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さて、これでゴミ捨ても終わったから…

帰りますかね…

帰ったらバケタイだ!

まだ学校にいるというのに放課後の誰もいない時間だからか、少しだけワクワクすることができた。

早く帰ろ〜っと!

そう思いながら、鞄を取りに教室に戻ると、

1人の生徒が教室の中にいた。


「あっ!霧山くん!遅かったね!」


篠宮里沙。何でいるんだろう?

僕は誰にも話してないよ?

ちゃんと内緒にしていたよ?


「日直でゴミ捨てまでしてたんでしょ?私も手伝った方がよかったかな?教室に戻ったら、もう綺麗になってて…間に合わなくて、ごめんね」


この人は何を話しているんだろうか?

何で謝ってるの?

今日の日直は僕と伊藤さんだよ?


「霧山くん、日直だから遅くなるかな〜って思って…待ってたんだけど」


何で待ってるの?

待たずに帰ってよ。

帰ってくれてた方が僕は嬉しかったな…


「それで霧山くん…その…連絡先を…教えてくれない?」

「…あ、あの…どうして…ですか?」


あれか!あれなのか!

隠キャの連絡先、晒してみたww

というスレッドでも立てるのか?

僕は晒し者にされてしまうのか?


「えっ?だって…ゲーム…教えてくれるんでしょ?」

「…それは…誰にも話しませんので…」

「えっ?どういうこと?」

「…その…失礼します」


僕は鞄を取って、頭を軽く下げてから、

教室を出た。危なかった…

もう少しで僕の連絡先が世界に晒されるところだった。

気をつけないといけないな…

そう気を引き締めてから学校から帰った。


帰り道の公園を通り過ぎようとしたら、

にーにだっ!という大きな声が聞こえた。

公園の方を見ると、メイちゃんが手を振っていた。

近くには大人の女性が立っている。

ちゃんと約束を守ってるんだな…

メイちゃんと大人の女性が歩いて近づいてきた。


「ねぇ!にーに!だっこ!だっこして!」

「はいはい!よいしょっ!」


僕はメイちゃんを抱っこしてあげた。


「メイね!ちゃんとママとおでかけしてるのよ!ひとりじゃないの!」

「うん。お兄ちゃんとの約束を守って偉いね」

「えへへ〜」


メイちゃんと話していると大人の女性に話しかけられた。


「君が芽衣の話してた、にーになのかな?」

「…あっ…そ、そうだと…思います…」

「芽衣?ママね、にーにと少しだけお話しがしたいの?いいかな?」

「うん!いいよ!」

「ありがとう」

「メイね!ブランコしてるからみててね!」

「うん。わかったよ」


メイちゃんをおろしてあげると、

ブランコまで走っていき、乗り始めた。


「初めまして。芽衣の母親の舞です」

「…あっ…は、初めまして…」

「お名前を聞いてもいいかしら?」

「…は、はい…璃空です。瑠璃の璃に空と書いて、リクです」

「璃空くんって言うのね。芽衣の手当をしてくれて、ありがとうね」

「…いえ…それは…見かけてしまいましたので…」


メイちゃんは楽しそうにブランコで揺れている。


「芽衣はね。あまり自分の事を話さない子だったのよ。人見知りもよくしていて…だから、1人で怪我をして帰ってきたって聞いて…本当にビックリしたわ。でも、璃空くんには懐いてるみたいね。よっぽど、優しくしてくれたのかしら?」

「…ど、どうでしょうか?」

「お手数も読ませてもらったわ」


あー、あの長々と書いてしまった手紙のことか…

やっぱり、気持ち悪いって思われたんだろうか…


「芽衣の気持ちを書いていてくれて…本当に芽衣のことを考えてくれているんだなって嬉しく思ったわ」

「…そ、それなら…その…よかったです」

「でもね、学生さんでしょ?お金もあまり持っていないのに、わざわざお金まで入れなくてもよかったんじゃないかしら?」

「…い、いえ…もし…僕の手当が良くなくて…怪我が悪化してしまっていたらと…思うと…治療費の足しになればと…その…す、少しだけでしたけど…」

「学生さんには大金に感じたわよ?」

「…は、はい。財布に入っていたお金を…全部入れましたので…」

「やっぱり…」


そう言って舞さんはため息をついた。


「璃空くん。気持ちはありがたいけど、やっぱりお金は受け取れないわ」

「…い、いえ!…その、兄の会社の仕事を手伝った時に貰ったバイト代なので…その…受け取ってください…」

「でもね…」

「…あ、あの…ち、治療費に使われないなら…その…メイちゃんが喜ぶものを買ってあげてください…」

「どうして、そこまで芽衣の為にしてくれるのかしら?」

「…ど、どうしてでしょうか?…そ、その…メイちゃんがした事は心配をかけること…だったとは…その、思うんですけど…で、でも…家族を思った気持ちを…大事な人の為に行動できたことを…褒めてあげたかったのかも…しれません」

「そう…」

「す、すみません!…み、見ず知らずの人間が…その…家族の事に…く、口を出すような真似をしてしまい…そ、その…」

「璃空くん?連絡先を教えてくれないかしら?」

「…えっ!…ど、どうして…でしょうか?」

「芽衣がね。お家で璃空くんの話ばっかりするのよ。にーにがね!ってまた璃空くんに会いたいって言っててね…だから、璃空くんが迷惑じゃなければ…たまに芽衣に会ってあげてくれないかしら?」

「そ、それは…その…大丈夫…ですけど…」

「それなら連絡先を教えてくれる?芽衣も璃空くんに連絡できるって知ったら喜ぶと思うのよね。私も璃空くんにお礼をしたいって思うから…ダメかな?」

「だ、大丈夫…です」


そう言って、舞さんと連絡先を交換した。


「璃空くん。ごめんなさい。本当はお礼を言うのが先だったわよね。本当にありがとう。芽衣の手当をしてくれたこと…芽衣のことを考えてくれたこと…本当に嬉しかったわ。本当にありがとうね」

「…い、いえ…ぼ、僕ができること…でしたので」

「本当にお金もいただいてよかったのかしら?」

「は、はい!…そ、それは…メイちゃんの為に…その…使ってください」

「ありがとう。芽衣の為に使わせてもらうわね」

「は、はい…そうしてください」


メイちゃんはブランコからおりて、

僕たちの方へと走ってきた。


「にーに!みてた?メイね!ブランコのってたよ!」

「うん。ちゃんと見てたよ。上手に乗れてたね」

「うん!」

「芽衣?ママね。にーにの連絡先を聞いちゃった!にーにがね、また今度、芽衣に会ってくれるって!」

「えっ!ほんと!にーに!またあえるの?」

「うん。メイちゃんのお母さんと連絡先を交換したから、メイちゃんからもお母さんの携帯からお兄ちゃんに連絡することもできるよ」

「そうなの?ママ!にーにとおはなしできるの?」

「そうね。ママがお家にいる時だけだけど…にーにとお話しできるかもね」

「やったー!メイね!うれしい!」

「うん。メイちゃんが喜んでくれて、僕も嬉しいよ」

「璃空くんは芽衣と話す時だけ、上手にお話しできるのね」

「えっ!…あ、あの…そ、それは…」

「ふふふ。冗談よ。璃空くんのそういうところも可愛いと思うわよ。これからもよろしくね」

「は、はい…よろしく…お願いします…」

「それじゃあ、今日はもう帰ろっか」

「えー!メイね!まだにーにとあそびたい!」

「にーにはね、お家に帰らないとにーにのママが心配しちゃうでしょ?だから、また今度ゆっくり遊んでもらおうね」

「…うん。わかった」

「それじゃあ、璃空くん。本当にありがとうね。また今度ゆっくり芽衣と遊んであげてくれるかしら?」

「は、はい…大丈夫です」

「ありがとう。ほら、にーににバイバイは?」

「にーに!バイバイ!」

「うん。メイちゃん、またね。バイバイ」


舞さんは軽く頭を下げてから、

メイちゃんを抱っこして帰って行った。

僕も軽く頭を下げ返してから、手を振った。

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