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健太の日記  作者: 蔓草登上
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鬼空のお父さん登場

真正しんせ 寿樹じゅき神社で御師おんしと呼ばれる宮司の仕事をしている。

真正しんせ 鬼空きくう双子の片割れ、心を男として生きている。

弦賀つるが 隼人はやと双子の研究員、文部科学省から来ている。

坂受さかうけ 健太けんた中学の時に出会った友達。寿樹が好きである。


挿絵(By みてみん)

2020/4/20



 忙しい日が始まった。

寿樹じゅき弦賀つるがさんも朝早くから姿を消している。



 健太もいつもどうりの段取りでせかせか働いている。

忙しくても、今日も夕陽を見逃さないようにしないと・・・。

健太の心の中で決めていることである。

 

 寿樹が夕陽は見えない曇りでも毎日夕陽はあるのだという言葉に応えたくて、いや、寿樹の言葉に応えられる男になりたかった。


 

 勇ましく玄関を疾風のごとく通り抜けて行った髭の大きな男が入って来た。

誰だっけ?


 そして、健太を召使のように扱う。

この傲慢な態度、一の間で鬼空と対話している。まさしく鬼空のお父さんだと思い出した。

 

 健太がお茶を出そうとしていたら。

「あの親にお茶なんかいらないよ。」

と言って出て行ってしまった。


 二人にしないで欲しい!!

鬼空と気性がそっくりで、直ぐにキレて怒鳴り散らす。

身体も大きくて髭が特徴。


 宗教から神社・寺院を総まとめにするスポットに付いていて、国と繋がりがあるからお偉いさんばかりを連れてやって来る。

 母親とは直ぐに別れてしまったらしいけど、全て真正しんせ家の血族で繋がっているので近くにいるらしい。


 なんだろうな、この血族みんな同じ顔してるんだよね。

御師おんしは江戸時代から受け継がれてきた、由緒正しい神童。御師とは後からついたものだ。

 その裏には現代を生き抜く為の工夫がこの父親、真上しんじょう様によて造られてきた。

 

 鬼空の父親にお茶を出すと、

「なんだ?お前どっかで見たことある顔だな。」

ドキッとした。


「はい、この度新型コロナウイルス感染患者の受け入れにより、お手伝いに参りました。」


「ここに来たら、秘密厳守・他者に洩らすことは一切してはならないからな。」

「はい、良く存じております。」

一度、怒鳴られた事があるので、カチカチになっている。

 秘密厳守し過ぎて人手が足りなくて泣きそうだけど、あのお偉いさんの顔ぶれを見たら、なるほどと思う。

 

 たとへ寿樹と結婚話がうまく行ったとしても、この父親は絶対反対するんだろうな…という頑固で恐いお父さんである。


 父親はお茶をすするとスッと立って、お抱え運転手に声を掛けるとまた何処かへ行ってしまった。




 テレビ前のソファーから白い手がうなだれていた。

窓の外からの日差しに透けるように細くて長い指がキレイなシルエットを描いている。


 胡蝶蘭か何かの花を連想させる。

「キレイな指。」


 鬼空がビクッとしてソファーから起き上がった。

気がついたら手に触れていた。

「なんだよ。健太。」

「何もしていない奇麗な指だなって思って。」

「嫌味か?」

「え?」

「俺が掃除・洗濯・食器洗いしないで寝ているからか?」

わかってるんじゃん。


「おまえが真正家の秘密をしらなければ、いつでもお払い箱なんだぞ。」

「なにその言い草!」

急に悲しくなった。


「僕は真正家の秘密を厳守出来る人間として選ばれたんだと、思って頑張って働いてきたのに、鬼空のお父さんに何て言われたか知らないど腹いせもいいところだよ。」


鬼空が健太の胸倉を掴んだ。

「なんだと!」


「ホラ、お父さんそっくりだ。」

気がついたら鬼空に殴り飛ばされていた。


 食卓のテーブルと椅子の隙間に挟まっていた。

「親父と一緒にするな。」

罵声を飛ばしながら

鬼空が倒れ込んだ健太の元に歩み込んできた。


「俺の一言でお前なんかどーにでもなるんだぞ!」

殴られた頬より、テーブル下の木にぶつけた後頭部の方が痛かった。

「それは、御師を務める寿樹のセリフだよ。御師が嫌でアメリカへ逃げた鬼空の言うセリフじゃあない。」


鬼空の動きが止まった。


 直ぐにカッとなるのは、父親譲り。血液型も一緒だ。

でも、それ以上に彼女を取り巻くのは性の不一致。心と上半身だけは男の子なのに肝心なモノが無い。中身の精巣は有る。ほぼ男の子だからこそ、変なイラダチがやって来る。

僕は鬼空のこのような状態を、発作と勝手によんでいる。


「俺を殴れよ。」

「?」

「俺が悪かった、殴った分殴れ。」

「で、・・できないよ。」


「このへなちょこがぁ、男なら殴り返せよ!」

「じゃあ、殴る代わりに。ギュってさせて。」


 新型コロナウイルスの為、仕方なく戻って来た鬼空。

色々自分の中で葛藤があったんだと思う。


 本当は自分が一番よくわかっていたんだ、わかっていて、それに押しつぶされそうになって過ごした日々だっただろう。

 父親に出生届を出してもらえず、学校にも行かしてもらえない、国への研究材料として提供されて人格拒否された生活なんて僕だったら、とっくに自殺しているかもしれない。


抱きしめた鬼空の背中が思っていたほど大きくは無かった。


守ってあげたい、健太にはそう 思えた。




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