37.気分転換
まさかの二回行動
女神フォルテにリラックス用のあれこれをお供えして、祈ってから作業の準備をした。
マジックバッグなどの、買うと0の桁がとんでもないものを作れるようになったのは妖精が二人増えてから良い誤算だった。とはいえ、アーロンと妖精たちのものを作ったら素材がなくなってしまった。上位魔物素材はなかなか手に入ることがないし、しばらくは作れないだろう。
「リッパースクワロルは魔物としては小さいからな」
ジュエルシリーズと呼ばれる魔物はその身体自体に超高濃度の魔力が込められている。だからこそ一般的な魔物よりも強いし、厄介で、その分高く売れる。リッパースクワロルのジュエルシリーズはその中でも小さな部類だ。とはいえ、それ以上大きくなるとその強さも増す。自分が異空間収納のスキルを持っていることもあって無理をしてまで欲しい品でもない。
「闇魔法の応用でこんなに便利な鞄ができるものなんですね」
ウキウキと渡された鞄からその大きさに合わないものを出すルクスにハロルドは苦笑した。功労者であるルアの方はマイペースに日向でお昼寝タイムだ。
「なんか、肥料とリラックス用品、あとハンドクリームとかみたいなのをガンガン作ってたらジョブスキルで作れる魔道具の種類も増えてるんだよな」
薬学の方を主に使用しているが、それによってジョブスキルが磨かれているらしい。レベルアップ方式の世界ならばやりやすかったかもしれないが、現状そういったものは見えない。単純にそのスキルを使い、技量が上がることによってできることの幅が広がるのではないか、とハロルドは考えているが、特に研究をしているわけでもないので詳しいことはわかっていない。「まぁ、できることが増えるのは良いことだよな」というところで終わっている。
(レベル云々見えるようになったら、ゲームみたいに考えちゃって現実を見なくなる可能性もあるしな。見えない方が良い)
ただでさえファンタジーな世界を生きているのだ。自分がゲームの中の人物になったような感覚なんて覚えない方が平穏に生きられる。傷付けば痛いし、何かあれば死ぬ。家族も友人もいる。自分の性格を考えるとそんな可能性は低いような気はしたけれど、過信するのも良くないだろうとゆっくり息を吐いた。
「さ、アンネリース殿下に送るハンドクリームの調合するか」
「なんだ。準備ができたのか」
ルアは調合を見ているのが好きらしく、ひょっこりと姿を見せた。どちらかというと彼が役に立つのは魔道具作成の方だが、好きなのは調合のようだ。ルクスは逆で、彼が役に立つのは調合関連なのだが、本人はハロルドの魔道具作成を興味津々で見つめている。結果的にいつも二人一緒だ。
「今日はこの間育てた薬草使ってみるか」
当然のように買うとえげつない値段のする、非常に育てるのが難しい薬草が用意されている。いつも通りアンネリースが提供元である。アンネリースからもらった種から育てて、増やして、貯蔵している。そこからちょっと難しい回復薬を作ったり今王族の間でちょっぴりありがたがられているリラックスアイテムが作成されている。
スキルを発動させると、いつも通りに彼にしか見えない液晶画面のようなものが現れる。それに従って、作業を始めた。作業は細かく、地味そのものである。集中しながらも、ふと「気が楽」と思ったりする。
ハロルドはこういう細かい作業や、植物と触れ合っている方が性に合っている。心の底からさっさと引っ込んで暮らしたいと思っている。
(でも、この世界って一応魔王いるんだっけ)
そのうち勇者がなんとかするだろう、とその存在を頭の中から追い出した。
いつも読んで頂き、ありがとうございます!!
ハロルドは別に英雄になろうとか思ってないので「魔王をいつか倒すぞ!」とかは思ってない。「巻き込まれそうだから何とかならないかな」とは思ってる。




