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僕は女の子に話しかけた。


「お名前はメイちゃんって言うのかな?お家の人は一緒じゃないの?」

「メイはメイだよ。メイね!ひとりできたの!すごいでしょ!」

「そうなんだ。すごいね〜。でも、お家の人に1人でお出かけしちゃダメって言われてなかったの?」

「…いわれてた」

「そっか。言われてたけど、お出かけしちゃったんだね。お家の人はどこにいるのかな?」

「ママはおしごとがいそがしいなの。ねーねはね…いつもたいへんそうなの…だからね、メイはひとりでもだいじょうぶだよってね。ママにもねーねにもね!だいじょうぶってね!」

「そっか。お母さんとお姉さんに大丈夫だよって伝えたかったんだね」

「うん…」

「そうだったんだね。でもね、メイちゃん。メイちゃんが1人でお外にお出かけしちゃったら、お母さんもお姉さんももっと心配しちゃうんだよ。だから、メイちゃんはちゃんと大丈夫なんだよってお話した方がいいと思うな」

「おはなしするの?」

「そうだよ。お母さんもお姉さんも大変そうだから、大丈夫だよって伝えたかったんだよね?」

「うん…」

「それならね、1人でお外にお出かけするんじゃなくて、お母さんやお姉さんのお手伝いをしてあげるとか、メイちゃんにもお母さんやお姉さんを喜ばせてあげることはいっぱいあるんだよ」

「そうなの?」

「だからね、ちゃんとお話して喜ばせてあげようね」

「うん!わかった!」

「うん。メイちゃんは偉い子だね。でも、1人でお出かけしちゃったのか…お家まで帰れるのかな?」

「うん!メイのおうちね!そこのにかいなの!」

「そうなんだ」


メイちゃんは公園の近くにある、

マンションを指差しながら教えてくれた。


「メイちゃん。お家の人から知らない人について行ったり、お話するのはダメだよって言われなかった?」

「あっ!…いわれてた」

「メイちゃん。世の中にはね、良い人もいるけど、悪い人だっているんだよ。だから、知らない人について行ったり、お話するのはダメだって教えてると思うんだ」

「でも…にーにはいいひとだよ」

「もしかすると、お兄ちゃんも悪い人かもしれないよ?優しいフリをして近づいてきて悪いことをする人だっているから、気をつけなきゃいけないよ?」

「でも…」

「よしっ!それじゃ、お兄ちゃんと約束しよう!」

「にーにとやくそく?」

「そうだよ。今度から1人でお出かけする時はお家の人に話してからお出かけすること。知らない人にお家の場所を聞かれても話さないこと。お兄ちゃんと約束できる?」

「うん!メイね!やくそくできるよ!」

「そっか。じゃあ、ゆびきりしよっか」


僕はメイちゃんとお互いに小指を出して、

ゆ〜びき〜り、げ〜んまん、うそついたら

お兄ちゃんに叱られる!ゆびきった!と約束した。

そろそろお家に帰らなきゃねと僕が言うと、

だっこ〜!と言われてしまったので、

メイちゃんを抱っこしながらマンションへと歩いた。


「ねぇねぇ!にーに!きいて!メイのパパね!おそらにいるんだって!ママとねーねがおしえてくれたの!」

「そうなんだね。メイちゃんのお父さんはお空にいるんだね。じゃあ、いつもメイちゃんのことを見守ってくれてるんだね」

「うん!そうなの!」

「そっか。メイちゃんは家族のことが大好きなんだね」

「メイね!ママもパパもねーねもね!だいすきなの!」

「そうなんだね。きっとみんなもメイちゃんのことが大好きなんだと思うよ」

「うん!」


そろそろ話しとかないとな…


「メイちゃん。今日のことはお母さんかお姉さんにちゃんとお話しなきゃダメだよ」

「うん…でも、しかられちゃう」

「そうだね。でも、メイちゃんのことが大好きで心配してるから叱るんだよ。メイちゃんはお家の人の言いつけを守らないで1人でお出かけしちゃったでしょ?だから、ちゃんとごめんなさいするんだよ?」

「うん…」

「よしっ!それならお兄ちゃんがいっぱい叱らないであげてくださいってお手紙を書いてあげるから、それを渡してからごめんなさいできるかな?」

「にーにがおてがみかいてくれるの?」

「うん。書いてあげるよ。それなら、ちゃんとごめんなさいできるかな?」

「うん!わかった!」

「よしっ!じゃあ、ちょっと待ってね」


もうマンションの前についたので、メイちゃんを下ろしてから鞄の中から手紙を取り出した。

僕は兄ちゃんと手紙を書き合うことがある為、普段から手紙を持ち歩いている。


携帯電話があるからメッセージや電話をすればいいだけの話なんだけど、手紙だと味があっていいだろ?という兄ちゃんの言葉によって、たまに手紙を書き合うのだ。


さて、メイちゃんの家族に何て書こうかな…


メイちゃんのご家族様へ

突然のお手紙、申し訳ありません。

公園で転んで怪我をしているメイちゃんを見かけ、

傷口を洗い、絆創膏を貼りました。

メイちゃんからお話をお聞きしまして、

ご家族様の言いつけを守らなかったことを

叱られるとは思いますが、優しく叱ってあげてください。

メイちゃんはご家族様が忙しかったり、

大変な思いをされていることを考えられていました。

1人でも大丈夫だと思ってもらいたかったそうです。

今回は間違った行動をしてしまったとは思いますが、

ご家族様のことを思っての行動だと思います。

僕からも1人で出かけることは心配をかけてしまうので、

ちゃんとお話をして、お手伝いなど、

他にも喜んでもらえることが、

あることをお伝えしました。

ですから、どうかメイちゃんの気持ちを、

汲み取ってあげてほしいのです。

また、お家がマンションの2階だと話されました。

そのことについても、僕から知らない人には、

お家を教えてはいけないことを伝えてあります。

1人で出かけないこと、お家を教えないこと。

この2つは僕とも約束をしてくれました。

メイちゃんのお父様のこともお聞きしました。

見ず知らずの僕が言うことでは、

ないのかもしれませんが…

ご冥福をお祈りいたします。

ご家族様が健康で幸せに過ごされることを、

願っております。

メイちゃんの傷口は綺麗に洗ってから、

絆創膏を貼りましたが、

傷口を定期的にご確認いただき、

傷口が酷くなるようなら病院への受診をお願いします。

僕は学生でして、バイト代の少ない金額ですが、

もし病院を受診された際の為に、

お金と絆創膏を一緒に同封いたします。

よろしければお使いください。

見ず知らずの人間から長文のお手紙、

申し訳ありません。

ですが、ご家族様の幸せを願っております。


「うん…めっちゃ長くなったな」


読み返してみて…これ、気持ち悪くないか?

そう思ってしまったが、これが僕の気持ちだ。

どうにでもなれ!と思いながら、

絆創膏とお金を手紙の中に入れて、封をとじる。


「お兄ちゃんがお手紙を書いたから、お母さんかお姉さんに渡してね」

「うん!わかった!にーに!ありがとう!」

「メイちゃんはちゃんとありがとうって言えて、偉い子だね。お家にはちゃんと帰れるかな?」

「うん!にかいにあがってね!」

「メイちゃん!知らない人にお家を聞かれたら?」

「あっ!にーにとやくそくしたのでおしえられません!」

「うん。よくできました」


僕はそう言って、メイちゃんの頭を撫でた。

メイちゃんはバイバイと手を振ってから、

階段を上がって行った。

もう大丈夫かな?

僕は携帯で時間を確認してから家に走って帰った。

早くしないと店が閉まってしまうじゃないかっ!!

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