24.拾い物(人間)
「説明」
アーロンが不服そうに要求してきたそれに、アシェルも同意するように「そうだそうだー!」と拳を上に挙げた。
「なんかフォルテ様が今回すっっっごく怒ってて、軽めに神罰落とすらしい」
「神罰」
「軽めって言っても神様基準だからあんまり程度に関しては信頼しない方がいいですよ」
自分は関係ないのでにこやかに話すハロルドだけれど、その目は笑っていない。
下手をすれば、自分の祖父母や友人の家族がまとめて死んでいたのだ。少し助けてもらった程度では溜飲が下がらない。向こうにも事情はあるらしいけれど、それはハロルドには関係がないものだ。
「それって、ここに落ちる?」
「ここに落ちるならアイツ帰してないです。まぁ、国境警備はしばらく頑張ってもらわないといけないかもしれませんね」
歩きながら、震えるように声を絞り出したアシェルに返答する。女神が怒っている相手のことも一応把握はしているので、何でそんなことを聞かれたのだろうかと思いながら山を降りていく。
ハロルドの取り込まれたダンジョンは入り口が穴のようになっていたらしい。未発見のダンジョンであったけれど、出口はアーロンがなぜか発見できたらしい。アーロンの隣を「わふふん!」と胸を張って歩くフェンリルと関係があるのかもしれない。
順調に下山をしていると、フェンリルが走り出した。ここを掘れ、とでも言うように雪を掻いている。
ハロルドとアーロンが視線を合わせて、フェンリルの言う通りの場所を少し掘ると、濃紺の髪が現れた。いつから埋まっていたのだろうか、身体がすっかり冷たくなっている。
最悪の事態も踏まえて魔眼を発動させたハロルドは、状態の所に「毒状態」と見えて表情を変えた。右下のエクスクラメーションマークを選択すると、薬の材料や作り方があらわれたけれど、ここでは作れるようなものではなかった。代替品として、とあるハーブが状態を軽くすると書いてあるので口の中に粉の状態にしたそれを入れた。詰まらないようにネモフィラが水でゆっくり流し込んでいる。
「ローズ、頼める?」
「しょうがないわね」
遭難者を助けるためだと意識の落ちた少年の肩に座る。ローズの近くにいれば寒さは和らぐ。火の力を多く持っていることもその要因の一つかもしれない。
少し大きく変化したフェンリルの上に乗せて、さらに急いで進む。
村が近づいてくると、ハロルドたち一行はホッとした。少し先に心配そうな顔をした祖父母が見える。
「じいちゃん、ばあちゃん!!」
子どもらしい笑顔で駆けていく。
いつもは大人びた様子を見せるハロルドのそんな様子に、去っていったユリウスへのヘイトが増した。彼の事情なんて全く知らない、攻め込まれた側の立場だ。許せないという気持ちの方が大きい。
「兄貴!!」
「にーちゃん!!」
心配そうな顔のグレンとギャン泣きのミラを見て、アーロンもまた駆け出した。当然のようにフェンリルも一緒だ。
「ぎゃああああ、ワンちゃんが死体乗せてる!!」
「遭難者連れてるの忘れてたわ」
ミラがフェンリルの背中の少年を見て余計に泣き出した。まだ真っ青な顔ではあるけれど、それでも発見した時よりは赤みが戻っている。死地からは脱したのかもしれない。
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遭難少年くん、こっからしばらく出てこないです。




