28
それから放課後の同じ時間、同じ場所で、
僕は殴られることになった。
その時間に行かないと家族に
被害を加えると言われたから。
母さんに迷惑をかけるわけには行かない。
僕が殴られるだけでいいのなら、
別に我慢できるのだから。
ノートの落書きや上履きの画鋲も、
萩原優吾と竹下孝二の仕業だったと、
本人から聞いた。
高校生にもなって、なんて幼稚なんだろう。
挙句の果てには、暴力を振るう。
本当に幼稚な人達だなぁと思っていた。
それに何度も個性を否定することは、
やめてほしいと話をするが、
僕では伝えることができないようだ。
それは本当に悲しいと思った。
「よっ!リク!弁当食おうぜ!」
「そうだね」
「リク…最近、なんかあったのか?」
「タカ、どうしたの?」
「なんか元気がないような気がしてね」
「そんなことないと思うけど」
「それなら…いいけど」
「やっはろ〜!やぁやぁ!今日もいい天気ですなぁ」
「よっ!ユイユイ!一緒に弁当食べるか?」
「いいのですかな〜?リサリサも一緒に食べよ!」
「うん!」
僕たちは5人で弁当を食べた。
「今日は唐揚げは入っていなかったのだね!」
「そうですね」
「おっ!今の霧山くん!トラくんと永森くんと話してる時の霧山くんに近かった気がするのです!」
「そ、そう…ですかね?」
「うんうん!少しでもユイユイと仲良くなってくれたのかなぁ〜って安心したのですよ!敬語がまだ残ってるけどね〜」
「そう…ですね」
僕は篠宮里沙と朝日奈結衣を友達かもしれないと、
思いはじめているのかもしれない。
最近はタカも一言ぐらいなら会話に入ってくる。
「ユイユイね〜!ついに!バケタイを買いました!」
「おっ!マジかよ!」
「そうだったんだね!」
「うんうん。何もわからないけど、トラくんと霧山くんと永森くんが教えてくれるなら、一緒にしたいな〜って思ってね!教えて〜くれるかな〜?」
「もちろんだぜ!」
「リサリサもしてるんでしょ?バケタイ?」
「うん。実はちょっとだけしてるんだ…」
「マジかよ!じゃあ、5人で協力プレイできんじゃん!」
「まぁ、ユイユイはお休みの日は忙しかったりするので、たまにしかできないかもしれないんだけどね〜」
「たまにでも全然大丈夫だよな!そうだよな?」
「そうだな…」
「わかんないことあったらよ!リクに連絡したら、すぐに教えてくれっと思うからさ!」
「そこは僕に全振りするんだね」
「俺じゃ言葉で説明すんのムズイだろ!」
「トラには無理だね…」
「おい!タカ!無理は言い過ぎだろ!」
朝日奈結衣はわからなかったら連絡するね!と僕に笑いかけてきたので、わかりましたと返した。
放課後になり、みんなが帰った後、
いつもの時間より少しだけ時間があったので、
教室で宿題をしていると声をかけられた。
「霧山くん。最近は女子のお友達ができたのね」
「え?…」
声がした方を向くと白雪姫花だった。
「霧山くん。最近は女子のお友達ができたのね」
「お、お友達…なんですかね?」
「お友達じゃないのかしら?」
「ど、どうで…しょうか?…ぼ、僕には…わかりません」
白雪姫花はあれからも目が合うと睨まれていた。
やっぱり、何か怒っているんだろうか?
「あ、あの…ぼ、僕が…何か…し、しましたか?」
「何もしていないわ」
「そ、そう…ですか」
「そう。何もしていないわ」
何で2回目はちょっと強めに言ったんだろう?
何もしてないなら怒る必要はないんじゃなかろうか?
「霧山くんはバケタイをしてるのよね?」
「し、白雪さんも…さ、されてるんですよね?」
「そう」
もう同じ繰り返しにはならないように、
会話には気をつけないといけないな…
「連絡先…聞いてほしいのだけれど」
「え?」
「連絡先…聞いてほしいのだけれど」
どういう意味だろう?
連絡先を聞いてほしいのだけれど?
「あ、あの…ど、どういう意味ですか?」
「そのままの意味なのだけれど」
「ぼ、僕の…れ、連絡先を…き、聞きたい…のですか?」
「違うわ。姫の連絡先を聞いてほしいのだけれど」
違うのか?いや、一緒の意味ではなかろうか?
もしかしたら、他の意味があるのかもしれない…
考えろ…考えるんだ!
下手に返事をしたらまた繰り返しになってしまう!
駄目だ!全く思いつかない!
「姫の連絡先を聞いて、一緒にバケタイをしようって言ってほしいのだけれど」
なんか増えた!
「あ、あの…ぼ、僕の連絡先を…き、聞いて…い、一緒にバケタイを…し、したいの…ですか?」
「違うわ。姫の連絡先を聞いて、一緒にバケタイをしようって言ってほしいのだけれど」
やっぱり、同じ意味だよな?
え?何が違うの?一緒じゃん!
一緒の意味じゃん!どういうこと!?
「あ、あの…い、一緒の…意味だと…お、思うのですが…」
「違うわ。姫の連絡先を聞いて、一緒にバケタイをしようって言ってほしいのだけれど」
駄目だ!やっぱり、同じことしか言ってくれない!
で、でも今回は相手が選択肢をくれている。
この間とは違うんだ!
わかった。わかったよ。
面倒だけど…僕はその選択肢を選ぶっ!
「あ、あの…わ、わかりました…」
「そう…」
白雪姫花は少し微笑みながら、
僕が言うのを待っているようだ。
「ひ、姫の…れ、連絡先を…聞いて、い、一緒に…バケタイを…しようって…い、言って…ほ、ほしいのだけれど」
言ったぞ!僕は選択肢を選んだぞ!
白雪姫花の顔を見ると、
すごく困惑した表情をしている。
あ、あれ?僕はちゃんと選択肢を選んだじゃないか!?
どうして困った表情をしているんだろう?
困っているのは僕の方なんだけどな…
「ちょっと…違うわ」
「い、言いました…けど」
「そうね…。でも、ちょっと違うわ」
「そ、そう…なんですか?」
「もういい。諦めるから…霧山くんの連絡先を教えてくれるかしら?」
「え?…あ、あの…」
「姫と一緒にバケタイをしてくれるかしら?その為に、連絡先を教えてくれるかしら?」
「あ、は、はい…」
僕は白雪姫花と連絡先を交換した。
何が違ったんだ?僕はよくわからないなぁと思った。
「ありがとう。バケタイをする時は連絡するから…」
「わ、わかりました」
「それと…いじめはもう無くなったのかしら?」
白雪姫花には落書きノートを見られている。
あの時は直接的な被害もなく、
イタズラだと伝えていたけど…
今は直接的な被害もある。
さすがにイタズラでは…ないよなぁ
「さ、さぁ…ど、どうなんでしょうか?」
「そう。話したくないなら話さなくてもいいわ」
「そう…ですか」
「でも、いじめられているのなら姫に話すの。姫は絶対に許さないのだから」
「そう…ですか」
「話はそれだけ。連絡するから」
そう言って白雪姫花は帰っていった。
時間を見て、そろそろだなと思った。
僕はいつものように同じ場所へと行った。




