シスコン兄とブラコン妹の朝 著・きり抹茶
「お兄ちゃん起きてっ!」
藤野駿佑の朝は早い。
日曜日の午前七時。休日にも関わらず俺はとある人物に叩き起こされようとしていた。
「楓……。あと五分だけ……」
「駄目っ! いつもそうやって二時間も爆睡するじゃん」
「ごもっともです……」
重たい瞼を半分だけ開ける。傍らには風船のように頬を膨らませている長岡楓がいた。今日は普段より幾分ご立腹のご様子である。仕方ない、二度寝は来週に持ち越すとしようか……。
「私、お兄ちゃんに買ってほしいモノがあるんだけど」
「そうか。あまり高くなければ考えてもいいぞ」
「本当!? じゃあ…………。彼氏に渡すプレゼントを――」
「なんじゃとぉぉぉぉ!?」
思わず飛び起きる。勢いが良すぎてフラフラと目眩がした。
「ははっ、目が覚めた? でも今のは冗談だから。お兄ちゃん以外の人を彼氏にするなんて私嫌だもん」
「そ、そうか……。ふぅ…………良かった」
楓は俺の大切な妹。小学三年生というまだまだお子様な年齢ながら、巧みな口頭テクニックで俺を惑わすことがある小悪魔系な女の子だ。
楓は父の再婚相手の連れ子である為、苗字は違うし血も繋がっていない。だが俺は楓を実の妹同然のように溺愛している。
可愛い。楓は凄く可愛い。「お兄ちゃん大好きっ!」なんて甘えて抱きつかれた日には俺は幸せ過ぎて気を失ってしまうだろう。実際、何回か経験しているから気をつけねばならないのだが。
そんな相手なのだから彼氏を作るなんて以ての外だ。もちろん楓が心の底から好きだという人が現れれば話は別だが、兄である俺の目は厳しいだろう。亭主関白な男のように和服を着てどっしりと構えながら「妹はやらん!」と言ってみたいものだ。
「それで、今日はお兄ちゃんと一緒に行きたい所があるの」
「今日も、だろ」
「細かい所はどうでもいいの! 夢乃も下で待ってるんだから、早く着替えて降りてきてよね」
「はいはい……」
日曜の朝だというのにドタバタと俺を急かし、部屋から出ていく楓。休日は大体このような光景である。毎週俺を連れ回しては上目遣いで欲しい物をねだり、俺の財布は月末につれてスリムになっていくのだ。
一見すると生意気な妹に思えるかもしれないが楓は可愛い。強がっている時は照れ隠しをしているだけで、本当は全力で俺に甘えたいのだと思う。
そんな姿が垣間見えるから俺は楓を憎めないのだ。もう可愛すぎ。シスコン呼ばわりされても構わない。
大きく伸びをしながら特大の欠伸をこしらえる。さて、今日はどこへ連れ出されるのやら。
期待と不安が葛藤する中、俺はクローゼットの扉を開けるのだった。
◆
「にぃに、おはよ!」
リビングに入ると天使のような声が俺を出迎えてくれた。
目の前で満面の笑みを浮かべているのは長岡夢乃。好奇心旺盛で元気な五歳児だ。楓の実妹であり、俺との関係は義兄妹となるのだが、夢乃も楓と同様に溺愛している。
俺をにぃにと呼びながら懐いてくる姿は正に天使。彼女の無邪気な笑顔に俺は毎日癒されているのだ。
「おはよう…………って服が裏返しになっているぞ」
夢乃が着ている桃色の半袖ワンピースが表裏逆になっている。どうして気付かなかったと問い詰めたいが相手は幼女なのでそこはご愛嬌。
「あ、ほんとだ! にぃに、ぬがせてー」
「はい、じゃあバンザーイしてねー」
夢乃が両手を上げたところを見計らって、スカートの部分から重力に逆らうように持ち上げて脱がせてやる。
すると、背後で見ていた楓が不満気な顔で俺に――
「夢乃ばっかりずるーい。私もお兄ちゃんに服を脱がせてほしいなー」
「お、おま、何言ってんだよ!?」
楓は小学生なんだから自分で着替えなさい。それに、楓は多少なりとも体が発達……してるかもしれないしな。
「あれ、お兄ちゃんの顔赤くない? もしかして……私のカラダをそんな風に見てたの!?」
「見てねぇよ! というか、そういう汚い言い回しを使うんじゃありません」
「ふふ、お兄ちゃん照れてるー。そんなに見たいなら……一緒にお風呂入ろうよ!」
「勘弁してくれ。流石にそれは母さんに殺されるわ」
仮にも両親と同居しているのだ。楓の甘い誘惑に乗るわけにはいかない。下手したら警察のお世話になってしまうかもしれないからな。
それから夢乃の服を着させて一段落。すると楓は両手を腰に当てて高らかに一言。
「お兄ちゃん出掛けよう!」
「どこへ?」
「出掛けてから決める!」
「なんじゃそりゃ」
今日は随分と曖昧なプランだなおい。普段は遊園地に行きたいだの買い物したい等と言ってくるのだが……。とうとうネタ切れか?
「夢乃はどうする? 行きたい場所はある?」
「にぃにが一緒ならどこでも良いよ!」
そうかそうか。夢乃は偉い子だなぁ。よしよし……。
「とにかく家を出ようよお兄ちゃん。時間は待ってはくれないよ!」
「分かったから。じゃあ出掛けるぞ」
今日もいつも通り三人でお出掛け。だが俺はあまり良い予感がしなかった。今日は何かが起きそうだと、直感がそう訴えるのだった。
トップバッターということで、私の趣味全開になってしまいましたがよろしかったでしょうか(笑
小悪魔系ロリは外せないんですよね。それも完璧じゃなくて時々ドジをかましたりデレたりすればもう悶絶級です。
以降もロリコンの権威達によって物語が紡がれていかます。ハチャメチャな展開に期待しましょう!
きり抹茶