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休みの日1日目。
父さんは昨夜遅くに帰ってきたようで、
僕が起きた時には母さんと出かけていた。
にーに!おねがい!
えほんかりてきてほしあの、
としょかん!
メイちゃんからメッセージが届いていた。
舞さんからその後に説明のメッセージがあり、
僕は図書館でメイちゃんが読みたい絵本を借りに行った。
久しぶりに図書館にきたなぁと考えていると、
トラと小鳥遊咲良がいるところを見かけた。
「あれ?リクじゃん!なにしてるん?」
「僕は本を借りてきて欲しいって頼まれたんだ。トラは勉強を教えてもらってるの?」
「そうなんよ!咲良ちゃんに教えてもらってさ!この間のテストで赤点がなかったんよ!わざわざ休みの日まで教えてくれてありがとな!」
「そんな!トラくんに教えると私も復習になって、勉強になるから…そのおかげでちゃんと理解できてるか再確認もできるから成績も上がったんだよ!こちらこそありがとうだよ!」
「いや〜!教えてもらってるこっちからしたら、感謝しかねぇんだけどな!そう言ってくれて、ありがとな!」
「僕が言うのはおかしな話ですが…小鳥遊さん。トラに勉強を教えてくださり、ありがとうございます」
「そんな!霧山くんまで!私は大したことしてないから!」
小鳥遊咲良は手をブンブンと振って、
恥ずかしそうにしている。
「てかさ!この間、咲良ちゃんが言ってた話なんだけどさ!リクを誘うのってどうかな?あと1人男子が足らんかったっしょ?」
「そうだね!霧山くんがよかったらなんだけど…」
「何の話でしょうか?」
小鳥遊咲良の話を聞くとこういう話だった。
美里女子高という女子だけの高校が近くにあるのだが、
小鳥遊咲良の中学時代の友達が通っているそうで、
美里女子高で田中蓮のことが話題になっていて、
紹介してほしいと頼まれたらしい。
「トラくんが田中くんと仲良いでしょ?だから、私と友達2人がくる予定で田中くんとトラくんと5人でご飯食べをしようって話になってたんだけど…そしたら、もう1人男子を連れてきてよって頼まれちゃって…どうしようって悩んでたんだよね」
「そうらしいんよね!そこでリクだよ!ほら!タカは彼女がいるからダメじゃん?でも、リクは彼女がいない!だから、大丈夫!OK?」
「ごめん。全然、意味わかんないや」
「やっぱり急な話だから、ビックリしちゃうよね…」
「そうですね…。僕以外に久住くんや後藤くんも仲良くしているのではないですか?」
「うん…瑞穂は仲良くしてるけど…私はあんまり話したことがないからさ…」
「そうな〜。慎吾はいいかも知れんけど、陽平はヤンキー感が強すぎるだろ?それに咲良ちゃんが話しやすいのはリクって言ってたからさ〜!いいじゃん!行こうぜ!」
「…他にいないのでしょうか?」
「いないからリクに頼んでんじゃんかよ〜!」
「あ、あの!霧山くんが迷惑だったら、本当に大丈夫だから!私が頼まれたのを断れなかっただけだから…」
小鳥遊咲良は少しだけションボリした顔をしている。
心の中でため息をついた。
正直、かなり面倒だと思う。
友達が増えて少しは良くなってきている自覚はあるが、
いきなり初対面の人間が2人もいるなんて面倒だ。
そもそも僕は人と関わるのが苦手なんだ…
でも、トラが両手を合わせてお願いポーズをし続けている。小鳥遊咲良も申し訳なさそうに僕を見ている。
なんだかんだトラに良くしてくれている、
小鳥遊咲良のことが嫌いではない。
仕方ないか…
「…わかりました。僕でよろしければ参加しますよ」
「え?本当にいいの?」
「マジかよ!やったぜ!あんがとな!」
トラはそう言って、勢いよく立ち上がった。
「トラ…ここは図書館だよ?もう少し静かにしないと…」
僕がそう言うと、周りの人にすんませんと言いながら、椅子に座り直し、よかったなと小鳥遊咲良に声をかけた。
「うん!霧山くん!ありがとうね」
「いえ…僕は人と関わるのが苦手ですので、上手く会話に入ることが出来ないかも知れませんが…小鳥遊さんのお友達は田中くんに会いたいと思っているのですよね?」
「う、うん。そうだとは思うけど…」
「それなら、会話に入らなくてもあまり問題はないのかもしれませんね」
「リクは普段通りにしてたらいいんじゃね?俺もリクも恋愛対象の圏外なわけじゃん?あんまり、気にせず普通に楽しめたらそれでいいじゃんって俺は思ってるんよね!」
「そうだね。田中くんは知ってるの?」
「おう!蓮は大丈夫って言ってくれたから、リクが来ることは後で伝えとくわ!」
「そっか。わかったよ。勉強の邪魔してごめんね」
「んなことねーって!ありがとな!」
「霧山くん、ありがとうね。じゃあ、またね」
「はい。では、失礼しますね」
「じゃあ、リク!日程決まったら連絡するわ〜!またな〜」
「うん。じゃあ、また」
トラと小鳥遊咲良に軽く頭を下げて、
メイちゃんが読みたい絵本を探す。
3冊全て借りる事ができたので、借りてから、
朝日奈家に向かって歩き出した。