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「…トラ、何かあったろ?」
「ん〜?なんだよ!急に?」
「…はぁ…隠せてないからな」
タカにそう言われて、そうなのか?と思った。
多分、まだ昨日のモヤモヤが残ってるから…
タカはそれに気付いてるのかもな〜
「トラが話せないことなら聞かないけど…もし僕たちでよければ話は聞くよ?トラ…元気なさそうだからね」
リクにもそう言われてしまった。
俺ってそんなにわかりやすいのかな〜?
「んー…誰が悪いってわけじゃないんだけどさ…てか!悪者扱いしてほしくないんだけど…」
「…考えすぎだろ。トラはバカなんだから考えたって答えなんて出ないだろ?」
「タカ…」
「…すまん。言い過ぎたな」
「トラ…僕たちはトラの話を聞いても、誰が悪いとか思わないから…安心していいよ」
「…そっか…そうだよな!リクとタカだもんな!心配した俺が悪かったわ!実はさ…」
俺は昨日あったことを2人に話した。
「…会えてよかったじゃないか」
「おう!それはよかったな〜とは思ってるんよ!」
「…母親の方か?」
「んー…まぁ、咲良ちゃんがさ!勉強の邪魔になるからって距離を置かれんのは仕方ないかな〜って思うんよね〜。でも、母親にさ!関わんなって言われんのは違う気がするんよね?俺らってもう高校生じゃん!まだ未成年ではあるけど、自分の意思ってもんがあるんじゃねぇの?なんか…咲良ちゃんがさ…母親の言いなりになって無理してんじゃねぇかな〜って思っちゃったんよね〜」
「…でもそれは家族の話だろ?本人が親に言うならまだしも、トラが言うことじゃないんじゃないか?」
「そうなんよね〜…」
「僕はトラがしたいようにしたらいいと思うけど。トラは小鳥遊さんに元気になってもらいたいって思ってるんだよね?」
「おう…」
「それなら、トラの思ってることを伝えたらどうかな?」
「…とりあえず、本人に伝えるのはいいんじゃないか?」
「そうだな…うしっ!そうするわ!ありがとな〜!」
俺はそう言って、咲良ちゃんの近くに行った。
「よっ!咲良ちゃん!」
「あっ!トラくん!…昨日はごめんね」
「いいっていいって!気にしてないからさ!それより、あれからどうだったん?怒られたりしなかった?」
「うん…少しだけ…でも、私が約束破っちゃったから…」
「それは俺のせいじゃん!咲良ちゃんは悪くないっしょ?」
「でも、トラくんの誘いを断らないで行ったのは私だから…」
そう言われるとなんだか悪い気がしてきた。
「俺のせいで…ごめんな…」
「ううん!トラくんのせいじゃないよ!私の成績が悪くなったのが原因だから…」
「てかさ!成績ってそんなに重要なん?俺がバカだからわかんないだけかも知れないけどさ!友達とかさ!好きなことをするとかさ!他にも大切なことってあるんじゃないん?」
「それは…でも、お母さんは良い成績を取って、良い大学に行って…そうしたら…幸せになるって…」
「でもさ!それまで幸せを感じちゃいけないんかな?咲良ちゃんのお母さんが言ってることもわかんだけど…それって絶対に幸せになるって言えんのかな?だって、幸せを感じるのは咲良ちゃんじゃん!咲良ちゃんのお母さんじゃなくない?咲良ちゃんの人生なのに…今、咲良ちゃんが幸せを感じられてないんだったら、その時になって幸せって感じられるんかな?」
「…そんなの…わかんないよ」
「だよな…俺もわかんないわ…未来のことなんてさ…あんま考えたこともなかったから…でも、俺は今の咲良ちゃんが元気に笑ってさ!幸せを感じられた方が嬉しいんよ!友達じゃんか!なんか力になってあげたいって思うんよ…」
「…うん。ありがとう」
「だからさ!なんか俺に出来ることとかないん?なんかあったら力になっからさ!」
「…ありがとう。でも、ごめんね。よくわかんないや…」
そう言って咲良ちゃんは離れていった。
うわぁ…余計なお世話だったかな〜
肩にポンと手を置かれたので見るとタカだった。
「…トラのわりには良いこと言ってたんじゃないか?」
「わりにはってのは余計だろ?」
「…それで、どうするんだ?もう諦めんのか?」
「うーん。わかんね。咲良ちゃん本人にわからんって言われちゃったらさ〜。どうしたらいっかな〜」
「小鳥遊さんのお母さんにもトラの気持ちを伝えてみたら?」
「…リク、何言ってんだ?」
「だって、昨日トラは一方的に気持ちを伝えられたんでしょ?それなら、トラにも気持ちを伝える権利はあるんじゃないかな?」
「…まぁ、言ってる意味はわかるが…家族の問題に口を出すってことになるんじゃないか?」
「うーん。そうなのかもしれないけど…決めるのは相手次第でしょ?トラの気持ちを伝えるだけなら問題ないんじゃないかな?」
「…それも…そうなのか?」
「トラが小鳥遊さんのことを思って伝えたいって思うなら、そうしてもいいんじゃないかな?って僕が思っただけなんだけどね」
「そっか〜…いいんかな?いいんなら、俺伝えちゃうぜ!」
「…まぁ、キレられるのは確実だろうがな」
「それでも、俺は俺の気持ちを伝えたいかんな!今日の放課後に伝えられそうだったら伝えてみるわ!ありがとな!」
それからは何て伝えようかな〜?とか
どうやったら会えんだろ?とか色々と考えた。
気付いたら、放課後になっていた。




