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「リク〜!日誌書き終わったん?」

「もう少しかな?先に帰ってていいよ」

「そうなん?」

「うん。日誌を出してから、ゴミ出しをしとかないといけないからね」

「そう言えば、ゴミが溜まってるからな」

「そうだね」

「俺らがゴミ出ししとこうか?」

「大丈夫だよ。トラとタカが日直の時にゴミが溜まってたら、ちゃんとゴミ出ししといてよ」

「そっか〜…じゃあ、俺らは帰るな!」

「本当に大丈夫か?」

「大丈夫だって。タカ、ありがとうね」

「わかった。じゃあ、また明日」

「リク〜!また明日な〜!」

「うん。また明日」


トラとタカは先に帰って行った。

僕は日誌を書き終わり、職員室へと持っていく。


コンコンコン


どうぞ〜と声が聞こえたので、

失礼しますと言ってから中に入った。

高橋先生の所へ歩いて行き、日誌を渡した。


「おい!霧山〜。これ1人で書いたろ?字を見りゃわかんだぞ〜」

「はい。1人で書きました」

「日直は男女1名って決まってんだからよ〜、役割分担でもして一緒にできないかね〜」

「そうですね。出来ませんね」

「はぁ…永森と言い、霧山と言い…お前らは本当に日直を1人でやり通すよな〜。なに?女の子嫌いなの?」

「別にそういうわけじゃありませんよ。ただ苦手なだけです」

「苦手って…普通さ!高校生の男の子ってのはさ!女の子にモテたいって考えてるもんじゃないの?」

「そう考えている人もいるかも知れませんが、僕は考えたことはありません」

「いや、それマジで?先生が高校生の時はモテたいってことしか考えたことなかったぞ?」

「それは高橋先生らしいですね」

「え?どういう意味?ごめん、ホントにわかんないんだけどさ。どういう意味?」

「そのままの意味ですよ」


僕が思ったことを話せる数少ない先生の1人だ。

それが担任の高橋先生。

本当に教師なのか?と考えてしまうほどに、

フラットに生徒と向き合ってくれる先生だ。


「霧山も永森もよ〜、1人で完璧にやり通してくれるからそこには何も言えないんだけどよ。もう少し、女の子と話してみたり、協調性を持とうとは思えないわけ?」

「そうですね。永森くんと一緒にこの日直の男女1名というシステムをどうにかできないか話し合うぐらい難しいですね。高橋先生の力でどうにかなりませんか?」

「おいおい!先生は学校のルールを変えることが出来るほど偉いわけじゃないぞ」

「わかってます。ですが、可愛い生徒の為にもどうか検討していただけませんか?」

「可愛い生徒って言ったって、霧山と永森の2人だろ?そのシステムを先生が変えちゃうとさ。日直を通して、女の子と仲良くなれた男子諸君からブーイングの嵐じゃねぇか」

「そうだと思います。高橋先生ならブーイングの嵐を乗り切ることができると思うんです」

「先生なら乗り切れるけどな。これは学校のルールなんだよ。男女平等じゃないけどさ。社会に出たら異性とも関わらないといけないだろ?その為の予行演習みたいなもんでさ…」

「あっ!先生!あそこに釘宮先生が!」

「えっ?どこどこ!」


僕が指を差しながらそう言うと、

高橋先生はキョロキョロと釘宮先生を探しはじめた。

他の先生方も生徒達もみんな、高橋先生が釘宮先生のことが好きなことを知っている。

知らないのは釘宮先生本人だけだろう。


「おい…霧山…今、先生のこと弄んだろ?」

「いえ、勘違いでした」

「いや、絶対にわざとだろ?」

「いえ、人違いでした」

「お前な…釘宮先生を人違いでしただと?あんなに綺麗で優しくて可憐な先生を見間違えることがあってたまるかーっ!どこを探したってな!釘宮先生みたいに綺麗な先生なんていないんだよ!わかる?霧山〜!わかる?」

「先生…ここ職員室です。他にも先生方がいらっしゃいますので…もう少し小さな声で…」


他の先生方は、またかって顔をしながら、

気にはしていないようだ。

女性職員だけ少し冷たい目で見ているが…


高橋先生は生徒達からの人気があり、

カッコいいと言われている人だ。

きっと、女性職員の中にもそう思っていた人がいたのかも知れないが、釘宮先生のことが好きすぎて、高橋先生の視界には入っておられない様子である。


「ったく。霧山〜!お前、明日も日直な!」

「先生!それは職権濫用です!」

「冗談だよ。冗談。とりあえず、日直システムは学校のルールだからこのままだからな!それと、霧山のタイミングでいいんだけどよ…。女の子って言ったって、同じ人だろ?たしかに男と女で考え方が違ったりってのはあるかもしれねーけどよ。大きく分けりゃ同じ人なのよ。男だろうが女だろうが、1人1人に個性ってのがあんじゃねぇか。だからよ、女の子に対して苦手意識があんのかも知れねーけどよ。1人の人として見てあげればいいんじゃねぇの?まぁ、先生がそんなこと言ってたな〜ぐらいに覚えておいてくれたらいいよ」

「…はい。わかりました」

「おう!じゃあ、日直おつかれさん!」

「…はい。失礼します」

「おっ!そうだ霧山!ゴミって溜まってたか?」

「はい。今からまとめて、捨ててから帰りますよ」

「そういう所は気が利くんだよな…それをなんで女の子に出来んかね?」

「苦手だからですかね?」

「正解!よし!このチョコレートをあげよう」

「あ、ありがとうございます」

「うしっ!じゃあ、ゴミ捨て頼んだぞ!気をつけてやれよ!そんで!ちゃんと気をつけて帰るんだぞ!」

「わかりました。では、失礼します」

「おう!また明日な〜!」


僕は頭を下げてから職員室を出た。

さて、教室に戻ってゴミをまとめないとな…

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