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「おっ!ちゃんと来たじゃねぇか!」
「優吾!そりゃ嬉しいからに決まってんじゃん!」
「そりゃそうだな!」
はははと笑いながら、いつもの時間、
いつもの場所で萩原優吾と竹下孝二は待っていた。
「んで、なんか話があるって言ってたよな?」
「…そうですね。何度も伝えていますがLGBTという言葉の意味は理解できましたか?」
「は?何言ってんのかわかんねぇーんだけどっ!」
そう言って萩原優吾は僕のお腹を殴った。
「…そうですか。では、別の話にしましょうか…。僕の自宅の窓を割ったのは貴方達ですね?」
「おう!そうだよ!な?孝二!」
「ああ!いつもは身体を痛みつけて喜ばせてあげてるからさ〜、たまには精神的にも痛みつけてやろうかと思ってサプライズプレゼントだよ!喜んでくれたか?」
「…では、貴方達がやったと言うことで間違いはないのですね?」
「だから、そう言ってんだろっ!」
竹下孝二は僕のお腹を蹴った。
「優吾!こいつ頭おかしくなったんじゃねぇの?」
「俺らが喜ばせすぎちゃった?」
「ははは!そうかもな!」
そう言って萩原優吾と竹下孝二が僕を殴る。
もう…いいかなぁ
「なんかこいつ…今日は倒れねぇんだけど!」
「いいじゃん!人間サンドバッグだわ!」
萩原優吾が右手を大きく振りかぶって殴ろうとしたので、僕は上半身を軽く下げて、潜り込み、萩原優吾の左脇腹に右手の拳を2回捻り込んだ。
「ぐはっ!」
そのまま首に両手をかけ、上半身を下に傾けながら鳩尾に右膝を突き刺した。萩原優吾はくの字に曲がったままだったので、鳩尾に下からえぐるように右の拳を振り抜いた。
萩原優吾は正座したまま土下座をしているような状態に座り込み、動かなくなった。
「て、テメー!ふざけんじゃねぇぞっ!」
竹下孝二が大きく右手を振りかぶって殴ろうとしたので、左足を前に突き出し、お腹を蹴った後、地面についた左足で勢いよく近づいて右の拳をお腹に捻り込む。そのまま首に両手をかけて、上半身を下に傾けながら鳩尾に右膝を突き刺した。
竹下孝二も萩原優吾と同じ状態になった。
ダンゴムシが二つもできたなぁ…
僕は萩原優吾に近づいて座り、
髪の毛を掴み顔を上げさせる。
「これで少しは話ができますかね?」
萩原優吾は痛みで顔が歪んでいるようだ。
「聞こえますか?聞こえるのなら返事をしてください」
「き、霧山のくせに…ちょーしのんなよ」
「そうですか…今からまた起き上がって僕を殴りますか?その方がまだ痛みつけられるので、ありがたいのですが…」
僕がそう言うとギョッとした顔をした。
「どうされますか?まだやりますか?」
僕がそう言うと首を横に振ろうとしたが、
髪の毛を掴まれているので動かすことができなかった。
「そういう意思表示はいりません。ちゃんと言葉で答えてください。わかりますか?」
「…は、はひ」
萩原優吾は僕の顔を見て怖がっているようだ。
今まで散々なことをしてきたくせに…
そう思ったけど、それは口には出さなかった。
「では、お話をしましょうか。貴方達は暴行、脅迫、強盗、器物損壊という罪を犯しました。それは理解できていますか?」
萩原優吾は何もわかっていないようだ。
「そうですか…。それすら理解されていないのですね。貴方達がいつも同じ時間、同じ場所で犯行を行うのであそこにカメラを設置して証拠を撮らせていただきました。icレコーダーで音声も録音してあります。貴方達の犯行はもう言い逃れすることはできません。僕から奪った金銭につきましても証拠がございますので、返していただきたいと思っています。その際に強盗という罪がよろしいですか?僕から借りた…という形にしても構いませんが?そうなりますと強盗という罪はなくなりますね」
本当に何も理解していないのだろう…
僕の顔を怖がって見ているだけで、
何にも理解していないことが目に見えてわかった。
「…そうですか。理解できないようですので…自宅に帰られたら親御さんとしっかり話されてください。正式な文書を作成してお送りしていますので…よく読まれてくださいね。ちゃんと証拠も一緒にお送りしていますから…親御さんとご相談ください…。貴方達が約束を守って、僕の家族に被害を加えなければ…もう少し、穏便に済ませるつもりだったんですけどね…」
そう伝えてから、カメラを回収して家に帰った。
さて、彼らの親御さんはどのような反応を示すかな?