兄妹愛で構わないことにしよう!
粗末な宿の一室で、二人の若い男女が、寝床の藁の上に、全裸で寄り添って座っていた。後悔し、悩んで、逃げ道を必死に探しているような表情だった。女は二十歳くらいの長身の長い黒髪をのばした、非常に魅力的なスタイルの細面の美人だったが、スマートだが鍛えられた筋肉質の躰でもあった。男は二十歳代半ばくらいの長身で、ガタイがでかくはなく、マッチョでもなく、スマートであるが、筋肉は鍛えられたものだという感じで、髪の毛は女と同じ黒髪だった。男としては長く伸ばしている。優しい、整った顔立ちだった。
「やっぱり不味かったよね。でも、ここは日本じゃないし、日本でないどころか、異世界、私達にとっては、だから…、でも、やっぱりだめなことになっているか…、生物学的には、…どうしよう、お兄ちゃん?」
救いを求めるように、女は隣の男の方に顔を向け、見上げた。二人の目があい、目をそむける衝動を押さえて、決心したように口を開いた。
「なあ、多分あの時、僕らは死んだんだ。あれから多分、ここで過ごした10年間より長い時間が過ぎたはずだ、あの、記憶が定かではなくなっているけど、時間が分からない特訓をさせられたことも含めれば。外見は、この世界に来た時から変化してないけど。でも、死んだはずの時より大人になっていて、お前はより魅力的になっていて、いや、前から誰よりも魅力的だったけど、さらに魅力的になったというか…」
「もうお兄ちゃんたら、なにを言っているか分からないよお。」
そう言いつつ、赤くなりつつ、それでいて嬉しそうだった。
「だから、基本には外見は変わっていないし、中身や心も僕達は変わっていない、兄妹のままだ。お前は、大好きな、愛している妹だ。」
「お兄ちゃんは、私が愛している、大好きなお兄ちゃんのままだよ。」
彼女はそう言って言葉を待った。彼は、意を決する表情で、口を開いた。
「そういう意味では、変わっていないけど、僕は最強と言われる勇者で、お前は魔神と言われる魔王で、お互いに、その名のとおり人間離れした力を持つ躰の持ち主になっているわけだ。だから、肉体的には、全く別の存在になっていて、単純に肉体的には兄妹関係はないと言うことでいいんじゃないのかな。」
最後は、同意を求めるかのような、か細くなっていた。
「そうよね!」
彼女は、勢いよく言った。自信はなかった。だからこそ余計に力を込めて言ったのだ。
「そうよ!お兄ちゃんの言う通りよ!私達は兄妹だけど、兄妹ではないのよ、ね?」
こちらも最後は同意を求めるようにか細くなったのは同様だった。そして、彼は自分の背中を自ら押すように大きく首を縦に振った。それに合わせて、彼女も何度も頷いた。もう二人にとっては、もうどうでもよくなっていた。これで結論、決定にしてしまおうと思った。そう割り切ると、どちらともなく唇を求め、強く唇を重ね、互いの舌を絡ませ、強く抱きしめあった。そして、再び藁のうえに、彼は彼女を押し倒し、彼女は自ら身を横たえた。部屋の中に喘ぎ声が響きわたるまで時間はかからなかった。