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タカは結局、朝日奈結衣と日直を終わらせて、
一緒に職員室に日誌を持って行ったようだ。
「おー!リク!もう帰んのか?」
「そうだね」
「タカもユイユイと一緒に日直やってたな!」
「嫌々だったけどね」
「別にさー、ユイユイって悪いやつじゃなくね?何でそんなに嫌なのかね〜」
「タカは女子が苦手だからね」
「でもさー、タカって意外とイケメンじゃん!ちゃんと女子と話したりしたらさ〜、彼女とか出来そうじゃんか!」
「タカがそれを望んでるのかはわからないけどね」
「俺はさ〜、タカもリクにも彼女が出来たら、すげー嬉しいと思うんよね〜。だからさ!少しでも女子と関わってさ…彼女が出来なくてもさ!友達が増えたら嬉しいじゃん!」
「そうだね。僕もトラに彼女が出来たら、嬉しいって思うかな?でもやっぱり、僕は人と関わるのは苦手かな…」
「そっか〜。じゃあさ…俺って余計なことしてんのかな?」
「どうなんだろうね…。でも、トラは僕とタカのことを考えてくれて行動してくれてるんだよね?それなら、優しさだとは思うけど…いきなりだと、僕ならビックリしちゃうかな?」
「そうだよな…ごめんな。リク」
「ううん。僕のことを、タカのことを考えてくれて、ありがとうね」
「当たり前だろ?俺ら友達じゃねーか!」
「うん!でも、ちゃんとタカにも話しといた方がいいと思うよ。もしかしたら、タカは疲れちゃったかもしれないから」
「そうだよな…よしっ!俺はタカにちゃんと話してから、帰るわ!」
「うん。わかった」
「明日は3人でバケタイだろ?」
「そうだね。買ったら連絡してよ」
「おうよ!わかった!じゃあ、また明日な!」
「うん。また明日」
鞄を持って教室を出る。
靴箱で靴を履き替えて、歩いていると、
後ろから声をかけられた。
「待って!霧山くん!」
振り返ると篠宮里沙が近づいてきていた。
「霧山くん、今から帰るところ?」
「…え?あ、は…はい」
「そっかー!よかったら、一緒に帰らない?」
何でだろう?僕は1人で帰りたいのに…
「え…いや…その…」
「よし!じゃあ、帰ろっか!」
あー、この人歩きはじめたよ…
まぁ、帰り道が同じかもわからないから…
そう思っていたけど、同じ方向だったようだ。
どうして話しかけてくるんだろうか?
やっぱり、バケタイを買ったことを誰にも知られたくなくて僕が誰にも話していないのか探りを入れてきてるのかな?
それなら、大丈夫だって伝えたのにな…
「ねぇ、霧山くん。化け物退治だー!☆ってやっぱり、難しいんだね。私、やってみたけど全然でさ…どうしたらいいのかわからないんだよね…」
バケタイは初心者には難しいゲームだとは思う。
そもそも何でバケタイ買ったんだろう?
あんまり、女の子がしているイメージがなかったけど…
「買った時にさ、教えて欲しいってお願いしたでしょ?その話は覚えてる?」
「え、…そ、その…ですから、それは…誰にも話していませんので…」
「この間もそう言ってたよね?それってどういうこと?私はゲームを教えてほしいってお願いしたのに、誰にも話してないって…話が噛み合ってないんだけど…」
「え、え?…だ、だって…ば、バケタイを買ったこと…だ、誰にも言わないで欲しいって…思ったから…そ、そう…言ったんですよね?」
「え?私は本当にゲームを教えてほしかったんだけど…」
「え?…え?」
篠宮里沙はクスクスと笑っている。
「もしかして、霧山くんさ。私がゲーム買ったことを内緒にしててほしいから教えてって話しかけてきたんだって思ってたの?」
「え、あ、…はい」
「そうだったんだ。だから、この間もそう言ってたんだね!やっとで、謎が解けたよ…私は本当に霧山くんにゲームを教えてほしいって思ってるだけだよ?でも、内緒で教えて欲しいとは思ってるから…あながち間違いでもないんだけど…」
「そ…そうなんですね」
「だからさ!ゲーム教えてよ!ダメかな?」
何で僕なんだろう?
僕よりタカの方がバケタイに詳しいけど…
でも、タカは女子が苦手だから難しいか…
じゃあ、トラなら…うん。トラなら強行突破で行くな。
やっぱり、僕じゃなきゃいけないんだろうか…
「やっぱり…ダメ?」
「だ、ダメ…じゃ…ありますん」
「よかった!じゃあさ!連絡先交換しようよ!」
あー、きっと…ありませんって聞こえたんだろうな。
ありますんって曖昧な返事をしたのに…
でも、これで連絡先を交換しないわけにはいけなくなってしまった…嫌だけど…嫌だけど…
そう思いながら、連絡先を交換した。
「ありがとう!霧山くん!また連絡するから!ゲーム教えてね!じゃあね!」
篠宮里沙はそう言って、帰っていった。
僕は自分の携帯電話がいつもより少しだけ、
ほんの少しだけ重たく感じてしまった。




