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「ただいま〜」
「おっ!リク!おかえり!」
「あれ?兄ちゃん帰ってたんだ?」
「まぁな〜。母さんがご飯ぐらい帰ってこいって連絡があってさ。リクにも会いたかったし…そういや、バケタイ買っててくれたんだな。ありがとな」
「兄ちゃん、忙しいだろ?それぐらいなら僕にも出来ることだからね」
「優しい弟に育ってくれて兄ちゃんは嬉しいよ」
「それってさ、親が言う台詞じゃない?」
「そうか?」
そう言って笑っているこの人は僕の兄。
霧山空明。
この人が僕が言っていた本当のイケメンというやつだ。
中身も言うことなければ、外見もカッコいい。
イケメンな兄を子供の頃から見続けていると、
世のイケメンと言われている人達のことが、
本当に霞んで見えてしまうのが恐ろしい。
子供の頃は何でも出来てしまう兄と比べられてしまい、辛い思いをした時もあったが、兄を嫌うことは出来なかった。
僕にはとても優しくて頼れる兄なのだ。
それは今も変わらない。
「リクちゃんおかえり〜♪」
「母さん、ただいま」
「クウちゃんがね!お仕事ば〜っかりして!お家に帰ってこないから!ママがご飯はお家で食べなさい!って言ったらね〜!帰ってきてくれたのよ〜!」
「兄ちゃんも優しく育ってくれて、弟は嬉しいよ」
「おーい!それどっかで聞いた台詞だぞ〜?」
兄ちゃんは笑いながら僕にそう言った。
「クウちゃん、リクちゃん。もう少しでご飯できるから待っててね〜」
「母さん、いつもありがとうね」
「そう言えばさ、仕事って忙しいの?」
「まぁな〜。色々と重なっちゃったからさ。でも、もう少ししたら落ち着くと思うからね。そしたらリク!バケタイだぞ!」
「もちろん!」
「リクはもうやったのか?」
「一応ね。少しだけやってみたよ」
「おっ!マジか!どうだった?」
「相変わらず、バケタイだったね」
「相変わらず、バケタイだったか」
そう言って、僕は兄ちゃんと笑い合った。
「なぁ、リク。将来のこと考えてるか?」
「う〜ん。まだよくわかんないかな…」
「そっか…。俺としては兄ちゃんの会社で働いてくれたら、めっちゃ助かるんだけどな〜」
「それってさ…コネ入社ってやつじゃないの?」
「家族経営だろ?まぁ、リクがやりたいことあるなら、応援するけどさ。やりたいことが見つからなかったら、俺の所に来いよ。リクと一緒に働けたらさ、俺は嬉しいからさ」
「そうだね…」
「まぁ、そういう道だってあるんだな〜ぐらいに考えてくれたらいいよ」
「わかった。ありがとう」
「俺が誘ってるだけだからさ。聞いてくれてありがとな」
「ご飯できたよ〜!」
「わかったよ、母さん!よし!リク、ご飯食べようぜ!」
「うん!」
僕は兄ちゃんと母さんと一緒にご飯を食べた。
やっぱり、母さんのご飯は美味しいな。
「ねぇ、クウちゃん。いつになったら彼女さんを連れてきてくれるの〜?」
「母さん。俺は今、仕事が忙しいんだよ。だから、彼女なんていないの!」
「えー!クウちゃんぐらいカッコよかったら、彼女の1人や2人ぐらい簡単じゃないの〜!」
それを実の母親が言いますか?
「それに、仕事が楽しいからさ。本当に俺が好きになった人がいたら連れてくるから…待っててよ」
「そうね〜。でも、息子の彼女に会いたいんだもん!可愛い女の子がお義母さんってママのこと呼んでくれて、クウちゃんの為に一緒にお弁当を作るの〜。絶対、楽しいと思うのにな〜」
多分、それは彼女さんが…
とても気を遣ってしまって疲れてしまうのでは?
「リクちゃんは?彼女できたの〜?」
「母さん…兄ちゃんじゃないんだから…僕に彼女が出来るわけないでしょ?」
「何言ってるのよ!リクちゃんは全然、わかってない!クウちゃんがカッコいい系ならリクちゃんはかわいい系なのよ!かわいい系男子がモテないわけないじゃない!」
だから、それを実の母親が言いますか?
「母さん…僕にはその…かわいい系男子ってのがよくわかんないんだけど…女の子と話すのも苦手だからさ」
「そんなの!優しくしてあげたらいいのよ!リクちゃんなら行けるわ!絶対に行けるのよ〜!」
「そんなの…無理だよ」
「なせばなる!なにごとも〜!!」
「ごちそうさま!」
ああなった母さんはもう僕には対処しきれない…
だから、僕はお皿を片付けてから部屋へと行った。
コンコンコン
「リク〜入るぞ〜」
そう言って兄ちゃんが入ってきた。
「母さん…暴走してたな」
「たまにあるんだよね。きっと、兄ちゃんが帰ってきてくれて嬉しかったんじゃないかな?」
「そうなのか?」
「多分ね。兄ちゃん、仕事は?」
「ああ、今から戻るよ。でも、最近のリクの話を聞けてなかったな〜って思ってさ。学校はどうよ?楽しい?」
「まぁ…ボチボチかな?」
「そっか。別にリクがもう行きたくなくなったら、辞めてもいいからな」
「それ、いつも言ってくれるよね?」
「ん?そうだったか?」
「兄ちゃん。ありがとう。でも、トラもタカもいるからね。それなりに楽しくやってるよ」
「そっかそっか。それならよかった。今度、トラくんとタカくんも一緒にバケタイやろうぜって言っててよ」
「トラもタカも喜ぶと思うよ」
「俺も楽しみだな〜!じゃあ、俺は仕事に戻るかな〜」
「うん。気をつけてね」
「ありがとな。リクも無理しないで、ボチボチやれよ〜」
「わかってるよ。ありがとう」
「おう!じゃあ、またな〜」
そう言って、兄ちゃんは仕事に戻って行った。
さて!バケタイをやりましょうかね!
ゲームをしようとすると、ヴーと携帯が揺れた。
携帯電話を見るとメッセージが来ていた。
今日は話が出来て、嬉しかったです。
芽衣とも都合が合えばでいいので、
遊んであげてください。
その時に、お礼もさせてもらいますね。
舞さんからのメッセージだった。
僕も返事を返す。
僕が出来ることをしただけですので、
お気になさらないでください。
メイちゃんとは都合が合えば、
一緒に遊ばせていただきたいと思います。
お仕事が忙しい中、
ご連絡をいただき、ありがとうございます。
ゆっくりと休まれてください。
送信っと…
さてさて!バケタイをやりますか!
双剣のレベルは2になったのに、
無手のレベルは上がらなかった。




