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異世界転生、のち憑依




 石の力かどうかは分からない。

 けれども、転生した私は日本での人生を覚えていた。

 

 公爵家の末っ子として生まれた私は男性で、最先端の教育と公爵家の素晴らしい遺伝子のおかげで、剣も魔法も優れた規格外の軍人となった。

 そして、世界を壊そうと現れた存在――日本語に訳すなら魔王だろうか――と戦うこととなった。

 そして、私は魔王を倒した。

 彼は怪しい瘴気しょうきのようなものをまとう大剣を持っており、それに触れてはいけない、と私は直感した。

 だから、回避を続け、隙きを見せることで急接近。

 腕を切り飛ばして、大剣を排除。

 一瞬、動きを止めた魔王からさらに首を跳ね飛ばし、念の為にと胸を一突き。

 私は魔王に勝った――はずだった。


「お前も道連れだ」


 魔王の身体から剣を引き抜き、息をついたタイミングで声がした。

 首を跳ね、心臓を貫いた。

 それにも関わらず、瞳孔の開いた目の下で魔王の口が動いた。

 その声に意識を取られた、ほんの一瞬。

 首へと視線をやったコンマ数秒が文字通り、命取りとなった。


 ――もう半歩。たったの数センチ。


 私は背後から飛んできた、魔王の腕の持つ大剣を避けきれなかった。


***




 私は、魂を弾き飛ばされたんだと思う。たぶん。

 それがあの大剣の持つ力だったのかもしれない。

 背後に危険を感じて総毛立ち、とっさに剣で防御しようと身体が動いた。

 振り向きざま、見えたのは魔王の腕が持つ大剣。

 しまった、と思う間もなく、全身を衝撃が貫いた。

 倒れている自分と魔王の姿を見た気がする。

 そして、すごい勢いで吹き飛ばされて、何かにぶつかったような衝撃。


 気がつけば、私は王子だった。

 一週間ほどは、事故にあった王子が記憶喪失になった、と大騒ぎになった。

 だが、幸運なことに「魂の記憶」と「脳が蓄えた記憶」はどちらも消えることなく、王子の人生を私はつつがなく引き継ぐことができた。

 どうやら、王子は事故によって魂が身体から抜け、そこに身体から吹き飛ばされた私の魂が入り込んだようだった。……弱っているだけだったところに、私がとどめを刺したわけではない、と信じることにしている。

 

 現状を理解した私が真っ先に思ったのは、公爵家で鍛えられていて良かった、ということだ。

 言葉も習慣も違う、魔王のいない世界。

 だが、貴族としての立ち居振る舞いはだいぶ応用が効いたし、脳や身体の記憶をその都度引っ張り出す、ということをしなくて済んだ。

 まぁ、他人の身体を動かすのは、公爵家の男児として経験した第二次性徴なみにしんどかったが、筋トレして軍人らしい身体になれば違和感も減るだろう、と楽観している。


 この世界は魔王がいないにも関わらず、魔法が重要視されている。

 いや、いないからこそ、だろうか。

 魔王がいる世界では、とにかく現場の下っ端たちを武器や魔法で強くすることが求められていた。だから、勇者という存在が平民からもたびたび現れた。

 そういった人間の忠誠を得られた者が王となり、世界を支配していたのだ。

 また、王族は聖獣との契約によって守られていたので、王家の血を引き、どれだけ優秀な臣下を得られるかに重きが置かれていた。


 だが、この世界には魔王はいない。

 人間同士で争うばかりだ。

 聖獣もいない。

 その絶対的な守護がないためか、平民には魔法の知識を与えず、貴族たちが独占している。

 王族だけが知っている知識もある。

 だが、貴族の家ごとの特別な魔法、というものはない。

 そんな独占をすれば、まず、その家が王家に取り潰される。

 貴族と平民とで対立させ、なおかつ貴族同士で和を乱さないよう牽制をしあい、うまくバランスをとっている、と言えるだろうか。

 この国の王家はうまく中央集権国家を運営しているようだ。


 さて、そんな貴族同士はお仲間で、仲良く、魔法の知識は共有しましょう、というこの世界。

 ここにはある学術組織、日本語に訳すなら「魔法学園」なるものがあった。

 第二次性徴がだいたい終わる十六歳。身体と魔力の成長がだいたい落ち着いた、年頃の貴族の男女を集めた学園である。

 教師陣は高校教師というよりは大学教授に近く、研究を行いつつ講義を行っている。


 さて、そんな少女漫画やライトノベルのような学園で、王子となった私は頭を抱えていた。

 問題は二人の女性。

 王太子の婚約者である公爵令嬢カティナベルと、男爵令嬢ルルリアナ。

 そして、この体の持ち主だった王太子、フィルメリアとの三角関係である。


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