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僕は職員室にきていた。


「高橋先生。盗難騒ぎについてお聞きしたいのですが…」

「おいおい!霧山!いきなりだな!」

「先生も朝日奈さんのことはご存知ですね?」

「ああ…聞いたよ。だから、HRでも言ったろ?朝日奈は犯人じゃないって第三者の可能性があるから勝手に犯人探しすんな〜ってよ」

「それにどれだけの効果があると思われますか?」

「…痛いとこついてくんじゃねぇか」

「ですから、先生の知ってることをお話いただきたいと思いまして…」

「先生は何も話せないぞ…。HRでも言った通りに犯人探しなんてすんじゃねぇよ」

「知らないのではなく、話せない…なんですね…それだけで十分です。ありがとうございます」


僕が失礼しますと頭を下げると、

おい!霧山と声をかけられた。


「お前…何でこんなに調べてんだ?いつもの霧山なら関わんないようにしてんだろ?」

「そうですね…先生の言う通りだと思います」

「なんか…あったんか?」

「いえ…こんな学校生活に疲れただけですよ」


僕はそう言って、職員室から出た。

教室に戻るとトラとタカが話しかけてきた。


「高橋先生は何て言ってたん?」

「何も話せないって…HRで言った通りだって言われたかな?」

「そっか〜…じゃあ、先生も頼りにならんか〜…」

「…何も話せないって言ったんだな」

「うん。それだけで十分な収穫でしょ?」

「…そうだな」

「え?え?どゆことなん?」

「…それならリクが言ってた可能性もあるかもな」

「うん。僕もそう思うかな?」

「おいおい!俺にもわかるように説明しろよ!何で2人だけわかった感じだしてんだよ!」

「…はぁ…トラは…いつも通りにしてろよ」

「はぁ!?何だよそれっ!?」

「トラの良いところはそういうところだからね」

「それってさ…褒めてんの?貶してんの?」

「僕は褒めてるつもりなんだけど…」

「…リクはトラにはトラらしくいて欲しいって言ってんだよ。俺もそう思ってる。それがトラの良さだろ?」

「そうなんかな?」

「そうだよ」「…そうだろ」


僕とタカが同時にそう言うと、

そっか!とトラは元気に笑った。


放課後になりいつもの用事が終わり、

帰ろうと思ったら釘宮先生に声をかけられた。


「霧山くんじゃないか。ちょうどいいところに居てくれた。少し手伝ってくれないかい?」


そう言われて、保健室へと一緒に行った。


「たまたま部活で怪我をした子が3人いてね…サッカー部で転んで怪我した子がいるんだが、その子の手当を霧山くんがしてくれないかい?」

「わかりました」


僕はサッカー部の男子に話しかける。


「怪我した場所はどこでしょうか?」

「こ、ここです…」


大きく転んでしまったのだろう、

膝から血が出ていた。

砂が少し入り込んでる可能性もあるな…


「痛むかもしれませんが、一度傷口を綺麗に洗いましょうか」

「わ、わかりました…」


彼は1年生だったらしく、僕の指示を的確に聞いてくれた。


「霧山くん、そっちはどうだい?」

「出血は見られますが、そこまで大きな傷ではなさそうですね。ガーゼはどこにありますか?」

「そこにあるよ。綺麗に洗ったら止血してもらえるかい?」

「わかりました」


僕はガーゼを用意して、彼の傷口を見る。


「痛むでしょうが、もう少し綺麗に洗いましょうか」

「は、はい…」

「それぐらいで…はい、大丈夫です。よく頑張りましたね。このガーゼを真上から…そうです。それで圧迫して止血をしてください」

「わ、わかりました…ありがとうございます」

「いえ…釘宮先生、そちらはどうですか?」

「この子は捻挫してしまったみたいでね。今、冷やしているんだが、代わってもらえるかい?」

「わかりました」


釘宮先生と代わって患部を冷やしてあげる。


「あまり動かれないでください。捻挫をした際は安静にするのが大切ですので…僕が冷やしますので…そうです。ゆっくりと安静にされてください」


捻挫した彼の患部を冷やしながら、

サッカー部の止血をしてる男子に声をかけた。


「止血はどうでしょうか?」

「は、はい…多分…止まったと思います…」

「そうですか…もう少し抑えててください。釘宮先生、そちらはどうですか?」

「こっちの処置は終わったよ。骨折していただろうが、保護者の方が来てくれたからね。病院に連れて行ってもらったよ」

「そうですか…」

「君は止血できたのかな?…どれどれ?…そうだな。大丈夫そうだな。もし酷く化膿するようなら病院に行くべきだろう…とりあえずは、絆創膏を貼っておこうか」

「わ、わかりました…」

「よし…これでいいだろう。もう少しで君の保護者も迎えにくるだろう」


少し待つと2人の保護者が迎えにきて、

病院に連れて行くと帰っていった。


「霧山くん、ありがとうね。助かったよ」

「よかったんですか?生徒に手伝わせて…顧問の先生とかいらっしゃったんじゃないですか?」

「霧山くんに比べたら…使い物にならない教師なんていらないよ。全く…私が帰ってたら、どうするつもりだったのか…」

「何かあっても…僕には責任が取れませんよ?先生の責任になってしまう可能性が高いと思いますが…大丈夫ですか?」

「そんなもの全く問題ないよ。使い物にならない教師の何千倍も役に立つ霧山くんが居てくれたからね。それならいけるかと思って処置してあげたんだからね。何かあったとしたら、処置後の対処が間違っていたとしか思えない。その時は徹底的に私が言い返してやるから安心するんだな」

「言い返して…問題にならないように気をつけてくださいね。釘宮先生には僕が卒業するまではいてもらいたいと思いますので…」

「そればっかりは私は何とも言えないがね。まぁ、霧山くんにそう思ってもらえているのは嬉しいかな…。それに霧山くんに話もあったんだよ…高橋先生から聞いたよ?盗難騒ぎについて調べているんだって?」

「聞かれたんですね…」

「珍しいじゃないか。自分から人に関わろうとするなんて…何かあったのかい?」

「高橋先生にも聞かれましたよ。ちゃんとお答えしたんですけどね…そうですね…こんな学校生活に疲れただけですよ」

「そうか。まぁ、疲れるのも仕方はないな」


釘宮先生は椅子に座りながら、

机に肘を置いて話している。


「高橋先生には聞いたんだろう?私には聞かないのかい?」

「話してくれないんですよね?」

「それはどうだろうね?私だって人間だ…うっかり話してしまうこともあるかもしれないよ?」

「釘宮先生に限ってそんなことはないと思いますよ。高橋先生じゃないんですから」

「ははは…相変わらず、霧山くんは面白いね」

「そうですか?」

「面白いと私は思うよ。きっと私と話が合う生徒は君ぐらいだろう…それと…いじめられているのかい?」


釘宮先生は優しい表情で僕を見ている。


「何故、そう思われるのですか?」

「そうだな…いつもより制服が汚れている。まるで蹴られた後かのように…違うかな?」

「できる限り綺麗にしてるつもりなんですけどね…」

「私はこれでも教師の端くれだ。侮ってもらっては困るな」

「…そうですよね。ですが、大丈夫ですよ」

「君はすぐに抱え込んでしまうだろう…前にも言ったはずだが?」

「導火線に火がついた爆弾ですか?」

「それだよ…爆発しないことを願うがね」

「…ありがとうございます。ですが、本当に大丈夫ですよ。自分のことは自分でケジメはつけますので…」

「そうかい?なら私は何も知らなかったことにしよう…そのかわり、君ではどうしようもできない時は私に話すこと…。約束できるかな?」

「わかりました」

「それならいいだろう。また、いつでも来てくれたまえ」

「手伝いにですか?」

「いや、私の話相手にだよ」

「それなら…また来ます…」

「待っているよ。さぁ、早く帰りなさい。手伝ってくれてありがとうね」

「いえ…では、失礼します」


僕は微笑んでいる釘宮先生に頭を下げ、家に帰った。

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