5.妖精たちの影響
宿を取ることも考えたが、エリザベータが「割り増し料金を取られるのも癪ですし、今日は野宿にいたしましょう」と言うので、「まぁ、テント建てたしな」と同意をした。
一応結界を張ってみると、魔法を使う時にいつもより周囲の魔力が“言うことを聞かない”という感覚を覚えた。
「国によって結構魔力の質や魔法の行使の仕方が変わるの」
「ボクたち、ここ好きじゃない」
「ウチらが根を張りにくいのよねぇ。土地柄かしら?」
ハロルドの魔法は妖精の影響を大きく受けている。三人がそう言うのであれば、より気をつけないといけないと考えをまとめるように腕を組み、少ししてから頷いた。
「ありがとう。俺も気をつけるよ」
微笑みかけるハロルドに安心したのか、彼の頭の上や肩の上に座る。
魔法が今まで通りには使えないとなると、ハロルドもやり方を考えなければいけない。自身の持つ魔力は膨大ではあるが、万が一を考えるとこのラムルという国の魔力も使えていた方がいい。
(魔力に変換、いやできればそのまま取り扱いできた方がいいけど。何かないかな)
錬金術師のジョブスキルを発動させると、いつも通りの液晶パネルが現れた。武器という項目に触れて、絞り込みで“自分に最適化”を選ぶ。
「なんか、すごいハイテクになってるな?」
首を傾げながら「フォルテ様がパワーアップでもしてるのか?」と思ったけれど便利なものはそれでよし、とよく考えないことにした。二神の加護の相乗効果というものであったりするが、ハロルド本人は仕組みがわからなくても使えればいいか、というある種とても彼らしい感性をもって受け入れた。
一覧から現在最適であろう武器を見ていると杖だの短剣だのが表示される。どこまでも支援系魔術職のようだ。説明文に「バフ系魔法が使いやすい」だの「相手をデバフでぐずぐずにしてやりたいあなたにおすすめ」とか「回復魔法特化型で味方をひたすら働かせたい!そんなあなたはこちら!」など書いてある。
(説明文、ひっどいな。誰が考えてるんだ)
「パラケルススの秘典か。懐かしいな」
アルスに急に声をかけられてハロルドは驚いたような表情で振り向いた。少し懐かしそうな表情で、ハロルドの手元を覗き、「あれはこの画面?とやらを見ながらよく頭を掻きむしり、“材料が足りない!”と呻いていた」と言う。
「材料……」
そう言われてしっかりと材料を見れば、一部足りないものもある。性能がいいものほど希少な材料を要求されていた。
(ま、無いものは無いし)
作れそうなものをピックアップしてメモを取る。砂漠の先で採取をするだけである。戦いに来たわけでもないのだから、材料があって今作れるものを用意しておくだけにしよう、と有事への備えとして買い出しのリストに入れた。
ここ最近周囲が騒がしいのが自分のせいではなかったため、彼は自分の顔が執念深く狙われるくらい良いことを忘れていた。
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