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「よっ!ちゃんと来てくれたんだな!」
「ちゃんとくるよ」
「霧山くん…ありがとう」
「いえ、大丈夫ですよ」
トラと小鳥遊咲良が来たので話していると、
田中蓮も歩いてきた。
「ごめん、遅れちゃったかな?」
「大丈夫だって!俺らも今きたとこだからな!」
「それで、小鳥遊さんのお友達と会うことになってるんだよね?」
「う、うん。そうなんだけど…まだこないね…」
もう少しで待ち合わせの時間だ。
まさか遅れてくるわけじゃないよな?
そう思っているとちょうど待ち合わせ時間にやってきた。
女子3人が…
あれ?話が違う気がする…
小鳥遊咲良の友達の牧村千秋とその友達の森口七海の2人が来る予定だったと思うのだが、あと1人いるんだけど…
「咲良〜!久しぶり〜!!」
「あっ!千秋ちゃん!久しぶり!え、えっと…」
「うわぁ〜!本当に田中くん来てくれてんじゃん!」
「本当だね!めっちゃ会いたかったんだけど!」
「は、はは、そうだったんだね」
「とりあえず、入ろっか!それから自己紹介しようよ!」
「え、え?う、うん…」
小鳥遊咲良もわかっていない表情をしている。
きっと、予想外な出来事だったんだろう。
喫茶店に入り、女子はスイーツを、
男子はコーヒーを注文してから自己紹介することになった。
店員の爽やかなイケてるお兄さんが、
コーヒーとスイーツを持ってきてくれてから、
自己紹介がはじまった。
「とりあえず、自己紹介だったよね?私は咲良の友達で牧村千秋!千秋って呼んでね!」
「私は森口七海!千秋の友達なんだけど〜、咲良ちゃんは、初めましてだよね〜!よろしくね〜」
なるほど。元々、この2人が来る予定だった人達か…
「よ、よろしくね。私は千秋ちゃんの友達で小鳥遊咲良です。え、えっと〜…」
「え?アタシ?アタシは広橋麻里菜!」
広橋麻里菜…予定外の人物。
「俺は田中蓮。よろしく」
「俺は一之瀬泰雅!トラって呼んでくれよなっ!」
「僕は…」
「へ〜!トラくんって言うんだ〜!田中くんの事も蓮くんって呼んでもいいかな?」
「え?い、いいけど…」
「やった!じゃあ、アタシのことは麻里菜って呼んでね!」
「い、いや、広橋さん…だよね」
「え〜!広橋さんって!麻里菜って呼んでよ〜」
「じゃあ!俺はマリナちゃんって呼ぶぜ!」
「いいよ〜!ほらほら!トラくんも呼んでくれてるんだから蓮くんも呼んでよ〜」
「わ、わかったよ…麻里菜さん」
「それなら私のことは七海って呼んでね〜」
「わかったよ。七海さんに千秋さん…だね」
田中蓮と広橋麻里菜、森口七海は楽しそうに話している。
小鳥遊咲良が小さな声で牧村千秋に話しかけた。
「ち、千秋ちゃん!聞いてなかったんだけど!」
「咲良…ホントにごめん!麻里菜がさ〜…蓮くんに会うって聞いたら、ついてきちゃってさ〜…」
「そ、そうだったんだ…それなら先に教えてくれてもよかったのに…」
「そうだよね…ホントごめん!」
「ううん。もういいよ…いきなりだったからビックリしちゃっただけだし…」
小鳥遊咲良と牧村千秋は仲が良いようだ。
本当に突然の出来事で連絡することができなかったようで、申し訳なさそうにしていた。
「てかさ〜小鳥遊さんとこはいいよね〜!こんなイケメンがいるなんてさ〜…アタシらのとこは女子高だからさ〜!」
「そ、そうなんだね…」
「でも、紹介してくれてありがとね〜!」
「う、ううん」
「てか、蓮くんってこんなにイケメンなら彼女とかいるでしょ〜?」
「いや、いないけど…」
「え〜!うそ〜!」「え〜!ホントに〜!?」
広橋麻里菜と森口七海が同時に声を出した。
「でも、蓮くんって絶対モテるよね〜!」
「わかる〜!アタシ彼女に立候補しちゃおうかな〜?」
「は、はは…あ、ありがとう…」
みんな仲良く!がモットーの田中蓮がちょっと引いているような気がするけど…彼女達はそれに気づいていないようだ。
僕は楽しそうに話している会話を聞きながら、
静かにコーヒーを飲んでいた。
「なぁなぁ、リクも会話に入れよな…」
トラが小声で話しかけてきた。
「何で?」
「何でって…」
「僕は人数合わせで誘われただけだから…彼女達は田中くんと話したがってるのに…それを邪魔しちゃ悪いよ」
「いや…そうなのかもしんねーけど…咲良ちゃんがさ…リクに申し訳なさそうにしてんじゃん…」
小鳥遊咲良を見ると僕を申し訳なさそうに見ていた。
「小鳥遊さん…あまり気にされないでください。久しぶりにお友達にも会われたんですよね?それなら楽しまないともったいないですよ」
「う、うん…そうなんだけど…霧山くんは…楽しくないよね?」
「僕は美味しいコーヒーが飲めて…よかったですよ」
「そ、そうなの?」
「はい。ですから、僕のことは気なさらないでください」
「う、うん。ありがとう」
それでも申し訳なさそうな表情をしているが、
牧村千秋と話しはじめた。
「咲良ちゃんが食べてるの美味しそうだな〜!」
「うん!これ美味しいよ!トラくんも食べてみたらよかったのに!」
「ん〜!でもな〜…」
「せっかくならトラくんも食べてみたらいいのに〜!咲良と仲良くしてくれてんでしょ〜!私が奢っちゃおうか?」
「いやいや!そんな!千秋ちゃんに奢ってもらうのはワリーって!」
「でも、ほら!咲良とトラくんのおかげで蓮くんとも知り合えた訳だしさ〜!七海も麻里菜も喜んでんだよね〜!」
「まぁ、楽しそうに話してるもんな〜」
広橋麻里菜と森口七海は相変わらず、
田中蓮と話し続けている。
田中蓮は疲れないのだろうか?
「でも、千秋ちゃんは蓮と話さなくてもいいのか?」
「あー、私はイケメンはパスなの。顔がいいだけってつまらないって思わない?女癖悪そうなイメージあるし」
「蓮はそんなことねーと思うけどな〜」
「そうだね〜。でも、競争率高い人って面倒でしょ?」
「そういうもんかね〜?」
「千秋ちゃんって昔からそんな感じだよね?」
「咲良も相変わらず、ほわほわしてて可愛いよ?」
「な、なにそれっ!」
牧村千秋はコソコソと聞こえない声で、
小鳥遊咲良に話しかけた。
すると小鳥遊咲良の顔が赤くなっていくのがわかった。
「ちょ、ちょっと!千秋ちゃん!」
「ごめんごめん!でも、咲良わかりやすいんだもん」
「もうっ!…」
「え?え?何の話してるん?俺も混ぜてよ!」
「これは女の子だけの秘密なんだよ〜。だから、トラくんには教えられないかな〜?それと…君、楽しんでる?てか、名前なんだっけ?」
牧村千秋が話しかけてきた。
「こいつはリクってんだ!俺の友達でさ!話すの苦手だけど、良いやつだから仲良くしてくれよな!」
「ふ〜ん。リクくんね!よろしく!」
「…よろしくお願いします」
面倒だなぁと思ってしまうのは仕方ないよな。