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それから朝日奈結衣は周りから距離を置かれている。
もう無くなるものが出てくることはなかったが、
みんな朝日奈結衣が犯人だと思い込んでいる。
僕たちに迷惑がかかるからと、
弁当も一緒に食べなくなり、
トラがすごく心配しているが、
避けられているようだ。
「話しかけてもダメだわ…」
「…多分、朝日奈さんを追い込みたくてわざと鞄に入れたりしてたんだろうな…だが、もうそれも無くなったから犯人を見つけるのは難しいか…」
「でも、ユイの為に何かできないかな?」
「みんなユイのことを悪く思っているのかしら?姫たちのように悪く思っていない人もいるのではないかしら?」
「田中とかは…悪く思ってねぇだろうけど…クラスの中に別に犯人がいるなんて考えたくなさそうだからな…」
「…だろうな」
「湯水とかどうかな?ちょっと聞いてみるわ!」
トラは湯水淳二に話しかけた。
「なぁ!湯水!ユイユイのことなんだけどさ!」
「え、え?ゆ、ユイユイ?」
「ああ、そっか!朝日奈さんのこと!」
「あ、朝日奈さんのことか…それでどうしたの?」
「俺らさ〜、ユイユイが犯人だと思ってねぇんだよ!湯水はどう思うよ!やっぱり、ユイユイが犯人だと思うか?」
「お、俺は…違うかもしれないなぁとは思うよ」
「おっ!マジかよ!」
「う、うん。か、顔を見てたら…本当に知らなそうな顔をしてたから…そう思ったかな」
「そうなんだよ!湯水って話がわかるじゃねぇか!それでさ!犯人を見つけたいって思うんだけど…何か知らないか?」
「うーん。俺は…何も知らないよ」
「まぁ…そうだよな…悪いな!話が聞けてよかったわ!」
「うん…大丈夫だよ」
トラが戻ってきて、湯水も俺らと一緒でユイユイが犯人じゃないと思ってるけど、やっぱり何もわかんないみたいだな〜と言った。
「おい!盗人!なに弁当食ってんだよっ!」
ガシャーン!
昼休みになり弁当を食べていると、
大きな音が鳴った。
朝日奈結衣の机を男子が蹴ったようだ。
床に弁当箱が落ちており、
ご飯もおかずもバラバラに散らばっていた。
「お前にはその弁当がお似合いだな!」
ハハハと笑いながら教室を出ようとする男子達に、
トラはキレながら声をかけた。
「おめーらっ!ふざんけんじゃねぇーぞっ!」
トラは男子達と殴り合いの喧嘩をしそうになっている。
篠宮里沙と白雪姫花が落ちた弁当を拾いに行った。
「ははは〜…もう食べられないのだよ…」
「ユイ…私の弁当わけるから一緒に食べようよ」
「姫の弁当もわけてあげるのだけれど」
「ううん…ユイユイは大丈夫なのだよ…」
「ユイ…」
弁当を片付けてから朝日奈結衣は教室を出て行った。
僕たち以外のクラスメイトは、
朝日奈結衣を犯人だと思い込んでいるクラスメイトは、
こういうことを普通に行っている。
みんなで朝日奈結衣を庇っているが、
きっと、僕たちの知らないところでも、
こういうことが起きているのかもしれない。