98
最近の私は本当にダメだ。
わかっているのに…
それでも、ユイの顔を見ると嫉妬ばっかりしてしまう。
大切な友達なのに…
「ねぇ…リサリサ…ユイユイ…なんかしちゃったかな?」
心配そうにそう言われたことが頭によぎる。
この間、元気がなさそうって言われてから、
何とかこの気持ちを隠そうと頑張ったけど…
私には出来なかった。
だから、次第にユイと距離を取るようになってしまった。
その時にユイに言われた一言だ。
はぁ…本当に私ってダメだな…
そう思いながら、学校から歩いて帰る。
「おい!篠宮!」
「えっ?…あっ…萩原くん…」
「篠宮ってこっちの方だったんだな…帰り道…」
「う、うん。萩原くんも?」
「あー、俺は親が離婚したからな〜…それで、こっち側に最近引っ越してきたんだけどよ…んなことより、大丈夫かよ?」
「え?な、何が?」
「何がって…明らかに元気ねぇーだろ?」
「そ、そんなこと…」
「あんだよ!わかるっての…何か悩んでんだろ?俺でよかったら聞くけどよ…」
「…だ、大丈夫だよ」
「…はぁ〜…それが大丈夫な顔かよ…」
萩原くんはそう言って大きくため息をついた。
「…まぁ、俺に話せないなら仕方ねぇけどよ…篠宮は友達がいんだろ?友達に相談もできねぇのかよ?」
友達と言う言葉にユイの顔が思い浮かぶ…
「萩原くんってさ…好きな人とかいるの?」
「は、はぁっ!?す、すすす、好きな人とかい、いねぇーし!んなもん!いねぇーし!」
「…そっか」
「し、ししし…篠宮は…いんのかよ?」
「…うん」
「……………そ、そそ、そうなんだ…」
萩原くんはすごく落ち込んだ表情をしているけど…
「ご、ごめんね!…やっぱり、何でもないよ!」
「い、いや!俺こそワリーな!せっかく、話してくれようとしてくれたのによ!うしっ!」
そう言って萩原くんは自分の顔を両手でパシンッ!と叩いた
「気合い入れたわ!何でも聞くぜ!」
「…やっぱり」
「いや!ここで話とかなきゃよ!パーって吐き出してよ!気持ちスッキリした方がいいだろ!」
「…うん。そうだよね…」
「おう!」
「…私…ダメなんだよね。嫉妬しちゃうんだ〜…ただの片思いなんだってわかってるんだけど…でもさ…」
「わかる!」
「えっ?」
「その気持ち!めっちゃわかる!俺も…そ、その…ほ、ホントは好きな人がいるんだけどよ…何か…他に仲良くしてるやつ見てると…こうムシャクシャするっつーか…なんつーか…」
「そうなの!…でも、よくないことだよね」
「…そうだな。よくないことだとは…俺も思うよ。そのせいで…」
ブルブルっと震えた後に頭を振って元に戻った。
「お、俺のことはいいんだよ!…それで、篠宮はどうしたいんだよ?」
「え?わ、私?」
「そうだよ。片思いのままでいいのかよ?」
「…だって、好きになってもらえないって…わかってるから」
「んなこと、わかんねぇーじゃん!相手の気持ち…ちゃんと聞いたのかよ?」
「…友達だって」
「…そっか。告白はしたんだな…」
「告白は…してないけど…」
「じゃあ、まだわかんねぇんじゃねぇの?気持ち伝えてさ!友達から恋人になれるかもしれねぇじゃん!」
「でも…きっと、無理だよ」
「無理だって言ってたらよ〜…全部、無理だろ?」
「…そうだけど」
「まぁ、気持ち伝えろとは言えねぇけどさ…俺が自分の気持ち…伝えられてねぇんだからよ」
萩原くんは自分の手のひらを見つめてそう呟いた後に、
「俺は篠宮が笑ってる方が嬉しいからよ!なんかあったらいつでも言えよ?話だったら聞くからよ!」
「…うん。ありがとうね」
萩原くんは本当は優しい人なのに…
それを表情するのが苦手な人なんだなって、私は思った。




