お散歩に出て
春になるとなんだか落ち着かなくそわそわします。この頃、特に、意味もなくお散歩と称して出歩いてたように思います。
「夜明け」
目の前に
姿なき声の啼き渡る
紫色の神秘境
すぐに白々しい朝がやってくる
悲しみの涙がしっとりと
世界を包み込む
遠く東の空の
睡眠不足の春の眼
悲しみの上に投影されるように
ただ徒労の春と
時の流れの重さがひとつ
「時の流れの歩みには」
時の流れの恋人は
空の青さと、海の青さ、そして
木の葉の裏のカタツムリ
「山歩きに想う」
じっと耳を澄ませていると
山の小道や森蔭から
呼び声が聞こえてくる
それでなくとも
魂が放浪を欲しているのに
自然、体が動き出し
のんびりと、のんびりと
山道を歩いていく
タンポポも、スミレも、レンゲも
もうすっかり春の空気
どこからか甘いさえずりが流れ来る
枯れ草の間からつくしんぼが伸びあがり
澄んだ水面にはメダカが泳ぐ
森の小鳥たちよ
この静かな欠伸の出そうな春の日を
魂の安息の地を
鋭い嘆きで乱さないでおくれ
春の日に狂わんとするこの心には
森の中の古池は緑過ぎるんだ
まわりの緑も
清浄すぎる
意識は遠くの町の景色を背景に
霞と戯れる
大きく手を広げ空に舞うように
「山道に溶け出す心」
急に山道を歩きたくなって
部屋を抜け出して・・・
スミレ、タンポポ、ツクシンボ、レンゲの花が
溢れそうな道を行く
森の小鳥も
目ざといミツバチも
みんな春を見つめているのに
魂を引き留めておくのはできないよ
うらうらと、うらうらと
森や林を彷徨い歩く
緑の池をかすめたり
竹藪を突き抜けて飛び回り
霞とともに空に散る
求められた日常のノルマもいいけど
春の牛舎もいいもんだ
山の鶏舎の黒犬の寝そべる姿もいいもんだ
桜の花もいいもんだ
「山歩きの思い出」
深い緑の古池に
ゆったり映る山裾の
桜の木々が眼に染みる
池の水面に映りくる
過去の桜も懐かしい
心の中の春の日よ
この後、もう少し、彷徨うことになるかも・・・




