39.覗き見バットくん3号
勇者のことはさておいて、ハロルドは友人に付き纏うエリザベータのこともどうしようかなと思っている。
継母やら異母妹に虐められてはいたようだけれど、第二王子が手を回していたおかげで生活にも装いにも困ることなく生活している。守ってきてもらっていたのに無関心で、なんの感情を抱くこともないように見えていたようだ。そういった意味では相性が悪かったのだろう。第二王子を拗れさせた一因となっている。ハロルドはちょっとだけ「ルイは家族だから調べてこの結果怒るよな」と思った。他人から見ればだからと言って浮気していいとはならない。第二王子ジョシュアが婚約者をそれなりに助け、その距離を縮めようとしていたという部分は知れて良かった点かもしれない。
実際に彼女がどう思っているかなんて、聞いてみなければ結局わからないけれど。
なんて思った時もあったが。
「行動力の化身か」
魔法の訓練の授業で、ブライトが少し女生徒と話しただけで上空から氷柱が落ちてきた。
ハロルドの張った結界がそれを弾いたけれど、ブライトの表情は固い。せっかく努力の結果、他人と触れ合えるまで能力をコントロールできるようになったというのに台無しである。
(ルクスのおかげで結界とかの魔法もいい感じで使えるようになったな)
光属性系統の魔法は少し難しく感じていたのだが、彼が現れた途端に簡単にできるようになっていた。ちなみに、魅了系の魔法もおそらくやろうと思えばできそうだけれど、「一生使う機会がないといいな」と思っている。
「これ、いつまで我慢すればいいと思う?僕と関わったせいで人が死んだら流石に胸糞悪いんだけど」
「普通に考えて、女と関わりなく生きるのなんて不可能だもんな」
「本当それ」
ブライトとアーロンの話を聞きながら、ハロルドは「どこから見てるんだろう」とキョロキョロとあたりを見回した。
「ハル、こんなの飛んでたわ」
「魔力、たくさん。気持ち悪い」
「これぇ、魔道具じゃなぁい?調べてみたらぁ?」
ローズたちから大きな目にコウモリの羽が生えたようなものを受け取って、鑑定をする。「覗き見バットくん3号」という文字に眩暈がした。
——覗き見バットくん3号
大好きなあの子のあんな姿やこーんな姿を陰から見守りたい!そんな皆様の声にお応えして小型化、ローコスト化しました!!
魔力を満たすことで元気よく動きます!!
「商品説明するんじゃない」
自分の魔眼に小声でツッコミを入れてしまった。あと元気よく動くな、とめちゃくちゃ嫌な顔をした。
それを見ながら「ふむ」と頷いた。
授業が全て終わった放課後に、ルートヴィヒと一緒に王族専用のサロンに入った。
アーロンとブライトは着替えて冒険者ギルドに行くらしい。神獣が一緒であるのでこのままブライトが爆発するよりはという判断である。「やらないけど、怪我させちゃうからやらないけど、一発殴りたい……」と拳をふるふるさせていたのを見てアーロンがルートヴィヒに許可を求めて連れて行った。
「何気に私たちが二人きりというのは珍しいな」
「そうだね。いつもアーロンかブライトのどちらかはいるし」
「うん。たまには良いな」
そう言ってはにかむルートヴィヒ。
そんな彼に言うのは申し訳ないなと思いながら、今日の氷柱串刺し未遂事件と監視されている件について話した。
「殺人未遂と機密保持法違反で牢にぶち込みたいが、現行犯じゃないからな」
「機密保持法違反ってブライトがいるところに飛ばしてるなら、執務室とかも見てる可能性が高いから?」
「それもある。というか、平民を殺しても貴族が裁かれなかったのなんて百年ほど前までの話だぞ。今回は無理やり捕まえるのは無理そうだが、頭がおかしいんじゃないか?」
貴族を殺した時と、平民を殺した時では確かにそれなりに差はあるけれど、無罪放免になるなんてことはない。
「ところで、これって一般に使われてるものなのか?それとも禁制品?」
「それがどの程度の機能かにもよるな。調べても構わないか?」
伯爵家を探る口実にもなる、と二人は覗き見バットくん3号を見ながらカップを傾けた。
「別に行動力があるのは良いんだけど、やり方だけなんとかしてもらわないとな」
ハロルドはなんとなく、「愛情表現のやり方がわからないのかもしれないな」と思った。
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