ラブラブ兄妹と幼馴染 著・小倉桜
「おっでかっけおっでかっけ~♪」
「あ、あそこのお店もいい!」
右手を繋ぐ天使は、素直に出掛けることを喜んでいるかわいい夢乃。
左手を繋ぐ天使は、まだ開店していないお店をあれこれ眺めているかわいい楓。
天気もよく、まさにお出かけ日和といえよう。
「お兄ちゃん、聞いてるの?」
「あ、ごめん。何?」
「朝ごはん、あそこにしよ?」
「パン屋か」
楓が指す方向を見ると、おいしそうなできたてほかほかのパンが並ぶお店があった。
店内はさほど混んでおらず、すぐに食べることができそうだ。
「夢乃はいい?」
「うんっ!」
夢乃はいい子だな~。
「じゃあ、入ろうか」
「どれにしよっかな~」
楓は目をキラキラと輝かせながら一つ一つパンを見ていく。
一方夢乃は俺の隣から離れようとしない。
どうしたんだろ?
「夢乃、どうかしたか?」
「んーん。どうもしてないよ?」
「パン選ばないのか?」
「にぃにと一緒のやつにする!」
かわいいやつめ~このこの~。
「お兄ちゃん!」
「わっ。何だよ……?」
夢乃をなでなでしていると、楓がいきなり大きな声をあげた。
びっくりした俺は、恐る恐る用件を尋ねる。
「お兄ちゃん、私はこれが食べたいな~」
「ああ、いいぞ~」
なんだ、決まっただけか。
びっくりした。
楓がパンを決めたので、俺も急いで決める。
夢乃は宣言通り俺と同じものを選んだ。
会計をして、席に座る。
「いただきます」
「「いただきます」」
俺に続いて二人の義妹も感謝の言葉を述べる。
一つパンを手に取り、口の前に運ぶ。
ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐり、食欲は急速的に加速する。
はむっ。
「おぉ……」
「ん~♪」
「おいし~♪」
楓も夢乃も嬉しそうにパンを食べ続ける。
これは本当においしいな……!
「はい、お兄ちゃん」
「ん? どうした?」
「一口あげるっ」
「え!?」
そう言って楓は自身が食べていたパンを差し出してくる。
「その代わり、お兄ちゃんのも一口頂戴♪」
「まぁそのくらいならいいけど……」
「やった」
ということなので、目の前に差し出された食べかけのパンに視線を移す。
楓が食べていた途中のパン……。
俺、通報されないよね!?
「早く食べてよお兄ちゃん」
「あ、ごめん」
いつまで眺めてるのよと言ったような目で見られているので、諦めて食べることにする。
こちらも見た目からしておいしそうである。
俺は恐る恐る口を開け、ぱくりとパンに齧り付いた。
「んっうまい!」
「でっしょー!」
ふわっとしたパンが口の中で溶けていくかのようだ。
とても香ばしくておいしい。
「次はそっち食べさせて~」
「はいよ」
俺は自分が食べていたパンを楓の口元まで持っていく。
楓はキラキラした瞳で、すんすんと匂いを嗅いだ後パンにはむっと齧り付いた。
「ん~おいしい!」
一口食べると楓は満足そうに自分のパンを食べ始めた。
「あ、駿……」
その時、誰かが声を掛けてきた。
声の聞こえる方を向くと、そこには見慣れた顔があった。
「あれ? 穂乃果?」
「こんなところで会うなんて、奇遇……」
「そうだな。穂乃果も朝ごはんか?」
「そう……。ここのパン、おいしいから……。一緒、いい?」
「もちろんいいよ」
反対側には楓と夢乃が座っているので、俺の隣の席を促す。
この子は綾瀬穂乃果。
俺の幼馴染で同級生だ。
小さい頃から一緒に遊んだりしていて、今も交流がある。
容姿が容姿なので、穂乃果はよく中学生か小学校高学年に間違えられる。
所謂、ロリ体型というやつなのだ。
低身長で胸も控えめ。
全体的なシルエットが小さい女の子なのだ。
本人は結構気にしているようだが、俺はそこも個性だと思っている。
「穂乃果、ここのパン屋にはよく来るのか?」
「結構来るかも……。これ、おすすめ」
「お、そうなのか。今度買ってみようかな」
「うん……」
そんな穂乃果だが、ほかにも個性的な部分がある。
感情が全くと言っていいほど顔に出ないのである。
それでも感情がないわけではない。
しかし、長い付き合いの俺だからまだなんとかわかるものの、初めて会った人たちなんかは穂乃果が何を考えているのかさっぱりわからないだろう。
「穂乃果お姉ちゃんまた現れたね!」
そんな穂乃果をびしっと指差す楓。
この二人はなんだか出会ってから顔を合わす度にいつも喧嘩している気がする。
「楓ちゃん……。おはよう……」
「おはようございます」
「夢乃ちゃんもおはよう……」
「おはよーございます!」
そこは礼儀正しいのな。
お、夢乃はもう食べ終わってるな。
「こほん。お兄ちゃんは渡さないよ!」
「む……。それは認めない……」
夢乃はえらいなぁ~。
と、またなんか喧嘩してるっぽいな穂乃果と楓は……。
これから買い物もする予定みたいだし、どうなるのやら……。
第二走者だったので、どういう形で来るかドキドキしてました。
結果、伏線を張られるという形でバトンを渡され、もう無視していきなり「しかし、その日は何事もなく二年が経過した……」とか書こうとも思いました(笑)
そして内容ですが、トップバッターが趣味全開と来たので、私も趣味の子を投下しました!
やはりロリ体型の無表情系女子高生(仮)は最高だぜ!
これからもそれぞれの趣味が出そろうハチャメチャな展開が待っている予感がします(笑)
次の自分の番が、怖くて楽しくてドキドキです!