15.ザハラオアシス
それから数日後、無事にザハラオアシスと呼ばれる場所へ辿り着いた。首都目前のそこは大きな水場を中心に栄えている。
オアシス特有の植物も多く生育しており、貿易も行われているためか賑やかだ。
「水場があると少し涼やかな気がするわね」
「すごいな。あれはナツメヤシかな」
屋台が多く出ていて、ナツメヤシの実を使ったキャンディや、豆で作られたコロッケに似たものなどが売られている。異国情緒溢れる場に少しだけ観光客気分になりそうだった。
そんな彼らに「あっちは観光エリア。僕たちはあっち」とアルスが示したその先には、どう考えても異質な空間の裂け目があった。
「おい、あれはダンジョンに入る裂け目だぞ」
「そう。ザハラオアシスの特殊型ダンジョン、雨林異界ダンジョンだ」
「予想はしていましたけれど」
「ハロルドがいればそう苦労はしないはずだ」
アルスの目がどこかキラキラと輝いている。その反面、アイマンの表情は渋い。
「ここが、どれほど危険なのか知らないからそんな呑気なことを言える。しかも、中に入ってしまえば外界からは隔絶される。その子たちが攫われたりしても証拠がないなんて言われかねないぞ」
アイマンの言葉に、首を傾げたアルスは「大丈夫だよ」と断言した。
「よりにもよってこの中で彼に危害が加わるようなことになれば、ティターニアが黙っていない。
それより、君との契約はここまでだけれどどうするんだ?」
ハロルドは「ティターニアとはなんぞや」という顔をしながら妖精たちを見ている。ローズは苦笑し、ネモフィラは吹けもしない口笛を吹き、リリィは「ナイショ」とウィンクをした。
これは教えてくれないなと察したハロルドが自分に鑑定をかけた頃、髪を乱暴に掻き崩したアイマンが「ああもう!付いていくよ!!今回だけだぞ!!」とキレ気味に叫んでいた。
「なぁ、ローズ」
「はぁい」
「花の妖精族って何だ?」
「アタシたちの種族」
ハロルドの知らない間に、いつの間にか三妖精の加護ではなく種族単位になっていた。ティターニアという存在はこれに大きく関わっている気がとてもするけれど、ルクスとルアの存在もあるので一緒にいる妖精が増えたせいかもしれない。少し迷うところだ。
(うーん……。けどまぁ、会ったこともない存在だし、藪を突いて蛇を出したくもないしな。普通にしてれば怒りを買うこともないだろう)
加護をもらっている以上嫌われているということはないだろうと気楽に考えることにした。というか、脳がそれ以上の受け入れと理解を拒んだ。
ハロルド、ようやく気付く