3
僕はアニメやゲームが大好きだ。
だが、オタクとは決して呼ばないで欲しい。
オタクとは好きなことにステータスを全振りすることができる偉大なる尊敬できる方々の総称である。
足下にも及ばない僕のことをオタクと呼ぶことが、どれだけおこがましいことなのか理解できるだろうか?
僕はオタクの卵でしかないのだ。
「今日さ!星の発売日だろ?予約したん?」
「もちろん、予約したさ。バケタイの最新作なんだ、リクも予約しただろ?」
「僕も予約したよ」
バケタイとは化け物退治だー!というゲームである。
発売当初は全然売れなかったが、徐々に人気が出てきて、最新作が発売されたのだ。
それが、化け物退治だー!☆
村育成アクションゲームで、プレイヤーは村の村長になり、化け物を退治しながら、村を大きくしていくゲームなのだ。
「でもさ!バケタイがここまで人気になるとは思ってなかったよな!」
「やっとでバケタイの素晴らしさに世間が気付いたのさ」
「でも、おかげで最新作が発売されて嬉しいよね」
「リクはやっぱり双剣を使うのか?」
「そうだね。前作でも使ってたからね」
「俺は両手剣だな〜」
「トラも変わらずだね。タカはやっぱり銃なの?」
「もちろん。ハンドガンとスナイパーってカッコいいだろ?」
「カッコいいとは思うけど、僕には難しくて無理だな…」
「トラは無理だろうけど、リクなら行けるんじゃないか?」
「そうかな?」
「おいおい!俺には無理なのかよ!」
「トラには無理だろ」
「トラは両手剣が似合ってるよね」
「まぁな!両手剣以外は使う気しないかんな!」
バケタイは様々な武器を使用して化け物退治を行う。
そして、化け物退治をすることで国からの報奨金が貰えて、村を大きくしていくのだ。
だが、意外とそれが難しい。
武器屋や防具屋、アイテム屋を増築しても、
村人の人数がいなければ強い装備やアイテムを作れない。
さらに、村人の信頼度というものがあり、
それが装備やアイテムの品質にも関わってくるのだ。
それに、村そのものを大きくしないことには、村人の人数を増やすことも出来ず、考えながら、バランスよく村を育てなければ強い化け物を倒すことが困難なのだ。
「じゃあさ!今度の休みに一緒に買いに行こうぜ!そのままさ!一緒にやろうぜ!」
「俺は賛成だな」
バケタイは最大6人まで協力プレイが可能なのだ。
「ごめん。僕は兄ちゃんの分も買いに行くからさ、今日買いに行こうと思ってたんだよね」
「そうなん?」
「リクの兄さんは仕事で忙しいのか?」
「そうだね…最近は忙しいみたいで深夜に帰ってきてるみたいでさ。仕事終わりじゃ店も閉まってるから、兄ちゃんに買ってきてくれないって頼まれたんだよね」
「そっか〜!それじゃ、仕方ないな!」
「でも、今度の休みに一緒にしたいとは思うかな」
「じゃあ、トラと一緒に買いに行って、3人でしようか」
「そうだな!」
「というか、トラは日直はよかったのか?」
「だった!忘れてたわ!俺、小鳥遊さんとこ行ってくるわ!じゃあ、また明日な〜!」
トラは手を振りながら走り去って行った。
「タカはもう帰るの?」
「そうだな。リクは店に寄ってから帰るんだろ?」
「僕は家に一度帰ってから店に行こうかな?」
「そっか。多分、行列ができてるだろうけど…」
「そうだよね」
「まぁ、気をつけて…。じゃあ、また明日」
「うん!タカ、ありがとうね。また明日」
僕はタカと別れて、学校から帰る。
今日も何事もなく過ごせたことにホッとした。
店に買いに行ってからバケタイだな!
それを考えると少しだけワクワクした気持ちになった。
帰り道の公園を通り過ぎようとしたら、
女の子の泣く声が聞こえた。
公園を見ると、女の子が座り込んで泣いている。
関わったら僕が泣かしたみたいに見られるのかな?
そう思いながらも、女の子に近づいた。
「どうしたの?」
「…ヒック…ヒック」
女の子は泣いていて何も話してくれない。
でも、膝を見たら擦り傷から血が出ていた。
転んで怪我でもしたのかな?
「怪我しちゃったんだね…。痛かったよね。大丈夫だよ。大丈夫」
僕はそう言いながら女の子の背中を優しくさすってあげた。
そうしていると女の子は少しだけ落ち着いたのか、
泣き止んでくれた。
「転んじゃったのかな?」
「うん…。メイね…かけっこしてたらころんじゃったの…」
「そっか。痛かったよね。でも、このままにしてたらバイ菌さんが悪さしちゃうかもしれないから、足をキレイキレイしようか」
「うん…」
僕は女の子を抱っこしてあげて、
公園の水道まで歩いていく。
靴と靴下を脱がしてあげてから、少しだけ痛いかもしれないけど我慢できるかな?と聞いたらメイがまんできる!と言われた。
「ごめんね。少しだけ我慢してね」
そう言ってから水道で傷を洗い流してあげた。
メイちゃんはグッと我慢して泣かなかった。
偉い子だな…
傷口意外の場所はタオルで拭いてあげて、
僕は鞄から絆創膏を取り出して、貼ってあげた。
子供の頃から母がよく転んで擦り傷を作っていたので、絆創膏を持ち歩くのが癖になってしまったのだ。
「よし。これで大丈夫かな?痛かったのに、よく我慢できたね。えらいね」
「メイえらいの?」
「うん。えらいよ。後はお兄ちゃんが魔法のおまじないをかけてあげるね」
「おまじない?」
「そうだよ。痛いの痛いの飛んでいけ〜!」
僕がそういうとキョトンとした顔で見られてしまった。
最近の子供にはこの魔法は効かないのかっ?
なんてことを考えていると、
女の子は笑いはじめた。
「いたいのいたいのとんでけ〜!」
「そうだよ。痛いの痛いの飛んでいけ〜!」
女の子はコロコロと笑ってくれた。




