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この作品を読もうと思ってくださったこと
とても嬉しく思います。
お楽しみいただければ幸いです。
僕は隠キャなのだろう。
それを聞いてどう思うだろうか?
ふ〜ん。そうなんだ〜
え?隠キャとかキモ!マジ無理なんだけど!
隠キャとかうける〜
様々な対応があるとは思う。
だが、考えてみてほしい。
隠キャとはただのジャンルでしかないのだ。
隠キャでも面白い人はいて、優しい人はいて、
逆に人を傷つけてしまうような人だっている。
それは、陽キャだって一緒なのではないだろうか?
だから、隠キャにも陽キャにも、
人それぞれ個性があるということを忘れてはならない。
もしかすると、世の中には僕のことを隠キャじゃないと思う人だっているのかもしれない。
でも、僕は僕のことを隠キャだと思っている。
僕は忠三高校に通う、高校2年生。
高校創設者の恩人の名前が忠三朗さんだったらしく、
恩人の名前をこの世に残したかった。
恩人の事を忘れない為に…と言う思いで、
忠三高校と名付けたようだ。
校長先生がそういう話を教えてくれたが、
周りの生徒達は高校生なのに中3って意味わかんね!と言う人や、忠三の2年生です!と言って、中3の2年生?と聞き返されたことがあると言う人もいるらしく、笑い話にされることが多いらしい。
多いらしいというのは、
実際に僕が聞いたわけではないから。
僕には友達と呼べる人は2人しかいない。
そして、僕は学校が好きではない。
学校とは魔の巣窟である。
何を考えているのかわからない、ただ同じ年齢と言うだけの人間が、同じ空間で集団生活を送らなければならない。
社会には上司や部下など上下関係が存在しているのかもしれないが、学生にはそんなものは存在していない。
存在していないはずなのにも関わらず、目には見えない上下関係のようなものが存在している。
それをスクールカーストと呼ぶのだろう。
そういう意味では社会の縮図と言われる理由もわかる。
何故、僕がこんなことを思っているのか?
それは学校に行くのが憂鬱だからだ。
たしかに、高校は義務教育ではない。
行かないという選択肢もあったが、
母と兄が高校には行った方がいいからと説得され、
忠三高校に通うことになったのだ。
あー、考えてたら高校の正門についてしまった。
今日も魔の巣窟での1日がはじまるのか…
そう思っているとクラスメイトの田中蓮に
挨拶されてしまった。
「霧山くん!おはよう!」
「…お、おはよう…ございます」
田中蓮は僕の返事を聞く間もなく、
爽やかな笑顔で挨拶しながら歩いていく。
あんな風に大勢に挨拶して楽しいのかな?
自分が世界の中心だとでも、思っているんだろうか。
田中蓮はクラスで1番のイケメンと言われているらしい。だが、僕は本当のイケメンを知っている。
だからだろう、そんな話を聞いたところで、
へー、そうなんだ…としか思えない。
きっと本当のイケメンを見てしまったら、誰もが世のイケメンと呼ばれている人達のことなんか霞んで見えてしまうだろう。僕はそう思っている。
靴箱で靴を履き替え、階段を上がる。
僕のクラスは2階にある。
あー、教室についちゃったよ。
扉を開け、自分の席へと歩いていく。
僕の席は窓際の1番後ろの席だ。
「よっ!リク、おはようさん!」
「今日は少し早かったんじゃないか?」
「そうかな?トラ、タカ、おはよう」
僕が友達と呼べる2人だ。
高校に来てよかったと思える一つは、
彼らと友達になれたことだろう。
おはようさん!と手を上げながら挨拶してくれた友達。
彼の名は一之瀬泰雅。タイガだからトラという安直なあだ名だが、彼はカッコいいじゃん!と気に入っているようだ。そして、少し早かったんじゃないか?と時計を見ながら聞いてきた友達。
彼の名は永森鷹也。タカヤだからタカという、これもまた安直なあだ名だが、呼びやすくていいだろ?と気にはしてはいないようだ。
「てかさ!笹原さんと安村さんの噂聞いたか?」
「いや、知らないけど」
「ほら!学校を休んでたことあったじゃん!あの時さ!実は失踪事件に巻き込まれてたらしいぜ!」
「そうなんだ」
「トラ、それは本人から聞いたんだろうな?」
「いや、噂だよ!噂!」
「トラはすぐに噂を信じる…本当かどうかを確かめてもいないのに信じるのはどうかと思うけどな」
「んだよ!タカ!」
「まぁまぁ、2人とも…タカの言う通りで噂をすぐに信じるのもよくないけどさ、トラみたいにちゃんと人を信じるってことも大事じゃないかな?」
「まぁ…そうかもな。トラはバカみたいに信じるけどな」
「タカは人を疑いすぎなんだっての!」
「俺は信頼できる人間しか信じないだけだが」
「あ?俺のことは信じられないってのか?」
「タカは噂は信じないって言ってるだけで、トラのことを信じないって言ってるわけじゃないからね」
「そうなのか?」
「どうだろうな?」
はぁ…相変わらず、仲が良いようで…
教室の扉が開き、高橋先生が入ってきた。
「おーい!お前ら〜HRはじめっぞ〜」




