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リクは用事があるからと言って先に帰った。
若松千恵美は俺にも謝ってきたが、
愛夏が許してるんだから謝らなくてもいいと返した。
愛夏が化粧の仕方を教えて、
化粧品をあげてから2人は連絡先を交換していた。
わからないことがあったら連絡しろよ!
そういうことらしい。
千恵美はアタシのダチだからな!
そう言ってもらえて若松千恵美は嬉しそうだった。
その気持ちは俺にもわかる。
俺も嬉しかったから…
化粧を仕方を教え終わり、
3人で帰ることになったが、
若松千恵美とは家の方向が違ったため、
俺は愛夏と2人で帰ることになった。
愛夏が隣に歩いている。
ただそれだけなのに俺は嬉しいと思った。
「永森…ありがとな」
「…何が?」
「は?何が?じゃねぇだろ!…アタシの為に…その…色々としてくれてよ」
「…俺がしたいからしただけだ」
「なんだよそれ?お礼ぐらい素直に受け取れよな!」
「…そうだな」
愛夏は両手を上にあげて大きく伸びをしている。
そんなところも可愛いと思ってしまう俺は、
もうおかしくなっているんだろうか?
「でも、まさか千恵美だったとは思わなかったわ〜。永森、よく見つけたよな?」
「…俺だけの力じゃない。リクもトラも朝日奈さんも篠宮さんも手伝ってくれた」
「そうだったんだ。てかさ…永森って女の子の友達できたんだな?」
「…2人は俺の友達じゃない。トラの友達だ」
「なにそれ?友達の友達は友達だろ?」
「…謎かけか?」
「ちげーわ!」
「…俺に女子の友達ができるのが意外だったのか?」
「んー?まぁ…なぁ〜。永森ってさ…女の子と全然、喋らないじゃん!だから、学校では気を遣ってたんだけどなぁ…」
「…それについては…ありがとう。愛夏と学校で仲良くしたら、隠キャの俺と友達なんてやめた方がいいって周りのギャル達に絶対に言われるだろうからな」
「は?そんなんアタシが黙らせるんだけど?」
「…黙らせてどうする?友達無くすぞ?」
「アタシのダチをバカにするやつなんてダチじゃねーよ!そんなやつらと仲良くしてるつもりないから」
「…そうか。俺の考え過ぎだったのかもな…」
それならもっと早くからこうやって話したかった。
こうして俺の隣にいてくれて、
そんな毎日が続けばどれだけ幸せなんだろう。
「…俺さ。…愛夏のこと…好きなんだ。隠キャの俺に言われても困るだろうけど」
一緒に歩いていたのに、
愛夏が隣にいなくなった。
俺は後ろを振り向くと顔を真っ赤にして、
愛夏は立ち止まっていた。
「な、な、なんてタイミングで告ってんだよ!?もっとシチュエーションとか告白の仕方ってもんがあんだろっ!?」
「…わ、悪い。お、俺には…今しかないって…思ったから」
「こ、こんな学校の帰り道でよぉ!い、いきなり言うから…あ、アタシだってな!心の準備ぐらいしたかったんだよ!」
「…ほ、本当に悪い」
「べ、別に…謝ってほしいわけじゃねぇけど…」
俺は愛夏に近づいてから、もう一度言った。
「…俺は愛夏のことが好きだ。俺でよければ…付き合ってほしい」
俺は自分の気持ちを伝えた。
断られても仕方ないと思っている。
それでも、今伝えないと…
俺は一生、後悔してしまう気がするから。
「な、永森は…アタシのどこが好きなんだよ?」
「…そうだな。強がっているように見えて繊細なところだったり、相手を思いやることができるところだったり、大切な友達を守ろうとするところだったり…色々と思いつくことはあるが…やっぱり、可愛いところだろうか。そういう内面も含めて俺は可愛いと思う」
「な、なんだよ…それ…」
「愛夏は自分のことが可愛くないって思っていたって言っていたよな?俺はそうは思わない。あの日、会った時から可愛いと思ってた。化粧をしてる愛夏も、化粧をしていない愛夏も…俺には可愛いと思う」
「あーあー!もう言うな!それ以上聞いてたら…恥ずかしくなんだろ…」
「…そうか…悪い」
「だから、謝んなって…。永森は女子が苦手なんだろ?」
「…前にも言ったが、愛夏は特別だ。俺が一緒にいたいと思えた初めての女性だ。たしかに、今でも…他の女子は苦手だが…それでも、愛夏とは一緒にいたいと思う」
「…ホントに…アタシでいいのか?」
「…それは俺が聞きたい。隠キャな俺でもいいのか?」
そう聞くと愛夏は笑って言ってくれた。
「…アタシも…好きだったから…」