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「おい!テメー!いま、何て言ったよっ!」
「あ?本当のこと言っただけだろ?」
教室の入口で喧嘩をしているようだ。
スクールカーストがあるならば上位に位置するであろう萩原優吾と、隣のクラスの後藤陽平が喧嘩をしているようだ。
「ありゃりゃ、喧嘩かね〜?」
「みたいだなー」
萩原優吾は竹下孝二といつも一緒にいて、
所謂やんちゃさんな人達だ。
隣のクラスの後藤陽平とも仲良くしている所を見たことがあった気がしたけど、何で喧嘩をしてるんだろう?
「何度でも言ってやるぜ?グズだってな!」
「テメー!優吾!久住のことをグズって呼ぶんじゃねーよ!」
「陽平だってグズって言ってただろ?なに、いきなりキレてんだよ?」
「あん時の俺はクソみたいなやつだったんだよ!それでもな!久住は俺のことをダチだって言ってくれたんだ!俺のダチをバカにすんじゃねぇーよ!」
「おい、優吾!陽平がグズとダチになったって本当だったんだな!マジでうけるんだけど!」
「後藤くん!喧嘩しちゃダメだって!」
萩原優吾と後藤陽平が喧嘩をしていて、
竹下孝二は笑っている。
そして、喧嘩の原因の久住慎吾は後藤陽平を止めようとしているようだ。
どうやら久住慎吾はグズと呼ばれていたようだ。
いじめかな?いじめなんだろうな…
なんか、嫌だなぁ…
「萩原くんも後藤くんもやめなよ!」
「蓮は黙ってろっ!」「田中は黙ってろっ!」
クラスでイケメンと言われている田中蓮が喧嘩を止めようとしたけど、同じタイミングで黙ってろって言われちゃったなぁ。
後藤陽平は萩原優吾の胸ぐらを掴んだ。
「今度、久住のことグズって呼んだら、マジで許さないからな!わかったかっ!」
「あ?なんか陽平さ、チョーシ乗ってんじゃねぇの?」
「んだとっ!?」
「そこ邪魔なんだけど、退いてくれるかしら?」
「ああっ?」「んだとっ?」
教室に入ろうとしている白雪姫花が静かに邪魔なんだけどと2人に話しかけた。
「別に喧嘩を止めるつもりなんて、さらさらないのだけど。ここは教室の入口で喧嘩をする場所ではないのではないかしら?邪魔なの。退いてくれるかしら?」
「おい!白雪!テメーが後ろの扉から教室に入りゃあいいじゃねぇか!」
「どうしてあなた達の為に、姫がわざわざ遠回りをしなきゃいけないのかしら?ここから入った方が席に近いのだけど。それにこうして話している無駄な時間も終わりにしたいと思っているのだけど…もういいかしら?」
後藤陽平が手を離して、
白雪姫花は何も言わずに自分の席へと座った。
「後藤くん、もういいよ。俺と何の関わりもない人達が俺を何て呼ぼうが気にならないよ。だから、もういいだろ?」
「久住…本当にいいのか?」
「大丈夫だよ。俺は何も気にしないよ」
「あ?グズのくせに何言ってんだ?あ?」
「そうだぞ!優吾のことバカにしてんのか?」
「バカになんてしてないよ。萩原くん、竹下くん。ただ人の名前を覚えることはできない人達なんだなって思っているぐらいかな?」
「おい!テメー!」
久住慎吾がそう言ったら後藤陽平は笑った。
「クッ…ははは!そうだな!久住の言う通りだ!優吾…悪かったな…喧嘩ふっかけてよ」
「おい!お前らふざけてんのかっ?」
「ふざけてねーよ」
萩原優吾と後藤陽平はお互いに睨み合ってから
もういい、行こうぜ孝二と教室から出ていった。
「なんとか喧嘩もおさまったのかな?」
「みたいだなー」
「喧嘩なんてよくないよね〜」
「そうだなー。まぁ萩原も後藤も好きにやってていいんじゃね?別に俺らに関係ねーし」
「白雪さんもすごかったね〜。いつもあんな感じだから、ユイユイも何て話しかけていいか悩んでるのだよ!」
「うーん。俺はあんま、気にしたことなかったけどな〜」
「トラくんって…以外と友達以外には冷たいのかな?」
「そうかー?普通じゃね?」
喧嘩がおさまったのはいいことだけど…
1番の被害者は田中蓮だろう。




