雨の詩
春になると、たびたび見舞われますが、思うところがありますか?
「春の雨」
時の流れの中の
乾燥した世界に訪れる
乾いた歴史の喉を潤し
潤いを欲する心を満たすのか
春の雨
精彩を失った乾いた葉の
目には映らぬ傷を癒すためか
それとも
冬の眠りを安らげる気使いなのか
春の心の不思議さよ
柔らかい光に満ちていたのに
あんなに空が青かったのに
星の瞬きが優しくなったのに
菜と、草と、木と、乾いた心に
暖かな湿った空気と
乳色の光と
少しばかりの神秘境の霧と
黄色い太陽の顔を見せる
冬の眠りを守り
陽炎を燃え立たせる
そのためだけか
ただ
なにもいない歴史の
また一つの春の徒労
「雨」
血色の衣をつけた影の彷徨う世界
時に無を見つめる眼が光る
血色を流すそのためか
雨が降る
はるか
宇宙のかなた
涙があふれて、零れてしまったか
「雨」
雨粒の落ちてくる
灰色の光に満たされた空を見上げる
心の中の世界から
はるか雲の彼方まで
真っすぐにつき立つ力
時流を越え
次元を超え
ただ
雨粒の落ちる音と
草木の擦れる音が
力の幽かなつぶやきを消す
灰色の光の雲の屋根の上
太陽は輝いているのだろう
そう心の呟き
雨の影に煙る
ぬれた草陰の小さな水たまり
かすかに
はるかな面影がよぎる
雨粒の音は
鳴り止もうともしない、いつまでも
「雨上がりの朝」
こうべを低く垂れている
新しい小枝
竹、野草が
体をしっとり濡らせてたたずむ
神秘境の乳色の霧が漏れ
アスファルトの上を漂う
いつか
春の空の青さが微妙に溶け合い
不思議な色合い
ゆっくりと消え去る時に
心の中に静かに訪れる過去の安らぎ
幾筋にも光が筋を引き
幾重にも春の匂いを重ね
春は青さを広げる
いま
輝き渡る竹と野草に囲まれた
坂を下りる時
ふっと湧き上がる過去の一瞬
浮かび来るさわやかな面影
春につつまれるこの時
雨の上がった朝
たびたびのことですが、あまりたびたび過ぎても、どうかと思わなくもないですが・・・雨、多いです。




