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【書籍化】巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない【4巻制作・コミカライズ化決定!】  作者: 雪菊
3章

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33.苦悩する聖女


 光島(みつしま)万里絵(まりえ)は聖女である。

 というよりは、自らの意思に反して無理矢理聖女として召喚された一般女性である。


 当時27歳だった彼女は、付き合っていた恋人を職場の後輩に寝取られて、落ち込みながら車を運転していたところをフォルツァートという神に捕まったのだ。

 筋トレをしながら、「魔王を倒すために召喚を許可した」やら「思うようにやれば良い」やら言われて混乱したまま彼女は召喚され、目が覚めれば高校生時代の容姿でどこかの教会のような場所の地下にいた。それがフォルツァートの神殿の地下だったというのは後に知った。


 召喚された国はエーデルシュタイン王国という国だった。

 その国の聖女として認めてもらおうと王城に連れて行かれたが、そこでしばらく待たされた。

 待たされていた場所で、彼女は美しい金色の髪の青年と出会う。その緑の瞳が、万里絵を見つめていて「うっわ、イケメン」と思わず見つめ返してしまった。そのうち、その頰を薄紅色に染めた彼に面白くなって名前を聞くと消え入るような声で「ジョシュア」と答えた。可愛い人だと思った。


 結局万里絵は「国として召喚を許可した覚えは一切ない」という返事のみが返ってきて、謁見すら許されなかった。許可されていないという言葉に嫌な汗が背を伝った。

 教会の所属にならざるを得なかった彼女は、その腐りっぷりを見ることになる。そのうちヤケクソで教会の綺麗どころを侍らせてみたりもしたが、心満たされることはなかった。

 聖女だという割にはその仕事を任される訳でもなく、ただ自分の願いを叶えれば良いのだと身勝手な頼み事を万里絵に要求してくる。そのおかげで能力の使い方を知れたことは良かったが、奔放なふりをしていないと逆に身が危ないということも感じた。愛らしい顔立ちをしていた万里絵はいやらしい目で見られることも多く、美しい男にしか興味がないのだと、贅沢をすることが希望なのだと面倒な女になりきった。そうするしかなかった。

 とある少女に魅了の力を分けろと言われた時は唖然としてしまった。



(あの子、そういえばちゃんと使い道を考えろって言ってあげたのに男侍らせて操ったんだっけ?)



 国の使いから厳重注意を受けたけれど、生活の保障の代わりにやっているのだ。それが困るなら王家で保護してくれれば良いのに、と万里絵は頭の中だけで悪態をついた。

 魅了なんて魔法で人を操っても碌なことにならないに決まっているのに、どうして好きな男の子にそれを使用したいと思ったのか理解ができない。せいぜい、魅了で興味だけを引いて、あとは実力でこちらに好意を持たせるくらいでないと、後々信じられなくなるに決まっている。

 自分に傅く見目麗しいフォルツァートの神官には支配というレベルで魅了をかけている。やってはいけないことだとはわかっているけれど、自分が食い物にされるのは嫌に決まっている。やるしかないのだ、と割り切った。



(まぁ、私を籠絡するために近づいてきた連中だし)



 万里絵の理性をギリギリ保っているのはジョシュアだ。数多くの男を侍らせる万里絵を見て悲しそうにする彼。自分だけを愛してほしいと手を伸ばし続ける彼。

 そして、聖女を手に入れたからと少し調子に乗っている、愚かで可愛い彼。



(ジョシュはなぁ〜、王様になるには中身が繊細すぎるんだよな。あとは自分だけ愛してほしいっていう欲求が強い)



 そういうところも可愛いと思っている万里絵だけれど、彼女はジョシュアを王太子に、王位に押し上げるような野望は全くなかった。そんなことをすれば国が荒れるだろうと思っていた。



「あー・・・・・・ジョシュを乗せて国取りとかさせるのだけはやめてほしいなぁ」



 他がどうなろうが知ったことではないけれど、ジョシュアの破滅だけは避けたかった。

 ジョシュアを大切にしなかった婚約者なんかは心の底から没落とかしてほしいけれど、家族には愛されている青年だ。



「どうにかしなくっちゃ」



 王の孤独はどう考えてもジョシュアには耐えきれない。

 それを知っている彼女は頭を抱えるのだった。

聖女氏

1.やらかしている(書いてない部分も含めて)

2.それはそれとして、ある意味ではこの世界の被害者

3.第二王子ジョシュアのことは好き(ただ、こいつが王様に向いてるとはかけらも思っていない)

4.このままだと詰む(もう詰んでるかも!?)



いつも読んで頂き、ありがとうございます。

感想もありがとうございます!!

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