4.旅仲間
「医神様の導きでわたくしもここにいる、ということですね」
説明を終えると、彼女は少し考え込む様子を見せた。ハロルドは何とも言えないような表情になる。
(ブライトが関わらなければまともだ。今まで話してきたヤバいヤツらの数倍、話が通じる)
エレノアを始めとした、あらゆるヤバいヤツから逃げてきたハロルド的にはそう見える。
少し考え込んでから、エリザベータは「よろしいでしょう。わたくしもお供いたします」と口に出した。流石にご令嬢を引き摺り回すわけにはいかないとハロルドは口に出そうとしたが、扇を畳む小気味の良い音に遮られた。
「距離を考えればわたくしに使う護衛費用よりも、装備を整え、腕の立つ冒険者を雇う費用を優先するべきです。それに、わたくし強いですし」
「それは、はい。お強いですよね」
ブライトの愚痴を思い出して肯定してしまった。おそらく単純な技量でいえばハロルドよりもよほど強いだろう。ハロルドが何とかなっているのは女神フォルテと、今も一緒にいる妖精たちのおかげである。自分が希望したとはいえ、基本的にハロルドは生産職であって戦闘には向いていない。
「わたくしは魔導師のジョブスキル持ちですの。それに王子妃教育でこちらの国の勉強もしておりますし、多少はお役に立つでしょう。それに、神の加護を得ているあなたよりも価値は低い。結果的に資金不足などであなたの身を危険に晒すよりはマシでしょう」
「ふむ、それもそうだな。許す。だが、その言葉遣いと服装は早々に何とかするべきだろう」
「人のことを言えませんわよ、アルス様」
アルスは姿こそ平民だが、言葉遣いが少し偉そうだし、見てくれが美しい。三人ともおそらくただの平民には見られないだろう。ハロルドは本当に根っから平民なのだが。
「殿下から頂いたものですが、仕方がありません。ドレスと髪飾りは売ってしまいましょう。あなた、わたくしが着られるような服はお持ちではない?」
「俺の服で良ければ」
「ではそれで。テントはお持ち?」
求めに応じて、テキパキとテントを建てていく。出来上がるとさっと入って、着替えを済ませて出てくる。貴族のお嬢様が自分で着替えられるものかと少し考えていれば、エリザベータは「あまり深く考えなくともよろしくてよ」と口に出した。
「調べておられるかもしれませんが、わたくしは過去、父の後妻や異母妹に侍女やらドレス、様々なものを奪われていたことがあります。着替えくらいは自分でできましてよ。……まぁ、ジョシュア殿下が知って大層お怒りになった結果そのようなことは無くなりましたが」
「ジョシュア殿下のことを悪くは仰らないのですね」
「わたくしがあの方に寄り添えぬのも悪かったのです。わたくし、どうしても殿下に興味が持てなくて」
感謝する気持ちもあるし、ある程度は幸せになってほしいと願うこともできるけれど、どうしても興味関心が持てなかった。
エリザベータが興味を持ったのは魔法と、ブライトだけだ。
(ブライトがいないと割と普通の人に見えるな)
表情は“無”ではあるけれど、ハロルドにはそれがいっそ心地よく思える。エリザベータが自分に興味を持っていないからこその安心感もあるだろう。
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