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「おい!霧山!俺と勝負をしろっ!宏樹もだ!わかってるよな!この勝負に負けたやつは諦める!そういうルールだ!」
土田剛は僕にそう言った。
間島宏樹も土田剛のそばにいるが、
僕の顔をなんとも言えない表情で見ている。
「え?リク、どうしたん?何で土田と間島に勝負なんて誘われてるん?」
「…色々、あったんだよね」
「…面倒なことに巻き込まれたんだな」
「うん。タカの言う通りなんだ」
トラとタカと話していると、
土田剛は僕を指差してこう言った。
「コソコソと何を話しているっ!?俺たちと勝負をするだろっ!?早く返事をしろ!!」
「…あ、あの…僕は勝負なんてしませんので…」
「戦う前から負ける心配か?勝負をしなければ結果なんてわからないだろうっ!?」
「…あの…戦う理由なんてありませんので…」
「なんだとっ!?そうやっていつまで逃げるつもりだ!この勝負を引き受けなければ負けだと認めることになるぞっ!!」
「…あの…僕の負けでかまいませんので…」
「そうか!霧山は戦わずに負けるか!わかった!そんなやつはライバルではないっ!!もう二度と俺と宏樹の勝負に関わるなっ!!」
土田剛はそう言って、僕の席から離れた。
間島宏樹が話しかけてくる。
「…霧山…ごめんな」
「…い、いや…間島くんが謝ることじゃありませんので…」
「…そっか…ありがとな」
「…僕は大丈夫ですので…あ、あの…あまり、無理はされないでください…」
「…わかった。霧山…ありがとな」
間島宏樹はそう言ってから、僕の席を離れていった。
「んー?結局、どういうことなん?リクの負けってこと?」
「そうなるのかな?」
「…もう関わってこなければいいな」
「そうだね」
「ねぇねぇ!霧山くん!さっきのは何だったのさぁ〜!ユイユイね!ビックリしちゃったのだよ!」
「うん。私もビックリしちゃった」
「んー、なんかよくわからんけど、土田と間島に勝負を挑まれたんだけど…戦わずに負けたらしいんよね!俺もよくわかんね!」
「霧山くん。どうして戦わなかったのかしら?」
「白雪さん?いきなりどうしたん?」
「霧山くんが勝負を挑まれて断るとは思っていなかったのだけれど…」
「いやいや!リクってそういうの好きじゃないじゃん!白雪さん何言ってんだよ?」
「そうだよ〜!霧山くんはいつもフワフワ〜ってしてて、平和主義っぽい感じじゃないか〜!ビックリしちゃったけどね!でも、霧山くんなら断るんだろうなぁ〜って、ユイユイは思っていたのです!」
「ユイユイの言う通りだろ?白雪さん、どうしたんだよ?」
「そう。姫の人選が間違っていただけかしら?」
「ん?ん?どゆこと?」
「一之瀬くんには関係ない話なのだけれど」
「またそうやってさ!俺にだけ冷たくしてよ〜!アレか!白雪さんって俺のこと好きなん?」
「一之瀬くんのことバカだとは思っていたのだけれど…ここまでバカだったのかしら?姫はもう何も言葉が見つからないのだけれど…」
「と、トラくん…それはないかな?」
「トラくんトラくん!そんなことあるわけないじゃないか〜!ユイユイにだってそれぐらいはわかるのだよ!」
「…トラ、ありえない話はしない方がいい」
「んだよ!みんなして!何だよ!白雪さんが俺だけに冷たいのは本当じゃん!正直になれないのかな?とか思っちゃっても仕方ねぇじゃん!」
「…トラ、もうやめろ」
タカはトラの肩に手を置いて、首を横に振った。
トラは可哀想なぐらいみんなに否定されて、
少しだけ落ち込んでしまったようだ。
「そう言えば、まだ盗難騒ぎって続いてるみたいだね…」
「ユイユイも聞いたのだよ!人の物を盗むなんて悪いことだって思わないのかね?ユイユイは悲しいよ」
「…結局、犯人は見つからないままか」
「うん。みんなも気をつけなきゃいけないね」
「うん!そうなのだよ!早く犯人が見つかるといいけどね〜…そんな悲しいことが続くなんて、ユイユイはイヤなのです!」
盗難騒ぎはまだ学校の中で続いているようだ。
先生達も対処に困っているのだろう…
学年、クラス…それぞれ別に起こっていることから、
生徒ではなく第三者の可能性が高いと考えているようだ。




