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エ〇本事件

「いただきます。」


リリィが作ってくれたのは自家製のジャムをたっぷりと乗せたジャムパンと手の込んだシチューだった。

肉がしっかりと処理がされていてとても柔らかい。


「リリィ、とてもおいしいよ。ありがとう。」


俺は笑顔で語りかける。



「別にいいです。はやく食べるです!」


リリィは素直に感謝されることに慣れていない。顔を赤くさせながらそっぽを向いた。

それを見たほかの子供たちもありがとうと大きな声で言う。

なんだかんだ一番しっかりしてる割にみんなからいじられるようだ。


「さっさと食べるです!そろそろ怒るですよ!」


「ほら、食べるぞ。」


俺がみんなに言うと、また食事に戻った。


さてと、今日は何をしようか。

そんなことを考えていると、俺を呼ぶ声がした。


「ジャック!カインを鍛えてあげて!」


サラがカインの頭をポンとたたきながら頼んできた。

肝心のカインはとても嫌そうな表情を浮かべている。


「鍛えるって言ってもどうするんだ?俺は戦えないぞ」


俺は孤児院の子供には剣が扱えることは伏せている。

もし知っていたとしても人を殺す剣など教えたくない。

それよりも今の優しいカインのままでいいだろうと俺は思う。


「カインの意思を聞いてない以上は鍛えるも何もないだろう。。それに今のままでもカインは立派な男の子だよ」


「カインにぃはかっこいいもんね」


あぁ、ルー!なんていい子なんだ。先生は?先生はどうなんだい!

それを聞こうと思ったがサラにさえぎられた。


「駄目よ!だってカイン周りの子にいじめられてるんだよ。あいつらを倒すぐらいの力は持っておかないと」


「だからお姉ちゃん、あれはからかわれてるだけだよ。もしその事をなくしたいんだったらお姉ちゃんはもう少し怒らないようにしてほしいな……」


「なによ!私はあんたのことを思って言ってるんだからね!お姉ちゃんの言うことを少しは聞きなさい」


こんなやり取りを重ねたのち二人は口喧嘩を起こしてしまったため、リリィにげんこつを落とされていた。

実際のところ、俺はカインがいじめられていないことを知っている。


そもそも町の人は俺が”切り捨てジャック”ということを知っていて、子供たちに言わないようにと俺が直々に口止めをしている。

そんな者の子供をいじめていたら間違いなくやめさせるだろう。


実は三人が知らないだけで、カインはめちゃくちゃ人と仲良くなれる子なのだ。

一度殺される覚悟で、町の人たちがカインを開放しろと言ってきたことがあった。


それほどまでにいい子!そして人を勘違いさせるような、言葉のチョイスが多いちょっと困った一面もある。


そんなカインがいじめられているわけではない。

前にいじめられているかこっそり確認してきたが、カインの友達はサラにいじめられてるなら俺たちに言えとカインに言っていた。

カインはそんなことないよと否定していたが、あの困ったような顔は見る者によってはいじめられているのを黙っているように強制されている顔に見えなくもない。


その子たちは勘違いしたようで、サラと顔を合わせるたびに喧嘩をしている。

しかし、どうしてサラはカインがいじめられていると思ったんだろうか。


「サラ、カインはどんなふうにいじめられているんだ」


「あのね、昨日の夕方ぐらいにカインたちを見かけてこっそりのぞいてたんだけど、カインが罰ゲームとか言って本を買わされそうになってたの。何を買うかは教えてくれないし怪しいわ!」


お姉さん、それエ〇本じゃ……

それを聞いた瞬間カインは耳まで真っ赤になった。


「じゃ、ジャック!違うんだよ!別にそんなもの買うつもりないし!」


「カインエッチです」


「ねえ、何か買ったの!ルーにも見せて」


なんてカオスな状況なんだろうか。

しかしここは男である俺がカインの気持ちがわからないわけがない。

ここはこうするのが正解だろう。


「サラ、男にはな、男たちだけで買う本があるんだ。だからカインは大丈夫だ」


「本当なの、ジャック」


「ああ、本当だ。カインをもう少し信じてあげようじゃないか」


「はーい。今日の所はここまでにしといてあげる。さっさと学校に行くよ」


「ありがとうジャック!いってきます」


「おう、二人とも気を付けるんだぞ」


カインも男の子だし仕方ないと思いながら、ふっとため息をついた。

無事にかわせたようだな。


「ジャックのド変態。嫌いです!」


……ただ一人を除いて

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