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terror:シラオニヒメ(1)



 世界は変わっていった。

 わたしだけが残された。


 死なないわたしだけが残された。


 隣人を愛する感情は不要だ。


 増えすぎた人間が、ついに地上から溢れ落ち、海の中の球体状のシティで暮らすようになるに至ったこの世界では、(ラブ)はすっかり希薄になってしまった。


 その事実に当たり前のようにみんな鈍感だ。

 他者の痛みに対して、暗愚になっていることを、気にも止めていない。

 

 わたしだけだ。

 わたしだけがまだ、他者の傷に涙を流すことが出来る。

 わたしだけが、人をブツことに、脅えることが出来る。


 なんという、アイロニー。


 つまりは、つまりわたしという『鬼』は、生まれるには早すぎたと言うこと。


 だから、……わたしという矛盾存在は、殺して貰うことすらも難しい。


 『鬼ごっこ』は終わらない。


 手を伸ばす。

 病的に白い、もう何十年と経ても変わること無い少女を主張する幼い手は、分子モデルみたいに結合する人工海中都市『ブルースフィア』のエリア27へと続くパイプレールの外に広がる深海の闇をなぞっていく。


「願わくは、素敵な同胞に(まみ)えますように」

 

 海中列車の車上にて、白い鬼は願ったのだ。



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