15
公園から公園へのはしごだな。
そう思ったけど、先程の公園よりは
僕の足は軽かった。
メイちゃんと会った公園に近づくと、
メイちゃんは舞さんと言い合いをしているようだ。
「メイね!おはなほしいの!」
「芽衣?もうすぐにーにが来てくれるのよ?にーにと遊ぶんでしょ?」
「うー。でも、おはなほしいの!」
「ど、どうされたんですか?」
「にーに!」
メイちゃんは僕に気付くと走って抱きついてきた。
「あら、璃空くん。来てくれたのね」
「は、はい」
「メイね!おはなほしいの!」
「お花がほしいの?」
「うん!」
「芽衣がね。お花がどうしても欲しいみたいでね…璃空くんと遊ぶって言ってたのに…どうしたのかしら?」
「そ…そう…だったんですね」
「ほら、芽衣?にーにが来てくれたよ?一緒に遊ぶんでしょ?」
「うー。うー。」
メイちゃんはお花が欲しいけど、
僕とも遊びたいと思っているのか、
悩んでいるみたいだ。
「あ、あの…ま、舞さん…が、よ、よろしければ…メイちゃんと…お花屋さんに…行って…き、来ます…けど」
「にーに!メイとおはなやさんいってくれるの?」
「メイちゃんのお母さんがいいって言ったらだよ?」
「うん!ねぇ!ママ!にーにとおはなやさんいってもいい?」
「璃空くん。本当にいいの?」
「は、はい…い、一緒に…散歩をする…ようなもの…なので」
「ごめんね。それなら、お願いできるかしら?」
「わ、わかりました」
「芽衣?にーにの言うことをちゃ〜んと聞くのよ?それと、ここにお金を入れて置くから。これでお花を買うのよ?」
「うん!わかった!」
「それじゃあ、璃空くん。申し訳ないけど、お願いするわね」
「わ、わかりました」
「そうだ、璃空くん。公園に戻ってきたら、連絡してくれるかしら?」
「は、はい。だ…大丈夫です」
「ありがとう。気をつけてね」
「は…はい」
僕は舞さんに頭を軽く下げてから、
メイちゃんと手を繋いで歩きはじめた。
お花屋さんってどこにあったかな?
「にーに!ありがとう!」
「うん?どうしたの?」
「メイとおはなやさんにいってくれて!」
「うん。いいんだよ」
メイちゃんは嬉しそうに歩いている。
お花屋さん…商店街よりにあった気がするな…
とりあえず、そっちに向かって歩こう。
「メイちゃんはどうしてお花が欲しかったの?」
「ママとね!ねーねがね!いっつもたいへんなの!でもね、メイはなにもしてあげられないから…おはなをあげたらよろこぶかなっておもったの!」
「そうなんだね。お母さんとお姉さんにお花をあげたいって思ったんだね」
「うん!」
「メイちゃんは優しいね」
「メイやさしいの?やさしいのはママとねーねだよ?」
「そうだね。お母さんもお姉さんも優しいんだね。だから、メイちゃんも優しいんだよ」
「メイもやさしいの?」
「そうだよ。メイちゃんの家族はみんな優しいね」
「うん!そうなの!」
メイちゃんと話しながら歩いていると、
お花屋さんを見つけた。
中に入ると、お花屋さんで働いていていいのだろうかと思ってしまう程、ヤンキーちっくな男性がエプロンをつけて働いていた。
「おう!らっしゃい!」
「…あ、…そ、その…」
「なんだよ、兄ちゃん?花を探してんのか?どーいう花が欲しいんだよ?ほら、俺に言ってみな?ん?」
明らかに元ヤンですね。
いや、もしかしたら今も何だろうか?
ていうか、何でお花屋さんで働いているの?
僕はお花屋さんとはイメージが合わない店員さんのことで頭がいっぱいになってしまった。
「メイね!ママとねーねにおはなほしいの!」
「おっ!嬢ちゃんが買いに来てくれたんか!あんがとな!ママとねーねにお花ね〜。どんなんがいいよ?」
「んー。どうしようかな…にーにはどれがいいとおもう?」
「そ、そうだね。どれも綺麗だもんね」
「うん!おはな!きれい!」
「兄ちゃんも嬢ちゃんもありがとな!この花を見てるとよ〜。心が綺麗になる気がすんだよな〜。な?兄ちゃんもわかるだろ?」
「そ、そうですね」
「兄ちゃん!話がわかるじゃねーか!」
店員さんは笑顔で僕の肩をバシバシと叩いた。
ごめんなさい。見た目の偏見でお花屋さんとイメージが合わないなんて思ってしまったこと。ごめんなさい
僕は店員さんに心の中で謝った。
「でも、そーだなー。1番いいのは嬢ちゃんがこれだ!って決めるのがいいとは思うんだけどな!まぁ、わからんことが合ったら、声かけてくれよ!」
「わ、わかりました」
「おう!」
メイちゃんはお花を見て、
うー。うー。と悩んでいる。
「ねぇ、にーに!このおはながいいかな?」
「メイちゃんはこのお花がいいの?」
「うん!これがいい!」
メイちゃんはうすピンク色と綺麗な青色のお花を選んだようだ。店員さんに声をかけないとな…
「あ、あの…」
「おっ!決まったか?」
多分、様子を見ていてくれたのだろう。
僕がちゃんと声をかけられなくても、
気付いて近づいてきてくれた。
「こ、これ…なんですけど…」
「おっ!カンパニュラにしたのか!いいな!」
「このおはなはカンパヌラっていうの?」
「そうだぞ!カンパニュラって名前なんだぜ!」
「そ、そう…なんですね」
「風鈴草なんて呼んだりもするみたいだけどな!花言葉に感謝って意味もあんだよ!」
「かんしゃ?」
「おう!ありがとうって意味があんだよ!」
「メイね!ママとねーねにありがとうっていうの!」
「それならピッタリじゃねぇか!」
「うん!」
店員さんは綺麗にラッピングをしてくれて、
2人分用意してくれた。
メイちゃんが舞さんから預かったお金を出すと、
これだけでいいぜ!と千円しか受け取らなかった。
あれ?花束を二つも買ったのに足りるのだろうか?
「あ、あの…だ、代金が少なく…な、ないでしょうか?」
「あ?こんなちっちぇー嬢ちゃんから受け取れねーだろ?そう思ってくれんならよ!今度は兄ちゃんが買ってってくれよ!嬢ちゃんもまた買いにきてくれよな!」
「うん!メイね!またかいにくるね!」
「ありがとな!」
「あ、ありがとう…ございます」
「そうだ!兄ちゃん!ラーメン好きか?」
「え?…は、はい」
「それならよ!俺のダチがあそこのラーメン屋で働いてんだけどよ!それがうめーんだよ!もしよかったら、この花屋とあそこのラーメン屋をひいきにしてくれよな!」
「わ、わかりました」
「おうよ!嬢ちゃん!母ちゃんと姉ちゃんが喜んでくれたらいいな!」
「うん!おいたん!ありがとね!」
「いいってことよ!」
おいたんって年齢でもないんだろうけど…
「まいどあり!兄ちゃんも嬢ちゃんもまた来てくれよな!」
「うん!おいたん!またねー!」
「あ、ありがとうございました」
メイちゃんと手を繋いで公園に戻る。
人は見た目で判断してはいけないって、
あらためて考えさせられる人だったな。
花束を持ちながらメイちゃんと歩いていると、
メイちゃんは疲れてしまったのか眠たそうだ。
「メイちゃん。疲れちゃったかな?」
「ううん。だいじょうぶ」
やっぱり、疲れたんだろう。
「お兄ちゃんがおんぶしてあげるよ」
「うん」
メイちゃんをおんぶしてあげて、
花束を持ちながら歩く。
公園に着いたので、舞さんに連絡をした。
メイちゃんは僕の背中で寝てしまったようだ。
「もしもし、璃空くん?」
「あ、は、はい。公園に…戻りました」
「わかったわ。すぐに行くわね」
おんぶしながら少し待つとマンションから、
舞さんが公園に来てくれた。
「あら、芽衣は寝ちゃったのね」
「は、はい…歩き疲れたんだと…思います」
「芽衣とお花を買ってきてくれてありがとうね。もしよかったら、この間のお礼もしたいから、一緒に夕飯でもどうかしら?」
「い、いえ…お、お礼なんて…その…大丈夫です。家で母さんも…待ってると…その、お、思います…ので」
「そうね。突然だと璃空くんのお母さんがビックリしちゃうものね。それじゃあ、今度は夕飯にお誘いするわね。璃空くんの都合が合えばでいいから。いいかしら?」
「は…はい」
舞さんはメイちゃんをおんぶしてくれて、
花束を受け取ってくれた。
「芽衣は綺麗な花を選んでくれたのね」
「は、はい。カンパニュラ…というお花みたいです」
「そう。綺麗ね」
「メイちゃんが…お、起きたら…花言葉の…い、意味を聞いてみて…ください」
「花言葉?」
「は、はい」
「わかったわ。璃空くん、今日はありがとうね」
「い、いえ…ぼ、僕に…できること…ですので」
「それじゃあ、また連絡するわね」
「わ、わかりました」
舞さんはそう言って歩いて帰って行った。
僕は少しだけ疲れたな…と思いながら、
家に帰ってからバケタイのレベル上げをした。