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放課後になり、タカは涼川愛夏と一緒に帰り、
みんなそれぞれ帰っていった。
僕もいつもの用事が終わった後、家に帰る。
帰っている途中に携帯電話がヴーと震えた。
携帯画面を見ると篠宮里沙からのメッセージだった。
霧山くん。ごめんなさい。
父さんと一緒に謝りに行きたいんだけど、、、
霧山くんのお家がわからなかったから、
教えてもらえませんか?
僕はメッセージを返した。
謝罪の必要はありません。
篠宮さんから謝罪されていますので、
それでよろしいかと思います。
そう返すとすぐに返事がきた。
父さんがどうしても直接、謝りたいって、、、
私も霧山くんに申し訳なくて。
どうしたらいいのかな?
どうしたらいいのかな?って、
謝罪の必要はありませんって伝えたのになぁ
わざわざ家を教えて、父親を連れて来られても
母さんがビックリしちゃうだろうから…
少しだけ面倒だなぁって思ったけど、
僕はこう返事を返した。
わかりました。
もしよろしければ篠宮さんのお宅に伺います。
それで、よろしいですか?
本当にごめんね!
ありがとう!お願いします!
僕はため息をついてから、真逆の方向へ歩く。
もう少しで家に帰り着いたんだけどなぁ
篠宮里沙の家についた。
インターホンを鳴らす。
ピンポーン
するとすぐに玄関の扉が開いた。
そこには篠宮里沙と篠宮里沙の父親が立っていた。
「霧山くん…わざわざ来てもらって…ごめんね」
「…いえ、大丈夫ですので…」
「とりあえず、上がってもらえる?」
「…わかりました」
篠宮里沙に案内されて、
リビングのソファに座らされた。
対面に2人は座っている。
「霧山くん。私の勘違いで暴力を振るってしまい…本当に…本当に申し訳なかった」
篠宮里沙の父親はそう言って、
深々と頭を下げた。
「里沙から話は聞きました。霧山くんは里沙の相談に乗ってくれていたのに…その…里沙が泣いていることに…動揺してしまって…話も聞かずに…カッとなって殴ってしまった。本当に!本当に申し訳ない!」
また深々と頭を下げる。
大人に深々と頭を下げられるなんて…
思ってもみなかったなぁ
「私からも、本当にごめんなさい!わ、私のせいで…父さんが勘違いして…霧山くんを…」
「あ、あの…ぼ、僕からも…いいですか?」
そう話しかけると2人は黙った。
「まずは、篠宮さんなんですが…あ、その…む、娘さんの方…なんですが…今日もお話したと思いますが、僕は大丈夫です。普段通りに接していただかないと、戸惑ってしまいます。むしろ、その様にされる方がが困ってしまいます。謝罪は受け取りました。ですから、もう謝る必要はありません」
「霧山くん…」
「次に、篠宮さんのお父様ですが…家族を大切に…だ、大事に思う気持ちは…僕にも…わかります。で、ですから…あの時に…か、勘違い…さ、されているんだなぁ…とは思って…いました…。で、ですので…ぼ、僕は気にしていません」
「だ、だが!」
「ご、ご家族を…大切に…だ、大事に思われていることは…と、とても…素敵なこと…だと思います。ぼ、僕に…も、申し訳ないと…思われるのなら…こ、今後は話を聞いてから、行動される…ことを、お、おすすめします」
「霧山くんの…言う通りだな…。まさか…里沙と同じ歳の子に説教をしてもらえるなんて…思ってもいなかったよ」
「そ、それは…も、申し訳ありません…」
「いや!霧山くんは謝らないでくれ!霧山くんの言う通りだ。私が里沙の話を聞いて…霧山くんの話を聞いていれば…こんなことにはならなかった…本当に申し訳なかった!」
篠宮里沙の父親は深々と頭を下げた。
「あ、あの…しゃ、謝罪はう、受け取りましたので…そ、その…もう謝られないでください…」
「だ、だが!それだけでは申し訳なくて…そうだ!霧山くん!私を殴ってくれ!」
「あ、あの…」
「思いっきり殴ってくれて構わない!」
立ち上がってそう言いはじめた。
うわぁ…何で僕が殴らなきゃいけないんだろう?
「さぁ!思いっきり殴ってくれ!」
「あ、あの…ぼ、僕は殴りません」
「だが!それでは私の気がおさまらないんだ!」
「篠宮さんのお父様の…気がおさまらないとしても…ぼ、僕は殴りません。そ、その…な、殴る意味が…わかりません」
「霧山くんは私に殴られただろう!だから、仕返しに殴りたいとは思わないのかいっ!?」
「…お、思いません。あ、あの…何度も…お話していますが…僕は大丈夫ですので。そ、その…お気になさらないでください」
「お、お父さん!霧山くんが困ってるからっ!」
「そ、そうか…」
篠宮里沙の父親はシュンとなってしまった。
「本当に私のことを許してくれるのかい?」
「…は、はい。しゃ、謝罪してくださいましたから…そ、それに…と、友達の父親に…そ、そんなに謝罪されても…も、申し訳なく…思いますので…」
「そうか…。そうだよな…。最後にもう一度だけ、謝らせてほしい。本当に申し訳なかった!」
深々と頭を下げた後にこう言ってくれた。
「そして、里沙の友達でいてくれてありがとう。私がとんでもないことをしてしまったのに…それでも、里沙と友達でいてくれて…本当に…本当にありがとう」
「…い、いえ」
「私からも…霧山くん。ありがとう。相談も聞いてくれて…お父さんも許してくれて…本当にありがとう」
「…は、はい」
これはこれで返答に困ってしまうなぁと思った。
もしよければ夕飯をご馳走するが?と言われたが、
家で母が待っていますのでと断った。
篠宮里沙の家を出るまでに、
何度もありがとうとこれからもよろしく頼むと言われてしまって、僕は少しだけ疲れてしまった。
早く帰って…バケタイしたいなぁ




