戻る可能性もある。食いっぱぐれはないだろう。家がなくなる身としてはありがたいことだ。

 ただ、目の前で妖精たちに「ハル〜、ご飯何〜?」などとまとわりつかれているハロルドを見ると、「妖精を怒らせれば何かやっばいことが起きるのでは?」という気しかしない。



「恩人裏切るつもりもねーし、姉上もなんか落ち着いたらしーし、僕が気合い入れて頑張れば大丈夫かな」



 何かあるかもしれないが、タンザナイト家にいたときのような「逃げないと」という気持ちは湧き上がってこない。スキルが発動していないなら最終的にはなんとかなるだろう、とミハイルは部屋に荷物を置いて台所へと向かった。平民になる上に、一応は部下なので生活に必要なことも学ばなければならない。それでも、両親と同母の姉が一緒に暮らしていた時よりも気分は楽だ。



「ミハイル、おっそぉ〜い!」


「はは、ごめん。なるべく早く慣れるよ」


「無理は禁物ですよ」



 とりあえず料理の手伝いから始めた彼は、意外とフレンドリーな妖精たちと世話焼きな主人に囲まれて「姉上のおかげとはいえ、僕って運がいいかもしれない」と思い始めた。

いつも読んで頂き、ありがとうございます!


ミハイル目線でも両親と姉は結構ヤベェので最初はあった情がだんだん擦り減っていって今の「なんでも良いからまともに生きたい僕を巻き込まないでくれ」になった。

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